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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
33.白猫少女とパンドラの箱

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33-13.夢

 ツムギの研究成果は膨大なものだった。

これはマリアさんが勤勉と評したのも納得だ。


 ただの引き籠もりの暇つぶしや、口実とかだけではなく、純粋に研究自体も好きなのだろう。


 それにツムギはツムギなりに、この国に貢献しようとしていたのかもしれない。

その気持を頭ごなしに否定するのは間違いなのだろう。


 この件に関しては、腰を据えてじっくり着地点を話し合う必要がありそうだ。


 そもそも世界を守るためだからって、何でもかんでも技術発展を取り上げるつもりは無いのだし。


 まあそれ以前に、ツムギの研究はこの国ですら認められているとは言い難いようだけど。


 王様だけは可能性を見出したものの、他の臣下達は現実的な研究とは考えていないらしい。


 というのも、単純にコスパが悪いからだ。

ツムギの研究は、平民の生活をターゲットにしたものだ。

けれど、民の生活に浸透させるには莫大なコストがかかる。


 そもそもの技術体系が現行のものとは違いすぎるのも問題だが、民の生活をそうまでして向上させようという理由自体が弱い。


 お貴族様達の生活なら、既存の魔石や魔道具の技術で事足りてしまう。

そもそもツムギはそれらの技術を超えようとしているわけですらない。

単に、手頃な物に置き換えようとしているだけだ。


 とはいえ、魔石関連の技術はこの世界にとって、科学技術の代わりに発展してきた分野だ。

今はもう廃れつつあるとは言え、それでも尚、取って代わろうとなれば、一朝一夕で出来る事ではない。


 そもそも、権力者達の受けも悪いのだ。

ツムギの研究は平民の生活水準を貴族達に近づけようとしているようなものだ。


 そこに莫大な初期費用をつぎ込むなど、国を動かす貴族達が認めるはずもない。


 唯一王様の立場でなら、民の生活の発展のさらにその先、国の発展という視点で見ることも出来るだろう。


 それに何れ魔石技術が完全に失われる前に、ツムギの提唱する分野を伸ばしておく事は重要だ。


 とはいえ、今はまだその段階ではないのだろう。

実際、王様ですらツムギ以外に研究をさせているわけでも無いようだし。



「ツムギ、あなたの望みはこの技術を世界に広める事?」


「正解よ。

 折角ここまで頑張ってきたのだもの。

 どうせならやり遂げたいじゃない」


「私に近づこうとしたのも、その為ね。

 単独で国と張り合える存在なんて都合が良かったのね」


「やるわね。

 腹の探り合いは嫌いだとか言ってた割に、まさかそこまで言い当てるなんて」


「それでもわかってない事もあるのよ。

 研究は丸投げするんじゃなかったの?」


「今までのはね。

 だってこの国の税金で研究させてもらったものだもの。

 とはいえ、研究内容は全て頭に入ってるわ。

 私とステラさえいれば、どこでだって再開できるの」


「そんな貴方にお誂え向きな話があるわよ。

 今はまだ話せないけど、丁度良いかもしれないわね」


 国取りの事はまだノアちゃんも知らないだろうし。

少なくとも、セレネはまだ話せていないはずだ。

ならば今この場でその事を話すわけにはいくまい。


 けど、その国を試験場にしても良いかもしれない。

どうせインフラ関係はいじくり回すつもりだったし。



「それは楽しみね。

 良いわよ。私の体で良ければ好きになさい。

 その代わり、パトロンになってくれるって事よね?」


「そんな関係は嫌よ。

 私はただ、お嫁さんの夢を叶える為に全力を尽くすだけ」


「心から愛するとかはちょいまって。

 流石にそんなスパッと覚悟決まらないわ」


「本気で政略結婚のつもりだったのね」


「当然じゃない。

 これでも私、お姫様なんだから」


「お姫様は私利私欲で身売りしたりなんてしないわよ」


「あっひっど~い!何その言い方!!」


「事実じゃない」


「私はただ、この世界の人達の為だけを思って頑張ってきたのに……」


「悲しんでるフリしたってダメよ。

 あなた、そんなタマじゃないでしょ?

 本当に民を想うなら、この国を離れようとするわけないじゃない」


「そうでもないわよ。

 この国で理解されない事をこの国で頑張っていても効率が悪いの。

 それより他所の国で成果を出せば、この国の見方だって変わるかもしれない。

 だから世界丸ごと幸せにするの♪

 そうすれば、大好きなこの国も幸せになれるでしょ?」


「そうね。

 とっても素敵な夢だと思う。

 私もできる限りの事はしてあげる。

 けどごめんね。

 悪いけど、その望みの全ては叶えてあげられないの。

 少なくとも今はまだ」


「うん。大丈夫。

 私がやり遂げられなくても、研究成果は残せるから。

 そうすればいつかきっと、この世界の人達にも届くと思うから」


 ツムギは心底楽しそうに言い切った。

その仕草から、気持ちは本気なのだと伝わってきた。



「ああ、ごめん。

 もう一つ言い忘れてたわね。

 悪いけどあなたの寿命は無くなるの。

 これは拒否権の無い決定事項よ。

 私、ツムギの事気に入っちゃったから」


「は?え?」


「流石に今すぐにというわけにもいかないけど、王様と話をして正式にツムギを貰い受けたら魔法をかけてあげる。

 私の側に永遠に置いてあげるわね。

 だからあなたの夢は自分の手で叶えて、全てを見届けなさい」


「えぇぇ……

 何言ってんの……こわ」


「少しくらい喜びなさいよ」


「いや無理っしょ!?

 不老不死にでもするってことでしょ!?

 嫌よそんなの!」


「あら意外。

 ツムギはこっち側だと思ってたのに」


「不老不死とか絶対ろくなことにならないやつじゃん!

 というか言ってる事魔王とかそっち系のやつじゃん!

 そのうち勇者とか現れて討伐されちゃうやつじゃん!」


「そんな心配要らないわ。

 勇者本人も、勇者を指名する神も、既に私の伴侶だし」


「はぁ!?」


「クレアの事知らないの?

 勇者ミレアの話は?

 クレアはミレアの子孫で、今代の勇者なのよ。

 かつて私と共に魔王を倒した事だってあるわ」


「なにそれ!?

 ちょーファンタジーじゃん!

 普通にワクワクしてきたんですけど!

 その話くわしく!!」


 切り替え早いわね。

不老不死の話は早くも忘れ去ったのかしら。

興味が移ろいやすいのかな?



「なら一旦マリアさんと合流しましょうか。

 折角なら、マリアさんにもクレアの活躍を聞かせてあげたいし」


「良いわね!そうしましょう!

 ステラ!早速お茶会の準備よ!」


「承知いたしました」

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