34-36.歓迎会
アニエス、マノン、ナディを家族へ紹介した後、そのまま普段より豪華な夕食会に突入した。
これは元々、ツムギ達の歓迎会用に用意していたものだ。
急遽主役が増えたけど、サナ達は問題なく対応してくれた。
という事で、ヘスティ、ツムギ、ステラ、アニエス、マノン、ナディの計六人が今日の主役だ。
とはいえ、ヘスティは例のビビリを発揮して早々に帰す事になった。
本人は「無下には出来ん」と意地を張っていたけれど、目に見えて震えている状態では私達も落ち着けないからと、料理の一部とともにアリスに回収してもらったのだった。
そして当然、ナディも早々に私世界送りになった。
多少元気になったからと言って、無理をさせて良いわけでもないし、歓迎会用の食事が食べられるわけでもない。
アニエスも同行しようとしたけれど、今回はアニエスも主役だからとナディが断った。
向こうにはシーちゃん(分体)もいるから心配はいらない。
私からもそう説得して、どうにかアニエスは留まらせた。
代わりに新しく嫁入りしたという事で、ミーシャも主役に加わった。
ノイキャンの件、これで許してくれるかしら。
まあ大丈夫そうね。なんかめっちゃ機嫌良いし。
結局、ツムギ、ステラ、アニエス、マノン、ミーシャを中心にして食事会は進行していったのだった。
「カノン姉さま。
後で是非、お時間を」
「ええ。もちろん良いわよ。マノンちゃん」
マノンは早速カノンに懐いた。
何か直感的に感じ入るものでもあったのだろうか。
というか、マノンってすぐ懐きすぎじゃない?
あの猫みたいな評価はなんだったの?
まあ、カノンの魅力を考えれば当然とも思うけど。
「人魚?
レー姉が?」
「そうですよ~。
だから泳ぐのがとっても得意なんです♪」
案の定、早々にレーネにひっついたアニエス。
周囲にはアリア達も集まっているので、あそこだけ極端に平均年齢が低くなっている。
いや、そうでもないか?
最年少組は別の場所にいたようだ。
「マジやっば!
幼女天国じゃん!
ドラっ娘にうさみみ幼女とか反則っしょ!
リヴィたん!ルビたん!きゃわわ!!」
ツムギは自身の膝にリヴィを乗せつつ、セレネの膝に座るルビィにも興味を向けながら壊れている。
今日のリヴィは何故か三歳児フォームだ。
ツムギの趣味に合わせてくれているのかもしれない。
相変わらずサービス精神旺盛な子だ。
「姫様、落ち着いて下さい。キモいです」
ステラにもちょっとツムギの口調移ってるのね。
流石幼馴染メイド兼親友だ。
「ノルンちゃ~ん。やぁっとですよ~えへへ~」
ノルンに絡みつくミーシャ。
哀れ。ノルン以外、だれも近づいていない。
というか、ノルン優しすぎない?
マジ天使。神だけど。
「セフィ姉。
マノンはそのうち訓練にも顔出すと思うからよろしくね」
「うん。了解」
「お母さん」
「なに?レヴィ?」
「ママとのデート、何時行くの?」
「今週末に予定してるわ。
大丈夫よ。レヴィ。
新しい子達が来たって、セフィ姉を蔑ろにはしないわ。
セフィ姉との親睦会も続けていくつもりよ。
ごめんね。心配かけて」
「ううん。忘れてないなら良い」
「ふふ。ありがと~レヴィ~!」
何時ものようにレヴィを抱き寄せて頬ずりするセフィ姉。
「もう!食事中だよ!ママ!」
「そうだね~ごめんね~」
私は少しだけ仲良し親子と一緒に過ごしてから、私世界のナディの下へ向かった。
「調子はどう?」
「あら~アルカ様~。
向こうは良いの~?」
「ええ。少しだけね。
あまりお邪魔しすぎたら、ナディも落ち着けないだろうし」
「ふふ~うれしいわ~」
「良かった。
けど最初は真面目な話をさせてもらうね。
ナディ、あなたにはこれから暫くの間、ここで体質改善に専念してもらう事になるの。
ここの設備とフィリアスの協力があれば、一月以内には自由に歩き回れるようになるはずよ」
「凄いのね。
信じられない事ばかりね」
「そう。これは何一つ普通の事では無いの。
ナディには好きにして構わないと伝えたけど、それには少し条件があるの」
「秘密を守るのね」
「ええ。
あの国でナディが過ごすなら、ここで知ったことや、私が与えた力を自由に振るって良いわけではないの。
細かいことは追々教えていくけれど、それだけは先に約束してくれる?」
「ええ。もちろん。
誓います。
アルカ様に仇なすような真似は致しません」
「ありがとう。
ならこの話はお終いよ。
けどもう少しだけ、世間話をさせてもらえる?」
「喜んで」
「良かった。
ナディ、欲しいものはある?
今日はもうアニエスもこれないと思うけど、代わりの抱き枕とかぬいぐるみとかでも用意しようか?」
「ふふ。大丈夫よ。アルカ様。
一人には慣れてるから」
「一人にはさせないわ。
常に近くに誰かいるから。
何でも頼んであげてね。
欲しい物がなくても、ただ話がしたいでも何でも良いわ。
我慢だけはしないでね。
ここはもう、あなたの家よ。
私達はもう、あなたの家族よ。
あなたが望むのなら、私は一晩中だってここで手を握っていてあげるわ。
だから頑張って。
あなたも変われるように。
素直に甘えられるように。
アニエスの優しさを正面から受け止められるように。
あなたはこれから変わっていかなければならないの。
そう、心に留めて置いてね」
「……はい」
「ごめんね、説教みたいになっちゃって。
取り敢えずもう行くね。
でも何時までも遠慮しているようだったら、勝手に乗り込んでくるからね。
ゆっくり休みたかったらいっぱい我儘言ってね」
「ふふ。なら早速」
「なに?」
「お手を」
私は上がりかけた腰を降ろして、ナディの手を握った。
「どうか……眠りにつくまでこのままで」
「お安い御用よ。
なんならおやすみのキスと子守唄も付けてあげるわ」
「ふふ。おうたの方は遠慮いたします」
私は身を乗り出して、ナディの額にキスをした。
「おやすみ。ナディ」
「はい。おやすみなさい。アルカ様」




