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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
33.白猫少女とパンドラの箱

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33-19.復活

今回もセレネ視点のお話です。





「それで話を戻すわね。

 とはいえ、大体もう全部話したかしら。

 カノンは他にも疑問はある?」


「何言ってんのよ。

 まだまだあるわよ。

 先ず、アムルの復活と国取りにどう関係があるの?」


「関係があるのは神化の方よ。

 一度否定したヘメラをもう一度祭り上げるのは、そう簡単な事ではないの。

 それにこの先の事も考えるなら、一々、リオシアにお伺いを立てるのも面倒なのよ。

 唯でさえアルカとルスケア領の件では目を付けられているわけだしね」


「ならいっそ、ルスケアを土台にすれば?

 あっちの方が領主ごと動かせるのだし、場合によってはアルカの信仰も抑えられるかもしれないじゃない」


「まあそうね。

 幸か不幸か、ルスケアもクリオンも国境に位置しているから切り取りやすいでしょうし。

 それにルスケアは、リオシアにとって頭痛の種となっているものね。

 場合によってはクリオンより独立を勝ち取りやすいとも言えるわ。

 とはいえ、そもそもルスケアでは王都に近すぎるの。

 それに領丸ごとは制御しきれないもの。

 先ずは町一つで我慢しておきましょう」


「まさか、将来的には国土を広げるつもりがあるの?」


「必要とあらばね。

 ヘメラの神格化にどれだけの信仰が必要になるのかはわからないもの」


「アルカは領都一つで半神となったのよね?」


「ええ。そう聞いてるわ。

 同じ理屈なら、クリオンだけでも十分に事足りるはずよ」


「まあいいわ。

 その辺りの事は今議論しても仕方ないものね」


「そうね。

 サンプルが少なすぎて定量化出来る事ではないもの。

 それで、それ以外の質問は?」


「そもそも、どうやってアムルを復活させるつもりなの?」


「ニクスに当てがあるそうよ」


「先ずは使徒として蘇らせるんだ。

 その為の肉体なら用意できるよ。

 要はアリスと同じような存在だね」


「あの子は混沌ちゃんが産み出した子なんだっけ」


「うん。そうだよ。

 アリスはアルカの心を分け与えられてもいるけどね。

 アムルの場合、心は既にあるから肉体に移し替えれば済むはずだよ」


「アムルとヘメラを結びつける方法は?」


「アムルを蘇らせた時点でヘメラと名付ければ、後は勝手に結びつくよ」


「なんだか大雑把なのね」


「要点さえ抑えているのなら、案外区別はつかないものだよ」


「区別するのは誰なの?」


「そこはノーコメントで」


「ここまで随分と喋ってしまっていると思うのだけど」


「既に明かされている情報だからね」


「私は知らないわよ?」


「カノンが知らなくとも、この家の誰かは知っている事だ。

 案外、融通の効くものなんだよ。

 神の制約なんてものは」


「ニクスが緩くなったのもあるけどね。

 まあ細かい事はいいじゃない。カノン。

 私達は技術者ではないのだから。

 そんな事より、これで質問は終わりかしら?」


「最後にもう一つだけ。

 アムルが拒絶したらどうするの?」


「それはないわ。

 もう話は付けてあるもの」


「はぁ?」


「それ私も聞いてないんだけど!」


「落ち着いて、カノン、ニクス。

 私とノアで直接アムルの魂と話してきたわ。

 アムルも乗り気だから安心して。

 それと、ニクスにもよろしくだって。

 この数百年、片時も離さず寄り添い続けてくれた事、感謝してるそうよ。

 今度は恩を返す番だって息巻いてたわ。

 ニクスったら。本当にアムルの事が大切だったのね。

 アルカが聞いたら妬いてしまうんじゃないかしら」


「さっきまで全然そんな素振り見せてなかったじゃん!」


「驚いたでしょ?」


「驚くよ!

 というかいつの間に話まで出来るようになってたの!?」


「さあ?

 私だって、さっきノアと会いに行ったのが初めてだもの」


「ニクス、黙っていてすみません。

 会議の直前だったので、タイミングが無かったのです」


「だからって……」


「そんな事より、早速アムルを蘇らせてみましょうよ。

 部屋は教会の私のを使ってもらいましょう」


「いや、流石にそんなすぐには……」


「何が足りないの?」


「……素体を回収しないと」


「まさか、あの神殿の神官?」


「うん」


「あの人は人格があるのではないのですか?

 アムルの入れ物に使ってしまって問題は無いのですか?」


「あれはそういうんじゃないんだ。

 どちらかと言うと、私の分身に近い存在だから」


「それこそ、アリスとは違うのですか?」


「うん。全然違う。

 ごめん。これ以上は話せない」


「まあ良いわ。

 場所はわかっているのだし、今すぐ回収に行きましょう」


「……本気でやるの?」


「今更何怖気付いてんのよ。

 アムルも加われるなら、そっちの方が話も早いじゃない」


「……だってぇ」


「大丈夫ですよ、ニクス。

 本当にアムルはニクスに感謝していました。

 決して恨んでなどいませんでしたよ」


「でもぉ……」


「まったく。何時までもウジウジと。

 アウラ、例のやつ頼むわ」


『え~。結局やるの?』


「アウラまでゴネないでよ。

 こんな時の為に準備しておいたんじゃない」


『もう。セレネは意地悪だよ。

 私にこんな事させるなんて』


「愛してるわ、アウラ。

 後でいっぱいご褒美をあげるから聞き分けなさい」


『セレネになにかあったらやだよ?』


「大丈夫よ。私はアウラを信じてるもの」


『もう。セレネのバカ』


 私の心の奥底から、別の誰かが浮かび上がってくる。

当然、これは知らない誰かなどではない。


 私は躊躇なく、その人に体を明け渡した。



「まさか……アムル……」


「はい。ニクス」


 アムルは真っ直ぐニクスに駆け寄って、抱きしめた。

ニクスはされるがままで固まっている。



「ずっとこうしたかった。

 私を抱きしめてくれるあなたを抱きしめかえしたかった。

 もう泣かないでって何度も話しかけたのに。

 あなたは一度だって気付いてくれなかった。

 ただいま。ニクス。

 もう泣かないで。ニクス。

 私はもう大丈夫。全部あなたのおかげよ。

 私はあなたを裏切ってしまったのに。

 こんな私を許してくれてありがとう。

 愛してくれてありがとう、ニクス」


「ア、ムル……なん、で……だって……わた、し……」


 感極まって上手く動かない口で、どうにか言葉を紡ごうとするニクス。


 そんな様子をこの場の全員が見守っていると、不意によく知る気配が現れた。



「ニクス?何やってんの?

 えっと、何この状況?」


「「アルカ!?」」


「ノアちゃん、カノン説明して。

 セレネはどうなってるの?」


「なんで戻って来ちゃったんですか!?」


「戻って来るに決まってるじゃない。

 セレネの気配が不自然に消えたんだもの。

 誰かに乗っ取られでもしているの?

 あなた誰?

 アウラじゃないわよね?

 私のセレネに何をしたの?」


 あらら。やらかしたわね。

ちょっと焦りすぎたかしら。


 ハルちゃんズを見守っているハルは知っているはずだけど、何故止めてくれなかったの?


 融合とやらのせいで余裕が無かったとか?



『そんな呑気に考えてる場合じゃないでしょ。

 取り敢えずアムルと交代しなよ、セレネ』


 まあ、そうね。

アムル、一旦戻りなさい。



「はい。セレネ」


 素直に引っ込んだアムルに代わって、私は自分の肉体に意識を戻す。



「大丈夫よ、アルカ。

 少し体を貸していただけだから」


「誰に?

 って流石に予想はつくけど。

 ニクス、これって浮気かしら?

 元カノと隠れてコソコソ会うなんて、どういうつもりなの?」


「そんなんじゃ!」


「アムル、少し話をしましょう。

 シーちゃん、ハルちゃん、セレネの中から泥棒猫を引きずり出して」


 アルカの体から、シイナの分身が産み出された。

シイナの分身が私に触れると、私の中からアムルが吸い出されてシイナの分身に乗り移る。


 シイナの分身は私とよく似た姿に変化した。


 とはいえ、私と完全に同一ではないようだ。

私より背が高い代わりに、胸部が心もとない。


 私の体って、十二歳の時から成長が止まってるのよね。

このアムルは、十代後半くらいはいってそうなのに。


 ふふ。お可愛らしい。



『セレネ。

 バカな事考えてないで、アムル連れ戻さなきゃ。

 アルカがアムル連れて行っちゃったよ?』


 アウラの言う通り、アルカはアムルの変身が完了すると、何処かに転移してしまった。

どうやらこの家の中ではないようだ。

アルカにしては冷静ね。



「まったく。どうしてこうなるのかしら」


「セレネが強引な事をしたからでは?

 元々教会で復活させる手筈でしたよね?」


「お試しくらいなら大丈夫かと思ったのよ。

 アルカの愛を甘く見ていたわね。

 まさか聞き耳を立てていたなんて」


「流石にその表現はどうかと。

 別に話を聞いていたわけではないようですし」


「ノアがやっているように、私達の気配を追っていたのね。

 普段は抜けてるくせに、こんな時だけ間が悪いんだから」


「とにかくアルカを探しましょう。

 この家にはいないようですが、アルカの行く場所など限られています」


「もう間に合わないんじゃない?

 多分ピレウスの自宅でしょ?

 そこに体だけ置いて、アルカ世界に潜ったんじゃないかしら」


「たしかにアルカ世界に潜られたら、私達では手の出しようがありませんね。

 かと言って、あの調子ではルチアやアウラにも止められそうに無いですし。

 ならば、アムル本人に任せるしかないかもしれません」


「次に会う時は、アムルも嫁になってるんじゃない?」


「勘弁して下さい。

 全部台無しじゃないですか」


「まあ、そうなったらこれも運命だったと諦めましょう。

 アルカを関わらせたくは無いけれど、流石に無茶だとも思っていた事だし」


「そうですね。

 今回は規模も期間も大きいものでしたから」


「とはいえ話せる事だけね」


「はい。全て明かす必要はないはずです。

 今のところは」


「どこまで話すべきか考えておきましょう」


「アムル次第ではありますが、私達の方針も必要ですね」


「あの娘、余計な事を言わないと良いんだけど」


「ニクスは……どうやら行ったみたいですね」


「なら大丈夫よね。

 口の堅さには定評があるし」


「迂闊さにもですが」


「今回ばかりは、私も人のこと言えないわね」


「反省して下さい」


「は~い」

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