6-11.冒険者
今日はノアちゃんの選んだ依頼に来ていた。
近くの洞窟にゴブリンが棲み着いたらしい。
ノアちゃんなんでこんなの選んだの?
ゴブリンの巣なんていろんな意味で見れたもんじゃないよ?
「私が戦いやすいからです」
まあ、それはそうか。
いくら強いからって、
鉱物系の魔物とかはノアちゃんには面倒だろうしね。
私は宣言通り、手も口も出さずにノアちゃんについていく。
ノアちゃんは気配察知が上手いから、
相手より先に気付いて、
暗殺者のような動きでどんどん始末していく。
依頼内容に対して素の能力が高すぎて
油断するなよとすら言う必要がない。
まあ、あのクレアと訓練していたのだから、
今更このあたりの魔物がノアちゃんを傷つけられるとも思えないけど。
そうして、何事も無く奥まで進んでいく。
「ごめん、ノアちゃん。
何も言わないって言ったけど、
ここで終わりにしてもらう」
「なぜですか?」
「ごめんね。ちょっと今は説明できないけど、
ここで待っててくれる?」
「わかりました」
私が真剣にそう伝えると、
ノアちゃんはそれ以上は言わず任せてくれる。
私は一人で洞窟の奥に進んでいく。
私が探知したとおり、
洞窟の奥には囚われた人達がいた。
近くにはボスと思われる個体もいる。
いくらノアちゃんが強いと言っても、
まだ十歳だ。この光景は見せたくない。
私はゴブリン達を始末していき、
被害者たちを開放していく。
そうして、ギルド長さんの部屋に直接転移門を繋いで、
被害者たちを運び出す。
「!?アルカか。
おい!何人か呼んでこい!」
私が連れてきた人達を見てすぐに状況を察して、
近くに居た秘書のような人に指示を出す。
「ご苦労だった。こちらは任せておけ」
「宜しく」
私は再び転移門を潜ってノアちゃんのところに戻る。
「ごめんね。ノアちゃん
他の依頼お願いするからね」
「何があったかもう聞いても良いんですか?」
「ちょっとノアちゃんに見せたくないものがあったの」
「私がまだ子供だからですか?」
「そうよ。冒険者である以上、
いつかは見ることになるとは思うけど、
今はまだ見せたくないの。
私の我儘だけど許してくれる?」
「大丈夫です。アルカの事を信じていますから。
アルカがそう言うならそうなのでしょう」
「ありがとう。じゃあ、行きましょう」
「はい!」
私は念の為、探知でこれ以上洞窟内に何も居ないことを確認して、
ノアちゃんと一緒に町に戻る。
一つ目の依頼が予定よりかなり早く終わったので、
お昼を食べたらもう一度依頼をこなす事になった。
昔は酷い光景を見ると食事が喉を通らなかったが、
今ではもう慣れてしまったようだ。
なんだか複雑だ。
出来ることならノアちゃんには
そんな事は知らずに生きて欲しいけど、
ノアちゃんは冒険者としての活動を好んでいる。
これ以上我儘を言うわけにはいかないだろう。
きっとノアちゃんなら乗り越えられる。
私が出来たのだから。
「さあ、おすすめのお店を教えて下さい!」
「またお腹いっぱいで動けなくなってもしらないわよ!」
私達は笑い合いながら町を歩いていく。
私が落ち込んでいるのかもしれないと、
ノアちゃんは私を元気づけるために笑いかけてくれる。
だから、私も笑える。
もやもやしている事をノアちゃんに気付かせたくないから。
そんな感じで、
日々依頼をこなしたり、
町を散策したり、
セレネの所に押しかけたり、
少しだけ忙しいけど
気持ちのんびりな
この町での日々が過ぎていった。