34-8.ぐだぐだ首脳部
「良かったのですか?
結局、一撃も当てられませんでした」
「仕方ない。
ギルド長から依頼された」
「なぜギルド長が?」
「知らない。
自分で聞いて」
「え、はい。わかりました」
「メリア」
「はい。先輩。
なんでしょうか?」
「……よろしく」
「はい!」
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「ノアちゃんたら。
あれじゃあ苦労するでしょうに」
私はメリア、ではなくアメリとの感覚共有を解除した。
これ以上の覗きは止めておこう。
ノアちゃんの秘密を暴くのが真の目的ではない。
あくまでも、守りたいだけだ。
あのナメクジモドキのように、まだ見ぬ厄介な敵だって潜んでいるかもしれないのだから。
『言い訳は大切よね。
何時バレるとも限らないんだし』
人聞き悪いなぁ。
せめて大義名分と言って。
『どのみちやってることは、ただのストーカーよね』
いつも私の思考を覗いてるイロハには言われたくない。
『あなたが命じたんじゃない。
私の事だけ考えなさいって』
ああ言えばこう言う。
『それより』
『いまはノア』
そうね。
ノアちゃんったら。
似合わないキャラ選んだせいで、演技だと丸わかりだわ。
何かアドバイス出来ないかしら。
『ハルがいう』
『今更?
やめときなさいよ。
ちょっかいかけなくても、その内良い感じに落ち着くわ。
そんな事してバレる方が問題よ』
そうだけどさ~。
『むしろアメリの偽名の方を気にしなさいよ。
何よメリアって。そのまんまじゃない。
折角演技力は抜群なのに、速攻疑われてるわよ』
イロハが言ったんじゃん!
別に適当でいいわよって!
他がバッチリだから疑われるはずないって!
『そうだったかしら?』
『いってた』
『だからって、いくらなんでも雑過ぎるわよ』
『いまさら』
『そうね。
名前なんか気にしたって仕方ないわ。
何だかんだと、ノアに近づけたのだし。
結果オーライよ』
ダメだよ!
あそこまで近づけるつもりはなかったんだよ!
ギルド長さんが勝手に気を回してきたせいだよ!
『ちがう』
『けいかい』
『そうよ。別にアメリの為じゃないわ。
突然現れた強者への警戒と、あわよくば利用してやろうって魂胆だけじゃない』
何にせよ、やっかいな事になったわ。
アメリなら大丈夫だと思うけれど、ノアちゃんが私にカマかけしてきたら、隠しきれる自信が無いもの。
『それはどっちだって同じ話じゃない。
アメリが疑われようが、疑われまいが、何れ聞かれるわ。
単にタイミングが早まるだけよ。
しっかり心構えをしていれば、そうそう引っかかったりしないわよ』
ぐぬぬ。
『何時までも下らない事気にしてないで、カルラ達の方も見てみましょう』
『いまは』
『ラブカと』
『フェリル』
『そっちも安直よね。
二人の名前混ぜただけじゃない』
まだ言うか!
イロハだってオッケーしてくれたのに!
『悪かったわよ。
次があったら真面目に考えてあげるから』
やっぱり真面目に考えてなかったんじゃん!
『アルカすてい』
『これいじょう』
『ダメ』
『またイロハ』
『きげんそこねる』
うぐっ……面倒な……。
仕方ないわね。
いい加減、私も切り替えよう。
今度はフェブリ達の番だ。
果たして問題なくやれているのだろうか。
昨日の時点で冒険者登録も済ませていたし、そこまでは特段問題も無さそうだったけど。
『カルラ、フェブリ。
調子はどう?』
『『絶好調!』』
元気な返事が帰ってきた。
どうやら、初めての冒険者活動をエンジョイしてくれているようだ。
『けどアルカ様!』
『今は違うよ~アルカ~』
『ボクはラブカ!』
『フェブリはフェリル~!』
『だめだよ!フェブリ!
自分の事フェブリって呼んだら!』
『カルラも~フェブリって~!』
なんかイチャイチャしだした。
可愛い。
『二人とも気をつけてね~』
『『は~い!!』』
可愛い。
『それで、今日は何の依頼を受ける事にしたの?』
『『全部!!』』
うん?
聞き間違えかしら?
『ごめん、もう一回』
『全部だよ!アルカ様!』
『だよ~!アルカ!』
『全部?
何を?』
『『依頼!掲示板にあったやつ!』』
なにやってくれとん?
『派手にやれと言ったのはアルカじゃない』
『さくせん』
『ふぇいく』
『ほんめい』
『アメリ』
いやだからって……。
『今日中に終わりそう?』
『『うん!!』』
そっかぁ~。
ならまあ、いっかぁ~。
どのみちノアちゃんに詰められるのは確定っぽいし~。
『諦めたわね?』
『どうせいまさら』
『わるだくみ』
『ばれてる』
『だからって開き直って良いわけでは無いわ』
『しかたない』
『あとのまつり』
『どうせもう』
『めだってる』
『目的は果たせてるわね』
まあ、なるようになるさ。
きっとたぶん。




