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33-29.堂々巡り

 さてどうしたものかしら。


 結局、魔道具の件はツムギ達には伝えていない。

王子に悪意がある事は既にわかっているのだろうし、今更罪状が増えたところであまり意味もない。


 というか、単に私がしてやられただけとも言えるし。

ぐぬぬ。



 やはり、切札クレアを早々にぶつけてみるべきだろうか。

クレアに詰問させれば、王子が口を割る可能性だってある。


 もしくは、マリアさんに頼んでマルセルさんを落としてもらうという手も無くはない。

少なくとも、王子の真意は図れるだろう。



 結局のところ、私が知りたいのは一点だけだ。

王子と王様は私達と敵対するつもりなのだろうか。


 今回のは明らかな挑発行為だ。

証拠が無いだとか口実があるだとか、そんな事は関係ない。

圧倒的な力の差の前では、そんなもの些事でしかないのだ。



 当然、王子も王様もそれはわかっているはずだ。

少なくとも、王様は表立って敵対するような行動は起こしていない。


 むしろ、それを避ける為にツムギを差し出してきたのだ。

ツムギ自身の強い要望があったとはいえ、結局のところ王様もそれが有効な手立てだと認めたのだ。


 そうでなければ、娘の我儘だろうと認めるはずがない。

なにせ、事は国の存亡にすら関わる事なのだから。


 これも、私にその気が有るとか無いとか関係ない。

王様視点では、そう判断せざるを得ないというだけの話だ。



 ならば、やはり王子個人の暴走の可能性が高い。

であるなら、さっさと王様と話を付けてしまうのも良い手かもしれない。


 王子の目論見がなんであるにせよ、得た情報を役立てるためには何かしらの準備が必要なはずだ。


 私の力を計ったのか、私の隙を探したのかはわからないけれど、検証の時間は必要になるだろう。


 そうして十分な計画を練ったところで、王様に直談判するのかもしれない。


 私達が先に王様を味方に付ける事で、王子の目論見を挫く事ができるかもしれない。

まあこれは、あくまでも王様がグルでなければの話だけど。



 王子の真の目的はなんだろう。


 やはり、欲しいのはクレアかしら。

それとも、ツムギを手放したくない?

単にツムギの嫁入り先の安全を確認してみただけで、それ以上の害意は無かった?

それともやっぱり、私が目障りなの?


 これらとは関係のない、まったく別の目的でもあるのかしら。


 例えば私の弱点を見つけて、意のままに操りたいとか。

そうなると、真の目的は私自身、もしくは私にやらせたい何かって事にもなりうる。



 ダメだ。

どんどん話が広がってしまっている。


 いっそ全部無視してしまおうかしら。

そもそも、どんな策を練ろうが私に不意打ちは効かないのだ。


 覚視で見破れようが、見破れまいが関係ない。

今の私の体を傷つける手段自体が、この国には存在しないはずだ。


 なら、何食わぬ顔で王様と話を付けてツムギを貰い受け、そのままこの国との関係は最低限に留めてしまえばいい。


 ツムギには悪いけれど、悪意を持っている相手と仲良くするのは限界がある。

あからさまに避けたりはしないけれど、せめて貸し借りは今回の件を不問とする事で、無かったことにしてもらおう。


 王子にしてやられたまま終わるのは癪だが、わざわざ付き合ってやる義理もない。


 いや、本来なら義理くらいあったんだけどね。

なにせ、お姫様をお嫁に貰うのだし。


 でも、その義理を蹴っ飛ばしたのは向こうからだもの。

私が後生大事に守り抜く必要なんてない。

ツムギが里帰りしたい時は好きにさせてあげるし、会食くらいして欲しいと望むのなら付き合おう。

けれど、そこまでだ。


 これ以上なんの頼みも聞かないし、この国に危機が迫ったとしても、この国と連携するつもりはない。

ただ、ツムギやエリス達の為だけに守るのだ。


 今回の箱型魔道具みたいな案件だって、正面から頼んだりしない。

勝手に忍び込んで、勝手に処分してやろう。

私は私なりに、この国の守護者を気取ってやろう。

敵意を持って接してくる相手を守るなら、それくらいの覚悟は必要だ。


 いやまあ、流石にそれも嫌だけど。

なんであんな奴の為に、私が犯罪者に身を落とさねばならないのだ。

こちとら、人の道理から外れた事なんてしたくないのだ。

そんな事をすれば、愛しのノアちゃんから軽蔑されてしまう。



 なら、ちゃんと話し合ってわかってもらうしかないのだろうか。

相手の抱いている敵意をどうにかして解消するしかないのだろうか。



 なんかもう面倒くさくなってきた。


 やっぱりツムギに先頭に立ってもらって、王様のところに突撃しようかしら。

王様を尽き崩せれば、自ずと王子の目論見もわかるだろう。


 逆に王様が明らかな敵意を向けてきたのなら、こっちとしても方針を絞りやすい。


 娘を使って揺さぶりをかけるようで卑怯な気がするけれど、先に卑怯な真似をしてきたのは相手の方だ。


 いや、こういう考え方はやめよう。

ノアちゃんが嫌うやつだ。うん。


 私達はあくまで誠心誠意問いかけるだけだ。


 何が気に入らないの?

どうやったら仲良く出来るの?


 そうやって優しく問いかけてやろう。

ツムギだけで足りないのなら、エリスとクレアも呼び出そう。

あくまで友好的にだ。

母親がぐずる赤子を宥めるように、優しくだ。


 きっと、王子も王様も素直になってくれることだろう。

うん。何も卑怯な事なんてないよね。



『面倒ね。

 もう誰か忍び込ませたら良いんじゃないかしら』


 あれ?私の天使ちゃんがグレてる?



『いい加減にしなさい』


 はい。ごめんなさい。イロハ。



『さっきからツムギ達も全然役に立ってないじゃない。

 アルカの思考も堂々巡りだし、このメンバーで会議してても時間の無駄よ。

 さっさと話しに行くか、さもなくば誰か忍ばせて情報を抜きなさい。

 それを元に脅しでもかければ一発じゃない。

 次にコソコソ嗅ぎ回ったら、容赦はしないぞと脅してやるのよ。

 相手がそういう手段で来るのなら、同じことをしてやればいいのよ。

 相手の土俵で完膚なきまでに叩きのめせば、もう二度と噛みついてなんてこないんだから。

 だってそうでしょ?

 要はあなた、舐められてるのよ?

 どれだけ大きな力を持っていようとも、中身はただの小娘じゃないかって、バカにされたのよ?

 なら、やることは一つでしょ?

 甘く見てるなら、噛み殺すぞと言えばいいのよ。

 首元に食らいついた証拠を突きつけてやればいいのよ。

 そんな事を長々と考えている必要なんてないわ。

 あなたも気付いた通り、あの王子は敵意を向けてきたの。

 だからもう諦めなさい。

 何だかんだと言い訳して仲良くしたいのでしょうけれど、それはもう無理よ。

 今はまだ他愛のない悪戯程度でも、キッカケとなった悪意と恐怖は消しようが無いの。

 アルカもそれはよくわかっているのでしょ?』


『うん……そうね。

 イロハの言う通りね』


『けれど納得いってないわけね。

 ならそうしなさい。

 わかりあえるまで、膝つき合わせて話し合いなさい。

 事ここに至っては、それ以外に道はないわ。

 子ども同士の喧嘩って事にして、親に言いつけてやりなさい。

 あの親父がまともなら、バカ息子を叱りつけてくれるはずよ。

 そうでないのなら、さっき私が言った事をもう一度検討しなさい。

 それでこの件はおしまいよ。

 ほら、さっさと動きなさい』


『うん』


「ツムギ、マリアさん。

 やっぱ、王様のところ乗り込んでみましょうか」

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