33-24.目覚め
レーネとノルンに徹底的に癒やされつくした私は、清々しい気分で朝を迎えた。
既にレーネもノルンも動き出しているようだ。
ベットには、何故か二人に代わって、クレアが寝ていた。
こいつ、誘惑してるのかしら。
毎度毎度、人のベットで寝やがって。
なんか、私の匂いに包まれると眠気に襲われるとか、そんな作用でもあるのかもしれない。
ふふふ。
お姫様を目覚めさせるには、やっぱりキスが一番よね~♪
私はクレアを膝の上に抱えるようにして抱き上げ、そのまま容赦なく唇を奪った。
「!?」
しっかりと抱きしめたまま、長いキスを続けていると、目覚めたクレアが暴れ出した。
私は尚も力ずくで押さえつけ、唇を貪り続ける。
「むー!!!むむむー!!!」
クレアがなにか言っているが、まだまだ逃がすつもりなどない。
これは罰だ。慈悲はない。
「むぅー!!うぅー!」
段々とクレアの抵抗が弱まっていく。
それでも離さずにいると、遂には全身の力を抜いて身を任せ始めた。
『いつまでやってんのよ。
いい加減離してやりなさいよ』
おはよう、イロハ。
悪いけど今忙しいから、邪魔しないで。
『うらやま』
ハルちゃんもこれ好きだものね。
後でやってあげるわ。
『やった』
『やったじゃないわよ!
止めなさいよ!クレアもう意識失ってんじゃない!』
え?あれ?
そこでようやくクレアを離して見てみると、イロハの言う通りクレアは気絶していた。
「クレア~クレア~
お~い、クレア~
大丈夫~?」
へんじがない。
ただの しかばねの ようだ。
いやまあ、流石に息はあるけど。
別に窒息してしまったわけではなさそうだ。
単に、脳がオーバーフローしたのだろう。
クレアったら。いい年こいて初心なんだから。
『そんな呑気なこと考えてる場合?
後でまた機嫌損ねるわよ?』
うぐっ……。
クレアは一度機嫌を損ねると、長くて面倒なのよね。
どうやったら穏便に済ませられるかしら。
いっそこのまま寝かせておいて、夢だった事に出来ないかしら。
『名案ね。
このまま放置して、マリアのところへ行くと良いわ。
ツムギと会う約束があるのでしょう?』
流石にクレアを気絶させたままお義姉ちゃんに会うのもどうなんよ。
幸せにしますって約束したのに。
今んとこ、クレアが幸せそうにしてるところなんて見たこと無いわよ?
『自覚あるんじゃない。
ならバカなこと考えてないで、誠心誠意謝りなさいよ』
もう私の天使ちゃんは厳しいなぁ。
『その呼び方止めなさい!!』
は~い。
「クレア、クレア。
ねえ、クレア。起きてよ。
またキスしちゃうよ?
いいの?」
へんじがない。
ただの……いや、もうそれはいいって。
根気強く呼びかけながらクレアを揺すっていると、ようやく目を覚ましてくれた。
「おはよ、クレア。
良い朝ね」
「……てめぇ」
「どうしたの?
そんな怖い顔なんてして。
可愛い顔が台無しよ?」
その瞬間、クレアの顔が真っ赤に染まった。
なんぞ?この反応。
「クレアは今日も可愛いわね。
キスしていい?」
「……」
黙って目を閉じるクレア。
もはや耳まで真っ赤だ。
え?
というかこれ、もしかしてこじ開けちゃった?
良いのよね?して良いのよね?
遂にクレアも受け入れてくれたのよね?
今度はクレアに優しくキスをした。
ついばむように、何度も何度も、少しずつキスをする。
「……なんで……こんな」
ありゃ?
物足りなかった?
クレアは妙な表情をしている。
まるで当てが外れたとでも言わんばかりだ。
もう。そんな顔されたら我慢出来ないじゃない。
折角反省してみたのに。
まあ、クレアから望んでくれるなら是非もない。
私は再び強く唇を押し付けた。
「いったぁ!!!
噛んだわね!?
なんでよ!!
折角受け入れてくれたと思ったのに!!」
未だ耳まで真っ赤にしたクレアが、手の甲で唇を拭いながら私の腕から飛び出した。
「うるせぇ!!
やり返そうとしただけだ!
だってのにあんなキスしやがって!!
調子のんなよバーカバーカ!」
クレアは捨て台詞を吐きながら部屋を飛び出していった。
ちくしょう!
優しいキスの方がクレアの好みだったかぁ!
それならそうと言ってくれれば良いものを!
『結局拗れてんじゃない』
『けど』
『しんてん』
『チャンスを不意にしたけどね』
『しかたない』
『でも』
『まんざらでも』
『なさそ』
『まあ、そうね。
これで種は蒔けたんじゃないかしら』
『めざめ』
『ちかい』
ほんとに?
このまま突っ走っちゃっていい感じ?
『『ほどほどにしなさい』』
はい。




