33-23.ASMR
急な呼び出しにも関わらず、レーネとノルンは二つ返事で応じてくれた。
私は自室に呼び出した二人と共にパジャマ姿になって、ベットの上にお盆を置いてお菓子を広げた。
「レぇーネ~♪」
「ふふ。
今日のアルカ様は、なんだか甘えん坊です」
「えへへ~♪」
私はレーネの大きな胸に顔を埋めた。
すると、ささくれた心はあっという間に癒やされていった。
「わたしは足のマッサージでもしてあげるわ」
ノルンは私の心情を把握してくれているようだ。
私の足を自分の膝に乗せて、程よい力加減で揉みだした。
「あ~しゃぁわせ~」
「ふふ。それは何よりね」
「今日はお疲れでしたか?アルカ様」
「う~ん~そ~かも~」
「なら真っ先にわたしに甘えに来なさいな。
いくらでも癒やしてあげるわ」
「あ、ズルいですよ、ノルン。
私もアルカ様癒やしたいです!」
「なら二人で癒やしてあげましょう。
こはるもそう望んでいるみたいだし」
「はい!」
「ふがっ!?」
レーネが思いっきり私の頭を抱きしめた。
豊満な胸に鼻と口が塞がれ、呼吸が止まりかける。
ああ。でも幸せ。
なんで人のってこんなに良いのかしら。
自分にも同じのついてるのに……。
色んな意味で、段々意識が遠くなっていく。
このまま身を委ねて寝落ちするのも悪くない……。
『いや、ダメでしょ。
呼びつけておいて、何早々に寝ようとしてんのよ』
私の心の中の天使が抗議の声を上げる。
『しかたない』
『かわりに』
『ハルが』
『えみゅれーと』
私の心の中の悪魔がこれ幸いと実験を始めようとする。
融合の機能、試したいのね……。
後は任せた……ハルちゃ……。
『おきなさい!
何あっさり悪魔の誘惑に乗ってんのよ!!』
「はっ!?」
「どうかされましたか?
アルカ様?」
「ううん。ちょっと天使にどやしつけられちゃって」
「てんし?
また新しい娘でしょうか」
「いや、違うよ?
イロハの事だよ?
だからそんなギリギリ締め上げないで?」
レーネの私を抱きしめる腕に、明らかに癒やし目的ではない力が込められている。
いやまあ、別に痛くも痒くもないんだけども。
ふふふ。私を痛めつけたくば、この三倍は持ってきてもらわなイタタタ!!!なに!?
「ノルン、痛いわ!
なにするのよ」
「ツボを押してあげただけよ。
不純な心を持っている人にだけ効くツボよ」
「アルカ様!!」
「違うから!
今日はツムギとステラちゃん以外増えてないからぁダダダ!!ノルン!?」
「わたしまだ、ソフィアとかいう娘の事、紹介されてないんだけど」
「アルカ様?
私も聞いておりませんよ?」
「いや!違くて!
ソフィアはグリアの担当フィリアスなの!
セレネがすぐに連れて行っちゃったし、私のお嫁さんとかそういうんじゃないからぁ!」
おかしい。
私は癒やしを求めて二人を呼んだのに、何故詰問されているのかしら。
『どう考えても、日頃の行いのせいじゃない』
この天使、宿主を刺しすぎじゃないかしら。
それだけ私の心が汚れてるって事なの?
「わたしは言ったはずよ、こはる。
わたしのこはるなら、何人でも受け入れられると。
わたしだけは、いくらでも許してあげると。
けれど、蔑ろにされるのは嫌よ。
ちゃんと家族を紹介しなさい。
誠意を尽くしなさい。
いつの間にか勝手に増えていく事だけは許さないわ」
「うん……ごめん」
「良い子ね、こはる。
さあ、こっちへいらっしゃい」
今度はノルンに抱きしめられて、頭を撫でられた。
「うぅぅ……ノぉル~ン~」
「はいはい。
良い子ね、こはる。
今日もいっぱい頑張ったのよね。
偉いわ、こはる」
「うん……」
「こっちに横になって、こはる」
「うん」
いつの間にかお菓子のお盆は片づけられていた。
結局誰も食べてない。
私はノルンに導かれて、ベットの中央で仰向けになった。
ノルンは私の耳に胸を押し付けるようにして、抱きしめてくれた。
そのまま反対の耳に、レーネが胸を押し当てた。
レーネはノルンごと、私を抱きしめてくれているようだ。
二人の心音が耳に直接響いてくる。
少しだけリズムの違う心音が無性に心地良い。
再び強烈な癒やしが、私の心を染め上げた。
『これが』
『うわさの』
『えー・えす・えむ・あーる』
『わるくない』
『むしろ』
『いい』
『ハル、あなた妙な事考えてないでしょうね?』
『かいたくする』
『まずは』
『おーそどっくす』
『みみかき』
『ミユキはなんでそんなものにまで手を出したのかしら』
『ママ』
『じさくした』
『アルカの』
『ろくおんで』
『そのさんこう』
『え!?待って!?
なにそれ聞いてない!!』
『しっ!』
『しずかに』
『アルカ』
『いしき』
『しゅうちゅう』
『サンプル』
『とる』
あ、はい。




