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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
34.白猫少女と家族の秘密

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34-28.独壇場

「……ナディーヌは余の娘だ」


 長い長い話し合い(お説教)の末、王様は遂に秘密を明かした。


 明かされてみれば何のことも無い。

特別扱いだったのも捻りはなく、そのまま本当に特別な存在だったというだけの事だ。


 亡き妹との娘という、アンタッチャブルな存在ではあったけど。


 まあ、別にそこにとやかく言うつもりは無いよ?

私だって実の姉に手を出してるし。


 そもそもこの世界の王族なら大して珍しくも無いのではなかろうか。

魔力や神力等のわかりやすく遺伝される力がある以上、血の濃さはむしろ重要視されているものなんだろうし。


 とは言え周囲の反応を見る限り、少なくともこの国で歓迎される事でも無いようだ。


 取り敢えず、ジュスタン王子は混乱している。

まさに寝耳に水って感じだ。



「なんとなく察してはいたわ。

 アドリーヌ叔母様は娘の父の名を最後まで明かさなかったそうだし」


 言葉通りに落ち着いているアレクシアさん。

ナディーヌさんが生まれたのは、アレクシアさんが十歳くらいの頃のはずだ。

王様の子ども世代では、唯一当時の周囲の状況を察する事が出来たのだろう。



「最低ね。父様」


 ツムギは冷たく呟いた。



「そうだな。

 アドリーヌには耐えられぬとわかっておった。

 それでも余らは、」


「違うわ。そっちじゃない。

 ナディーヌを一人にした事を言っているのよ。

 父様は後ろめたかったのでしょう?

 秘密を知られるのが怖かったのでしょう?

 そんな勝手な理由で、ナディーヌに孤独を強いたのでしょう?」


「……ああ。そうだ」


「この事、母様は?」


「……伝えてはおらぬ」


「言ってはダメよ。この先も。

 決してサンドラ王妃が許すような話では無いわ」


「うむ……」


 王女二人に詰め寄られて縮こまる王様。

その大きな体がなんだか無性に小さく見えてくる。


 サンドラ王妃は本当に知らないのだろうか。

アレクシアさんが察しているのに。

その時も今回のように、国外へ遠征していたのだろうか。

まだ王妃となる前の話なのだろうか。


 何にせよ、私も色々気をつけよう。

ノアちゃん達相手に一生の秘密なんて作りたくはない。

私達の一生は永遠なのだ。絶対耐えられる気がしない。



「ナディーヌの事は私達に任せてもらうわ。

 同意してくれるわね?」


 ツムギの確認に、王様は観念したように頷いた。



「頼む」


「ナディーヌと唯一親交のあるアニエスを世話係に借りていくわね。

 暫くアルカの下で治療に専念した後、アニエス共々一旦この国に戻すから。

 母様が帰るまでには間に合わせるわ」


「ああ」


 条件の話だけでなく、元気になったナディーヌを見せる事で、サンドラ王妃の機嫌を取る目的もあるのだろう。


 ついでにアニエスと私達の縁はそうやって仕込む事にしたのか。


 となると、アニエスの正式勧誘は次回に持ち越しかしら。

私もそれまでにアレクシアさんとの親睦を深めておかなきゃだ。

軟禁状態でどこまで許してもらえるかは疑問だけど。

何にせよ、その辺はノアちゃん達に相談してからよね。


 というか、ツムギったらアレクシアさんに任せると言っておいて、肝心な所で口出ししてきたわね。

しかも、アレクシアさんすら断りづらいような内容で。

まったく。抜け目のない子だ。


 こっちも気をつけよう。

気付かない内に、色々引っ掻き回されてしまうかもしれないし。



「諸々の対価として、マノンを貰うわ。

 それでアルカとの貸し借りは精算してしまいましょう。

 マノンの件で母様を説得するのは、父様の役目よ」


「……うむ。善処しよう」


「善処ではダメよ。必ずやり遂げて。

 そうでないと、母様の説得にアルカをぶつける事になる。

 母様がアルカと敵対するにせよ、口説き落とされるにせよ、どちらでもこの国にとって良い結果とはならないわ」


「うむ……」


 ツムギそれは言い過ぎじゃ……。

もうただの脅迫じゃない……。

というか、マノンの事は歩み寄るのに使うんじゃなかったの?

臨機応変に変えた結果なんだろうけど、このままじゃ……。



「兄様も良いわね?

 母様の詰問は兄様にも及ぶはずよ」


「うっ……」


 そもそも第二王子は、まだマノンを手放す事自体に納得しきれていないのだろう。


 先程はマノンに押し切られていたけれど、仮にも皇太子だし、落ち着いて考えれば反撃に移れる可能性も高い。


 ツムギはそれをわかっているからこそ、この勢いのまま話を進めてしまうつもりだ。

加えてサンドラ王妃を共通の障害とする事で、私から意識を逸らさせる目的もあるのかもしれない。


 容赦ないわね……。

実の母親をそんな風に扱うなんて……。


 このままでは何れ冷静になった第二王子にも、私が恨まれる事になりそう……。


 それから、王様、第二王子、アレクシアさん、ツムギの四人はサンドラ王妃対策について話し合い始めた。


 というか、一方的にツムギが指示出ししてるだけとも言える。


 そろそろ私も口を挟むべきだろう。

ツムギは少しやりすぎだ。



「アルカ、止めておきなさい」


 私が口を開こうとした所で、マノンが小声で釘を差してきた。


 私はマノンに念話魔法をかけてから話しかける。



『どうして止めるの?』


『!?』


『言いたい事を頭の中で言葉にしてみて。

 それで伝わるはずだから』


『あ~あ~これでいいの?』


『バッチリよ。

 センスあるわね。

 今度魔法も教えてあげるわ』


『ありがとう。

 けどそんな事が話したいの?』


『なら質問に答えて。

 そろそろベアトを止めなきゃいけないの。

 私はこの国と敵対するつもりなんて無いのよ。

 こんな一方的なやり方は認められないわ』


『大丈夫よ。

 ベア姉さまがそんな半端をするはずが無いわ。

 ちゃんと飴も用意しているのよ』


『飴?』


『そうよ。飴と鞭。

 冒険者はこんな言い回しも知らないの?』


『そんなわけないでしょ。

 今は徹底的に鞭で叩いているだけだと?

 この後、飴にあたる餌を与えて懐柔するつもりだと言いたいのよね』


『そうよ。

 心配しなくても、ベア姉さまは完璧なお人よ。

 万事問題なく収めて下さるわ』


 ちょっと崇拝しすぎじゃないかしら?



『具体的にどんな飴があるの?

 この状況で差し出せるものなんて無いと思うのだけど』


『そんなの決まってるじゃない。

 サンドラ王妃への対応よ』


『つまり何?

 散々自分で脅しておいて、仕方ないから間に入ってあげるねって話しに持っていくって事?』


『ええそうよ。

 本来はあなた達がやる事よ、と念押ししてから手を差し伸べるのよ。

 流石ベア姉さまね。

 実際に混乱を招いているのはアルカや私達なのにね』


 ひどいマッチポンプだ。

いやでも、私が混乱を招いたってのは聞き捨てならないよ?

今回の件で、私が能動的に動いた事って数える程度にしか無いんだし。

それも色々巻き込まれた末の、やむを得ない処置だったし。

何より、明確に悪巧みしてるのは王様とツムギの方だし。


 これで私が混乱を振りまいたなんて言われるのは、心外過ぎる。



『納得いってないみたいね。

 あなた、認識が甘いんじゃない?

 それだけの力を持っているのだから、あなたはただ在るだけで影響を振りまくのよ。

 それが嫌なら、大人しく家で引きこもってなさいな』


 ぐぬぬ!

知ったような口を!

おこちゃまのくせに!!


 いいわ!そっちがその気なら!



『マノンはとっても賢いのね。

 実は私、普段は軟禁状態なの。

 マノンの言った通りよ。

 私は外に出るべきではないの。

 今回はやむを得ない事だったとはいえ、今後はより一層気を遣う事にするわ。

 マノンの忠告も真摯に受け止める事にする。

 だからマノンも、勿論付き合ってくれるわよね?』


『嫌よ。なんで私が』


『家族は皆忙しいのよ。

 だから、普段私の側で見張っている人がいないの。

 マノンも不安でしょ?

 私がまたこの国を引っ掻き回したりしたら。

 そうなれば、またベアトの手を煩わせる事になってしまうもの』


『くっ!

 一々やり口が卑怯なのよ!』


『違うわ。

 私はただ、マノンの敬愛するベアトのやり方を真似ただけよ』


『こいつ!!』


『これからよろしくね、マノン♪

 一番近くで見守っていてね♪』


『あんたやっぱり幼女趣味なのね!?』


『あれ?

 それは知らなかったの?

 確かにアニエスには手を出さないと約束したけど、うちにはアニエスより幼いお嫁さんもいるのよ?』


『え……うそ……うわぁ……』


『ふふ。マノンの事もいっぱい可愛がってあげるからね。

 すぐにベアトの事は忘れさせてあげるわ』


『そっそんな事!あっありえないわ!!』


『クスクス。怯えちゃって可愛い。

 でも可哀想。マノンはもう逃げられないの。

 私、マノンの事気に入っちゃった♪』


「ひっ!!」


「マノン?どうしたの?」


「大丈夫よ、ベアト。

 どうやら虫がいたみたい」


「そう。

 悪いけど、マノンとアニエスを連れて先に戻っててもらえる?

 もう二人の話は終わったから。

 後はこっちで話し合っておくわ」


「わかった。後は任せるね。ベアト」


「待っ!」


 私はマノンが何かを言い切る前に、大人しく成り行きを見守っていたアニエスも連れてツムギの離宮へと転移した。

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