34-39.人事問題
「おはよう、ナディ。
今朝の調子はいかが?」
「快調よ~。アルカ様~」
まあそうよね。
なんかラジオ体操みたいな事してるし。
体を自由に動かせるのが楽しくてしかたないのだろう。
「今だけは程々にね」
「は~い~」
胸を逸らして柔軟しながらの間延びした返事がきた。
それにしてもすごい。
何がとは言わないけど。
レーネより大きいのって初めて見たかも。
私のはレーネとほぼ同じサイズだし。
しかも、ウエストは私より細い。
まあ今は痩せすぎなくらいだから、その辺は今後の生活次第だ。
「これからアニエスとマノンを呼んでくるわ。
全員揃ったら少し話したい事があるの」
「承知いたしました。アルカ様」
早速ナディの相棒フィリアスの件を進めてしまおう。
ナディの体の事を考えれば、早いに越したことはない。
ツムギとステラにもフィリアスを付けてあげなきゃ。
いきなり人数が増えすぎて、手配が追いつきそうにない。
ミヤコにも改めて相談しておこう。
『メアとナハト』
『こっちまわす』
え?良いの?
まだお姉ちゃんを手伝ってたんでしょ?
『いい』
『かわり』
『ハルとチハル』
『じゅうぶん』
ハルちゃん(分体)とチーちゃんか。
確かに優秀だろうけども。
でも、ノアちゃんの方にもついてるのよね?
流石にハルちゃんがオーバーワーク過ぎない?
『もんだいない』
『なれてきた』
『それに』
『ヤチヨとナノハ』
『いっしょ』
『ひとでじゅうぶん』
まあ、ハルちゃんがそう言うなら。
敵施設の見張りとやらは、目処が立ったって事?
『そんなとこ』
『ノア』
『べつこうどう』
そっか。
そう言えばノアちゃん、何か普通に冒険者やってたものね。
敵組織の件は、いつの間にか片付いていたのか。
それにしても、人事問題もあるんだからそれくらい教えてくれないと困ってしまうわね。
『ハルがいった』
そうだけどさぁ。
まあいいわ。
そういう事なら、メアとナハトには引き上げてもらいましょう。
『ナノハとヤチヨ』
『ちかいうち』
『もどす』
そう。わかったわ。
ナノハには暫く休暇をあげましょう。
ヤチヨは私の側についてもらうわ。
『おっけ』
『てはいする』
『ナノハの休暇って、どうせ今みたいにアルカの中で寝てるだけでしょ?』
どうかしら。
ナノハもナノハで、日中どこか行っちゃう事もあるし。
まあ、好きにさせてあげましょう。
やりたい事があるのなら良い事だわ。
『…………zzz』
試しに同化中のナノハに意識を向けてみると、寝てる気配が伝わってきた。
今日も夜勤明けでお疲れのようだ。
ゆっくり寝かせてあげよう。
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ツムギとステラを連れて離宮に転移すると、アニエスとマノンに加えてアレクシアさんまで揃っていた。
暫くアレクシアさんと話をしてから、ツムギ達とは別れてアニエスとマノンを連れ帰った。
それからナディさんと合流し、フィリアスについて基本的な事を説明した。
ついでにミヤコにも来てもらってフィリアスの件を話し合っていると、ミヤコからの提案があった。
「アルカ様。
ナディの事はヒサメに任せてみてはいかがでしょう?」
「ヒサメちゃんかぁ……」
正直、あの子は私のお気に入り枠なのよね。
出来れば自分の側に置きたい子だ。
「ナディの事は一月後に一旦国に帰すつもりだから、ヒサメちゃんは色々と都合が悪いのよね。
チハちゃんズ自体、家族に秘密にしてるのもあるし」
「正式担当が決まるまでの一時的な措置とお考え下さい」
なるほど。
そういう意味でか。
体質改善で一番大変なのは最初だろうし、そこを能力の高いヒサメちゃんに任せるのは良い作戦かもしれない。
「そうね。
そうしましょう。
それで一月以内に正式担当を決めて教育しなきゃね」
「はい。
選定はお任せを」
「お願いね……って言おうと思ったけど、久々に新しい子でも用意してみる?
ナディの場合は色々特殊だから、選定も大変でしょうし」
『めいあん』
『ノアのきょか』
『でるなら』
「出ないかなぁ。
今回くらい出してくれるんじゃない?」
『きいてみる』
暫くして、ハルちゃんがノアちゃんの意見を伝えてくれた。
『じょうけんつき』
『きょか』
『ほかのほうほう』
『かんがえて』
『だめなら』
まあそれはそうよね。
「お任せをアルカ様。
必ずや相応しき者を選び出してみせますので」
「うん。お願いねミヤコ」
ミヤコの選定なら間違いはなかろう。
そう言えば今更気づいたけど、家族が一人増えるとフィリアスも一人増えるから、大概二人ずつ増えていく事になるのよね。
今回、ツムギ、ステラ、アニエス、マノン、ナディと五人も増えたから、下手すると十人の増加になるわけだ。
そろそろ色々と見直しが必要なのかもしれない。
この調子だと、冗談抜きで百人もあっという間だろうし。




