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6-15.仮説

「なるほど。話はわかったとも。

私の仮説を伝えよう」



私の説明を聞くなり、

グリアは頼もしくそう答えた。

さすグリ。話が早い。



「まず今回の魔物の動きと、前回のダンジョン暴走を同じ原因として仮定しよう」


「そしてその前提での差異は、

一つ、魔物が意思を失い、何らかの目的に従って行動している

二つ、元々ダンジョン外に生息する周囲の魔物が巻き込まれている

三つ、ダンジョンが消滅している」



「これから説明する事については

かなり憶測に基づいたものであり、

真実から遠く離れている可能性もある。

あまりこの考えにとらわれて視野を狭めないよう注意してくれたまえ」



「一つ目については、そもそも魔道具の使用目的の話になる。

魔道具とは、本来人種族に類するもの、

人間だけでなくエルフやドワーフ、獣人だね。

それらが、何らかの意図を持って制作したものであるはずだ。」


「つまり、魔道具には使用目的が存在する。

それがダンジョンの暴走というのもおかしな話ではないだろうか。

本来の目的はダンジョンの制御を奪うものだったのでは無いかと考えた」



「そうね。ダンジョンを意のままに制御できるならば、

その恩恵は計り知れないわね」



「そうだ。つまり、前回は使い方を誤っていた為に、

本来の意図ではないダンジョン暴走という結果を招いたのではないだろうか」


「そして、何者かが今回はダンジョンの制御を完全に得ることに成功した。

その結果、魔物達はその何者かの指示に従い、

ダンジョン外への進行を開始したのではないだろうか」



「二つ目については、ダンジョン周辺の魔物は、

本来ダンジョンに住んでいた魔物達が何らかの理由で

偶然抜け出して、野生化したのではないかと言われている」


「それを踏まえて一つ目と合わせて考えるならば、

周囲の魔物にもダンジョンの支配が及んでいったのではないだろうか」



「三つ目は、ダンジョンの制御を奪った者がコアを持ち出したのか、

もしくは目的が済んでコアを破壊したのかもしれない」



「私の立てた仮説はそんなところだ。

どうかね?役に立っただろうか」




「ええ。とっても。

いつもありがとうグリア。

今度美味しいものでも持っていくわ」


「それならば珍しい書物の方が嬉しいね」


「わかった。探しておくわ」


「期待しておくよ。

それと、知っているとは思うが、

セレネ君も日々頑張っている。

安心してこちらは任せておいてくれたまえ」


「信頼してるわ。

ありがとう。それじゃあね」


「ああ」



私は手のひらサイズの転移門を閉じて、

グリアとの会話を終わらせる。


なるほど。

魔道具の意図か。

少しルスケア領主にも話を聞いておくべきかもしれない。

ダンジョン暴走の時の詳細を聞き出そう。

そろそろ食料も差し入れないと干からびているかもしれないし。



「ノアちゃん。少し待っててね。

ちょっとルスケア領主の所に行ってくるから」


「はい!」



私は今度はルスケア領主を放り込んだ無人島の上空に転移する。


「ちょっと聞きたいことがあるから答えてもらうわよ」


私は適当に食料と飲み物を放り投げながら、

私を見るなり砂浜に跪いたルスケア領主に話しかける



「おお!アルカ様!

何でもお答え致します!

どうぞご質問下さい!」



ルスケア領主は変わり果てていた。


数ヶ月にも及ぶ無人島生活に心が折れ、

私から渡される食料だけが生きる望みなのだと、

私を崇めるようになってしまった。


かつての逆恨みももう残っていないようだ。


いっそこいつを国に帰して、

私が魔王の件で国から責任を追求されているのをなんとかさせてみようかしら。

流石に信用できないから無理か。


なんか、貴族の立場に戻ったら逆恨みも復活しそうだし。


でも、いつまでもこんな奴面倒見たくないしな~

良い加減、放り出したいな~


何人か別の島にいる兵士連れてこようかな。

あっちはなんか、平和にやっている。

私の手助けなんか無くても逞しく生きているのだ。


まあ、三十人もの屈強な男たちがいたら

人手は十分だろうしな。


あっちは独自のコミュニティが出来上がっているのだろうし、

いっそこの領主を放り込んでも良いかもしれない。

今更偉ぶったりも出来ないだろう。

こいつ人望無さそうだし。


実際、問い詰められた兵士は魔王の一味に絡んだ事も領主の命だと、

庇う様子も無くあっさり保身に走ってたし。



いかん、また思考が脱線していた。

さっさと聞くこと聞いて、

愛しのノアちゃんの元に戻ろう。



「ダンジョンを暴走させた魔道具について聞きたいんだけど」


領主が言うには、

かつてはある一人の人間種の男を重用していたらしい。

その男は魔道具に詳しく、

ダンジョンの魔道具もその男がどこからか持ち込んだというのだ。


ダンジョン暴走の事件が解決された事をきっかけにその男は姿をくらませたそうだ。


ドワーフの国の事も、その男が残した資料から存在を知ったらしい。




今回の犯人もその男が絡んでいるのだろうか。

なぜ、ダンジョン暴走の件ではすぐに逃げたのだろうか。


ドワーフの国の事を知っていると言うことは、

ドワーフ爺さんの事も知っていたのだろうか。


回収された魔道具からドワーフ爺さんによって

自身の存在が明るみに出るのを恐れた?



そうすると、まさかドワーフの国を滅ぼした真犯人に関係がある?

そして私の予想が正しければ、それは魔王が取り逃がした人物だ。

真犯人もドワーフである可能性は高い。


ドワーフ爺さんも六百年前から生きているのだから、

ドワーフ種自体、長命なのは間違いない。


でも、今回の犯人とされる男は人間種だ。

真犯人の関係者だろうか。


この想像が合っているなら可能性はありそうだ。


魔王の事をドワーフ爺さんに明かしてでも

相談するべきだろうか。


おそらく、魔王はドワーフ爺さんと共にいた人間の男なのだろう。

最後の瞬間、私の杖の細工を見て心の底から喜んでいた。

ドワーフの国を滅ぼした真犯人を追って国を出たのだろう。

そうしてその復讐心を邪神に利用された。



この件はまだ保留しておこう。

そんな必要もなく、ダンジョンに細工した男が捕まえられるかもしれないのだし。


出来ることなら、親友が魔王になっていたなんて

ドワーフ爺さんには教えたくなんてない。

もう、これ以上あの人を苦しめる事なんてしたくはない。




聞きたいことを聞いた私はノアちゃんの元に転移した。


「6-11」と「6-13」の誤字報告くださった方、ありがとうございました!

いつも読んで頂けて大変嬉しく思います!


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