6-8.答弁
「それで?お前は今元気にやってるのか?
昔から無口だからわかりづらいんだ。アルカは」
予想外な質問から飛んできた。
ギルド長さんなりに私の事を気にかけてくれていたようだ。
私はこの町には半年以上滞在していた。
自宅のある、あの町の次に長く暮らしていた場所だ。
まあ、まだあの頃は強くなかったので
頻繁に次の街に行けなかっただけなのだけど。
そんなきっかけでも、ここの冒険者やギルドの皆にもかなりお世話になった。
この町を出ると伝えた時には皆で送別会を開いてくれたほどだ。
とはいえ、最初の町はこの世界に放り出された所を保護してくれた
エイミーがいたから、普通に話せる人もいくらかできたが、
この町に来た頃には、既に私も拙いながらも、
この世界で一人でも生きていけたので、
結局普通に会話できる程に仲良くなれた人はいなかった。
それでも、依頼に連れて行ってくれた冒険者達や、
たちの悪い冒険者から庇ってくれた受付嬢さん達等
皆にもとても可愛がってもらえた。
あの頃の私は年の割に背も低かったし、
この国の人達からしたら十代前半に見える少女が
一人で旅をしながら冒険者をやっているなど珍しかったのだろう。
「元気。皆のお陰」
「そうか。それは良かった。
相変わらず喋るのは苦手なのか?」
「そうでもない」
「アルカは信じられない程頑固な人見知りなんです。
一緒に暮らしたり、なにか緊急性があったりすると
普通に喋れるようになります」
ノアちゃん・・・
そんな事まで暴露しなくても・・・
恥ずかしい・・・
「つまり私達はまだ心を開いてもらえていないという事か。
それは悲しいなぁ。私はショックだよ」
思いっきり落ち込んだ様子を見せるギルド長さん。
冗談でしょ?
ギルド長さんそんなキャラじゃないでしょ?
覚えてるよ?
私に喋らせようと圧迫面接みたいな事してきたことも。
強くなってきた私に沢山依頼を押し付けてきたことも。
結構強引なタイプですよ?
ノアちゃん?
どうしてそんな目を向けるの?
悲しませてるのに良いの?みたいな顔してるけど、
絶対わざとやってるでしょ?
私の罪悪感を刺激しようとしてるだけでしょ?
なんであなた達初対面で結託してるの?
「頑張るから・・・」
それでもつい、空気に耐えられなくなる。
「まあ、しょうがないです。アルカですし。」
「そうだな。まあくだらない事やってないで、
早速いろいろ教えてもらおうか」
くだらないこと?
「それで、なんでこの町に戻ってこなかった?
Sランク冒険者は各ギルド支部が取り合う重要な存在だ。
この町に来てくれればとなんど思ったことか」
え?気になるのそこからなの?
やっぱり私のこと・・・
「アルカ?自分で話せませんか?」
「話すわ。大丈夫よノアちゃん」
「本当に普通に話せるんだな。
試しにノアに向かって答えてみたらどうだ?
やってる内に有耶無耶になるかもしれんぞ?」
「それは流石に失礼ですね
例え本人がそう言っていても。
ね?アルカ」
ノアちゃんなんか圧が強い・・・
いつもはスルーしてくれるのになんで今日に限って・・・
「私がここより前にいた町、
それ以前の事がわからない」
「そこに家に住まわせて面倒を見てくれた人がいた。
その人のいる所に帰りたかったから」
「なんだお前、記憶喪失だったのか?
それは知らなかった。なるほどそんな理由なら納得だ」
異世界転移の事を話すわけにはいかないから、
本当の事は言えないけど、理由は概ね真実だ。
エイミーはこの世界で最初に仲良くなれた人なのだし。
「だとすると、なんでその町を出たんだ?
お前のその様子だと旅をするのも苦労しただろう」
「やりたいことあったから」
「まあ、そんなもんか」
「この町を出た後はどうしてたんだ?
まあ、世界中からお前の活躍は伝わってたから
全く知らんわけでもないんだがな」
「アルカって昔から凄かったんですね。
世界中旅してたとは聞いていましたが」
「そりゃあな。今やSランクだ。
それなりに修羅場は潜ってるさ。」
「とはいえ、この町に来たばかりの頃は
駆け出しも良いところだった。
こんなガキが一人で旅してるなんてと
誰も彼もが世話焼いたもんだ」
「この町に来た頃はノアとたいして変わらないくらい
背も低かったんだぞ?」
「それは初耳です!見てみたかったです。その頃のアルカ」
「しかも、この無口だろ?
だってのに誰かが困ってるのは見逃さないんだ。
たいして強くもないのに手助けしようと、
黙って前に出やがる。
なんどそれで叱りつけたことか」
「なんとなくわかります。
なんだかんだ関わってきた事は
全て自分で解決しようと頑張ってましたし。
アルカはやればできる子なんです!」
「そうだな。
まあ、この町を出た後もそんな感じで
あっちこっち首突っ込んでたんだろうなとは
想像がつくよ」
なんか、私の事放置して盛り上がってるんだけどこの二人。
もう帰って良い?
ちょっといたたまれないんだけど・・・