33-22.反動
暫く話しをした後、ニクスとアムルをセレネ達の元へ送り返した。
ハルちゃんとシーちゃんを派遣するのは、また後で構わないようだ。
「ハルちゃんは何だと思う?
皆の隠し事って」
『……』
『のーこめんと』
「つまり知ってるわけね。
今なら無理やり共有して暴いてしまう事も出来るのよね」
『ダメ』
『……』
『ごめん』
「ううん。ハルちゃんのせいじゃないもの。
意地悪言ってごめんね。
これまで通り、皆の秘密は内緒にして構わないからね」
『うん』
『ありがと』
「イロハ、代わりに相談に乗ってくれる?
別に想像してみるくらいなら良いでしょ?」
『嫌よ。他をあたって』
「イロハの意地悪」
『秘密にしたいならさせておきなさいよ。
アルカが知る事自体に、何らかの不都合があるって事なんでしょうし』
「だからってさぁ。
いくら何でもあからさま過ぎるじゃん」
『アルカが大人しくしていないからじゃない。
信頼があれば秘密は減るものよ。
腐ってないで、誠意を尽くしなさい』
「そういう正論が聞きたいんじゃないの!
愚痴を聞いて慰めてって言ってるだけなの!」
『別にそれくらいは構わないけれど、ニクスに聞かせるって約束をしていたじゃない。
私相手に発散してしまっていいの?』
「それはわかってるけど……。
だからって、今悶々としてるのだって我慢できないのよ」
『ならもう寝てしまいなさいな。
明日はまた、ツムギのところへ行くのでしょう?
そんな調子では、相手を不安にさせてしまうわよ』
「もう……。
ならイロハ出てきて。
私の抱き枕になって」
『良いわよ。
融合を解くのならいくらでも』
「むぅ~~~!!」
『子供みたいな駄々こね無いでよ』
「イロハも分体出せないの?」
『無茶言わないで。
魂を切り分けるなんて、簡単に出来るわけ無いじゃない』
「さっきからそればっか。
イロハが本気になれば、出来ない事なんて無いのに」
『なによその過大評価』
「イロハの家族、取り戻す方法思いついた?」
『いきなり話変えないでよ。
そんなの考えてないわ。
私はずっと一緒にいたじゃない。
今もプロジェクトチームが頑張ってくれるのだし、信じて任せましょう』
「皆まだ続けてるのかな。
ミヤコ達も忙しいのに無茶言い過ぎちゃったなぁ……」
『気になるなら覗きに行けばいいじゃない』
「うん……」
『どうしたの?
何故そんなに弱気なの?
そんなに除け者にされたのがショックだった?』
「……」
『はんどう』
『まじめもーど』
『ながかった』
『まあ、今日は何時もより考える事が多かったものね。
アルカにしては』
「ひとことよけ~い~
もっとやさしくして~」
『はいはい。
子守唄でも歌ってあげるわ。
だからもう、ベットに入りなさいな』
「むぅ~~~」
『なんなのよ、もう。
面倒くさいわね』
「取り敢えず誰かに抱きしめられたい」
『ミユキでも呼んだらいいじゃない。
ツムギの事で、いくらでも話題はあるでしょ?』
「ナイスアイディアね。
早速呼びましょう」
『お姉ちゃん、今暇?』
『ルネルと飲んでるわよ。
暇なら小春も来たら?』
『ならいいや。
程々にね。おやすみ、お姉ちゃん』
『ええ。お休みなさい』
「むぅ~~~~~!!!!!」
『これは重症ね』
『ハル』
『ぶんたい』
『だす』
「それは何か違うかなって。
ハルちゃんは今や私自身だし。
自分に抱きしめられるようなものだし」
『むう』
『あなた達、やっぱり融合なんてやめたら?』
「『それはいや!』」
『あっそ……』
「後は誰がいたかな」
『セフィは?』
「最近独占しすぎたから無し。
いい加減返してあげないと、レヴィに悪いもの」
それに今はルヴィとも一緒にいるはずだ。
あの子達からセフィ姉を横取りするのは流石にない。
『ならいっそ、シイナやアリスで良いじゃない』
「そうじゃないの~
私が甘えたいの~」
『いくらでも甘やかしてくれるわ。あの子達なら』
「むぅ~~」
『はいはい。
わかったわ。もう言わないわよ』
「とはいえ、そろそろサナ達も寝に来る時間よね。
いい加減切り替えないと……」
サナ、メア、ナハトの三人、特定の宿主を持たないニクス世界で活動するフィリアス達は、いつも寝る時間になると私と同化しに戻って来る。
流石にあの子達の前でまで、みっともない姿は見せたくない。
『あら。結局自分で立ち直ったのね。
子沢山お母さんは大変なのね』
とは言え随分と減ったものだ。
ナノハはもうすぐ夜勤だし、ラピスはアリアと一緒に寝る事が多くなった。
コマリはカノンに拘らず、あっちこっち渡り歩いているっぽい。
あの子、意外と人誑しなのよね。
誰とでも仲良くなっちゃうし。
チーちゃんはハルちゃん(分体)と仕事中のはずだ。
「そうだった。
クルルも呼んであげなきゃ。
イロハが私の中から離れられないんだし」
『クルルもルカと一緒にいるじゃない。
仲良くしているんだし、そっとしておいてあげなさい』
「そうだわ!
レーネとノルンに来てもらいましょう!」
『また話が飛んだわね。
というか、どちらか一人になさいな。
その二人には、まだ大した接点ないじゃない。
だいたい、サナ達の前ではみっともない姿を見せたくないんじゃなかったの?』
「今日は二人の親睦会って事にしましょう。
大人組でパジャマパーティーよ!」
『一番の子供が何か言ってるわ』
『だめイロハ』
『そっとしとく』
『そうね。
今日のアルカにはもう絡まれたくないし』




