35-29.気づか(れな)い
「お疲れ様~
アルカ~」
「ハルカもね~」
私達は二人で私の部屋のベットに倒れ込んだ。
ハルカもノアちゃん達にたっぷり可愛がられたようだ。
そっちは言葉通りの意味でだろうけど。
でもやっぱ疲れてるっぽい。
たぶん諸々の気疲れとこねくり回され過ぎたせいだと思う。
いやま~あ?
私はむしろあの後散々可愛がったけどね~?
諸々お叱りを受けた後、仲直りのイチャイチャタイムに突入したけどねぇ~?
「つまり次は私の番ってことだね?」
「……」
「今のってそういう前置きでしょ?」
「……いやべつに……なんとなく」
なんか負けた気がしてつい……。
「まあいいや。
今はこれだけで」
億劫そうに体を持ち上げたハルカは、私のお腹に頭を乗せて再び横になった。
「あ、でも。もいっこ。
アルカ、お手」
「どうぞ~」
私はハルカが広げた手の平に、自分の手を差し出した。
私の手を受け取ったハルカは、そのまま嬉しそうに握りしめた。
「今日はもう寝ちゃおっか。
なんか疲れちゃった」
「初めてがいっぱいだったからよ~」
「……うん」
「おやすみ。ハルカ」
私はもう一方の手でハルカの頭を撫でる。
「うん。おやすみ」
ハルカは嬉しそうに微笑んだ。
そのまま撫で続けていると、すぐに寝息が聞こえてきた。
ハルカは本当に人間と変わらないのね。
可愛らしい寝顔を見ていると、改めてそんな感想が浮かんできた。
『普通に可愛いとか言い出したわね。
自分の顔なのに』
もういいも~ん。
開き直ったも~ん。
『ハルカ』
『にんきもの』
『正直驚きよね。
誰かしら嫉妬くらいしてもおかしくないでしょうに』
みんなイロハみたいに捻くれ者じゃないからね。
『逆よ逆。
私が普通なの。
あんたらがおかしいのよ。
大体ハーレム内恋愛って何よ。
一途に想ってもらう方が嬉しいに決まってるじゃない』
いやまあ、うん。わかってるよ?
私だって、皆の事を一途に想っていたいんだよ?
『ダメよ、アルカ。
そこで自分以外の何かのせいにするのだけは、流石に見過ごせないわ』
「ごめん」
『アルカも』
『もうねる』
『あしたも』
『いそがし』
え?あれ?
やっぱ明日からも続ける感じ?
『『はぁ~』』
え!?何!?
何なの!?
『明日はセフィとのデートじゃない』
……いっいや、おっ覚えてたよ?
あはは~流石に無いって~
忘れるわけないない~
『その言い訳、何の意味があるの?』
……ないです。
『よかったわね。
カノンがお小遣いくれて。
しかも指輪の分とは別枠で』
なるほど!それで!
カノン!改めてありがとう!!
『嫌味が通じてないのかしら』
わかってるわよ……。
いやでもほら、最悪デートは私世界でも……。
『お金が無いから消去法でって、説明出来るのね?』
出来ません……。
『まあでも、流石にカノンもそこまで甘くなかったわね。
わざわざセフィの前で問い詰めたくらいだし』
いやたぶんそういう事なら、セフィ姉にも釘さしたんだと思うよ?
セフィ姉も、だいぶ浪費家っぽいし。
一緒に買物に行った回数はまだ数回程度だけど、セフィ姉もわりと遠慮せず買い物するタイプだった。
いやまあ、普段家で「欲しいもの無い?」って聞いても「問題ない、大丈夫」って返してくるんだけど、いざ買い物に行くと流石にそれ以上の遠慮は失礼だと切り替えて、ノリノリで買い物してくれるだけなんだけども。
ただ、明らかに値札の類は見ていない。
あれは多分、私の同類だ。
セフィ姉も元々はSランク冒険者だったそうだし、私と似たような生活をしていたのではなかろうか。
『指輪の分まで使い込んで、またカノンに泣きつく事の無いようにね』
流石にそんな事しないよ!?




