33-17.プロット会議
会議を終えてニクス世界に戻ると、今度はノアちゃんとセレネが待ち構えていた。
「戻りましたね、アルカ。
早速ですが」
「国取りの件ね。
良いわよ。打ち合わせしましょうか」
「皆さん既に揃っています。
行きましょう」
ノアちゃんに続いて、今度は自宅の会議室に移動する。
会議室には、ツクヨミ、クレア、ソフィア、ニクス、カノン、それにグリアまでもが揃っていた。
「グリアがここにいるって事は、同意してくれたのね?」
「そう捉えて構わん」
「そう。よかった。
心強いわ」
流石セレネね。手際が良い。
ノアちゃんも完全に納得しているみたいだし。
ついでにカノンまで誘ってくれたようだ。
私はノアちゃんに秘密にするつもりだったから、最低限の子達にしか声をかけなかった。
けれど、セレネの考えは違った。
まあ、カノンは頼りになるものね。
それに、パンドラルカの活動とも考えられるのだし、そうなれば家族に要らぬ秘密を抱える必要も無くなるのだ。
正直に打ち明ける方が良い事尽くめね。
とはいえ、それはあくまでもセレネが責任者となってくれたからだ。
私主軸なら、きっと受け入れて貰えなかっただろう。
しくしく。これが人望の差なのかしら。
それとも、私に隠している目論見が理由なのかしら。
カノンも知らされているのかな。
気になるな~。
「それでは早速始めましょう。
現時点で決まっている事を教えてくれますか?」
ノアちゃんの言葉を受けて、セレネが立ち上がった。
「私から説明するわね。
私達のやることは、ずばり国取りよ。
具体的には教会の本拠地であり、リオシア王国の擁する大都市でもある、都市クリオンを中心として独立するつもりよ。
本当の目的は敢えて明言は避けるけれど、表向きには情報収集の一環ね。
今回ノアがムスペルで見た箱型魔道具のように、各国は思わぬキッカケで技術発展を成し遂げる可能性があるわ。
とはいえ、それは具体的な話ではないの。
あくまでも可能性の話。
なぜなら、私達にはわからないから。
各国がどの程度の速度で発展を遂げているのか。
そして、その速度は問題の無いものなのか。
だから、指標を作りましょう。
私達で国を運営して、どの程度ならば許されるのか、実地検証の場を用意しましょう。
それが表向きの主旨よ。
そこまでは良いかしら?」
表向きとは言え、あくまでも私達の中での話だ。
対外的な名目ではない。
それはこれから考えていくのだろう。
「無いようだから話を続けるわね。
この計画の総責任者は私が務めるわ。
参謀役にグリアさんとソフィア。
ソフィアにはグリアさんの身辺警護及び補助も任せるわ。
クレアとツクヨミには私の警護に入ってもらう。
そしてツクヨミにはもう一つ重大な役割を任せるわ。
ニクス、ノア、カノン、それにアルカは外部協力者よ。
要所要所で力を借りる事はあるけれど、基本的には手を出さないでいいわ」
「クレアさんの立ち位置は本当に警護だけなのですか?」
「今のところはね。
勇者としてのクレアに出てもらうかは、これから検討するわ」
なるほど。
一先ずそういう方針にしたのか。
ならニクスもかな。
神託や勇者なんて持ち出してしまえば、引っ込みがつかなくなるはずだ。
先ずは目立たず動きたいのかしら。
まあ時間はいくらでもあるから、事は慎重に進めてもらって構わない。
「聖女としての立場は利用するの?」
「いいえ。
アルカの考えているような使い方はしないわ。
聖女はアリバイとして利用する事にしたの」
つまり?
「私が聖女として、征服者と交渉するのよ。
そしてリオシアとの橋渡し役になるの。
征服者はツクヨミに務めてもらうわ。
これなら、アルカに敵意が向く事も無くなるはずよ」
あれ?
なんか妙な話になってる?
というか、いつの間にそんな具体案まで考えてたの?
「グリア、あなたまさか私達より先に国取りの事考えてたの?」
「ああ。その方法も検討はしていたとも。
流石に提案するつもりは無かったのだがね」
「セレネの方から提案されて、渡りに船と飛びついたのね」
「必要なことだ」
「勇者と神を使わないことにしたのも、グリアの案ってわけね」
「そちらはサブプランだ。
征服者と聖女の寸劇で話が纏まらなければ、勇者に英雄となってもらおう」
「用意周到な事ね。
良いわ。セレネも納得しているみたいだし。
続きを聞きましょう」
「いや。その必要はない。
アルカ君。君はここまでだ。
後は我々だけで続けさせてもらう」
「何言ってるのよ。
話くらい聞かせなさい。
それ以上、口出しも何もしないと約束するわ」
「あらすじは伝えた。
もう君は必要ない」
「そこまで私を関わらせたくないわけ?
そっちがその気なら、私だって強引な事をするしかなくなるのよ?」
「やめてくれ。
これは君の為だ」
「アムルと邪神の関係が、今更私にどんな悪影響を及ぼすって言うのよ」
「セレネ、君は。まったく」
「ごめんなさい。喋りすぎたわ」
「だがまあ、その程度の認識ならば問題はない。
ここは引きたまえ、アルカ君」
「ならなんで呼んだのよ?」
「知っておいてほしかったからだ。
ツクヨミ君を悪者として扱うのだ。
君の許しが必要だろう」
「ツクヨミ」
「委細承諾済みでございます。アルカ様。
全てはアルカ様の御為に」
「……わかった。
私はこの件から手を引くわ」
精々チハちゃんズの目を通して、観劇でもしてやるわ。
丁度リリカもリオシアに潜伏してる事だし。
「ごめんなさい、アルカ。
ですが」
「ううん。こっちこそごめんね。
少し言い過ぎたわ。
大丈夫よ、ノアちゃん。
皆の気持ちはわかってるから。
ありがとう、皆。
後は任せたわね」
私は会議を抜けて、自室に転移した。




