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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
32.白猫少女と独占欲

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32-58.思い出

「そろそろお開きにしましょうか」


 私は寝落ちしたセフィ姉の頭を膝にのせながら、未だに飲み続けていたルネルに申し出る。



「うーむ」


 何やら考え込むルネル。



「まだ飲み足りない?」


「うむ……」


 珍しく歯切れが悪い。

既に十分飲みすぎていると自覚しているからだろう。



「楽しんでもらえたようで何よりだわ。

 また誘わせて貰うわね」


 今回誘ってくれたのはルネルの方だけど。



「うむ」


 今度は満足そうに頷いた。

少し笑みがこぼれてる。可愛い。



「ルネルがお嫁さんになってくれたら、何時でもこの部屋を利用していいわよ」


「むむ」


 え?本気で悩んでる?



「アルカ」


 セフィ姉の怒りを感じる。

おかしい。さっきまで寝ていたのに。

まさか寝たふりだった?



「おはよ、セフィ姉。

 そろそろ部屋に戻ろうか」


 取り敢えずすっとぼけてみる。



「む~~」


 セフィ姉は私のお腹に顔を押し付けてうめき声を上げた。

何故か幼児退行を起こしてしまったようだ。



「じゃあもう少しだけね。

 ルネルもまだ飲み足りないみたいだし」


 私はセフィ姉の頭を撫でながら話しかける。

セフィ姉が頷いたのが伝わってきた。



「仕方ないのう。

 もう少しだけ付き合ってやろうかのう」


 ルネルったら。素直じゃないんだから。



「セフィ姉は次何飲む?」


 首を横にふるセフィ姉。

お酒はいらないらしい。

単に甘えたいだけなのね。



「そうしていると、シフィに甘えていた頃を思い出すのう」


 感慨深げに呟いたルネル。



「やめて、ルネル」


 セフィ姉は苦しげな声音で呟いた。



「すまぬ」


 え?なに?

シフィって誰?


 セフィ姉はルネルの言葉で気持ちが萎えたのか、私の膝から頭を起こして座り直した。

それから、私の肩に頭を乗せるようにして寄りかかった。



「シフィ、シルフィーは、私のお母さんの名前なの」


 セフィ姉はそれだけ呟いてから、目を閉じた。

これ以上話すつもりは無いと言いたいのだろう。



「大丈夫よ、セフィ姉。

 無理やり聞いたりしないから」


「……うん」


「アルカはどうじゃ?

 お母上との昔話を聞かせてくれんか?」


「え?

 突然どうしたの?

 私は別に構わないけど……」


 何でこのタイミングで?

セフィ姉が話しづらそうにしてるのに?



「大丈夫だよ。そういう事じゃないから。

 私、ちゃんとお母さんの事大好きだったよ」


 静かに語るセフィ姉。

確かに口調は愛しげだ。

でも、そこに紛れ込んだ苦しげな気配が、隠しきれていない。


 本当に話して良いのだろうか。

いや、話すべきなのだろう。

多分、ルネルはそれがセフィ姉にとって必要だと判断したのだ。

何の参考になるのかはわからないけど。



「私のお母さんは……普通、かな?」


「普通?」


「うん。普通。

 私みたいに人見知りとかでもないし、お姉ちゃんみたいに極端に私を構う人でもなかったかも。

 まあ、そうでもないか。

 一般的な母娘として考えたら、過剰なくらい甘やかされていた方かも。

 お姉ちゃんを基準にするとアレだけど」


「お母さん、好きだった?」


「うん。大好き。

 こっちの世界に来た時は、毎日会いたくて泣いていたくらい」


「……今なら会いに行けるんじゃないの?」


「かもしれないわ」


「なら」


「でもダメよ。

 きっと会えたとしても、そこにはもう一人のお姉ちゃんもいるはずだから。

 私は今側にいるお姉ちゃんを選んだの。

 私を求め続けてくれたお姉ちゃんを裏切れない」


「ミユキはそんな事思わないんじゃない?」


「そうでしょうね。

 けど、私が嫌なの」


「アルカの生まれた世界で待っているミユキはいいの?

 今もアルカを探しているかもしれないんでしょ?」


「そうね。

 向こうのお姉ちゃんの事を思うと辛くてたまらない。

 けど、私が取っちゃうわけにはいかないの。

 向こうのお姉ちゃんが他の私を助けに行くかもしれないし、私の事は忘れて幸せになってくれる可能性だって残ってる。

 そんな可能性はうんと低いと思うけどね」


 万に一つもないんじゃないかしら。

お姉ちゃんが私を忘れられるわけないもの。



「本当にそれで良いの?

 アルカは欲しいものなら、どんな手段を用いても手に入れるんじゃなかったの?」


「え?

 その口説き方、セフィ姉にしたっけ?」


「むう!」


 セフィ姉は膨れながら、私の手の甲を抓り始めた。


 最近悪魔女ムーブしたのは、クレア相手だけだった気がするんだけど。


 ああ。エリスの時もか。

でもそれ以外だと、レーネの時くらいじゃなかったっけ?



『私へのもそんな感じだったじゃない』


 いやほら、イロハの時は実態が伴ってたし。



『私達の世界で好き放題した事を言っているのならそうでしょうけど、他の子達の時はしてないみたいに言うのはおかしいわ』


『ハルのとき』

『らぶらぶ』

『だった』


『チョロイン勢の話は聞いてないわ』


 いうても、大半がチョロインだったと思うんだけど。


 取り敢えず、抓られている手を引っこ抜いてセフィ姉の肩に回して抱き寄せた。


 セフィ姉は避けたりせずに縋り付いてきた。



「それで、お母さんとの思い出話だったわよね」


「この姿勢でその話続けるの?」


「じゃあ離す?」


「嫌」


「なら話はまた今度ね。

 セフィ姉も元気出たみたいだし」


「ならば飲み直すとしようかのう」


 ルネルはずっと飲んでたじゃない。


 というか、お母さんの話を振ったのはルネルだったのに、特に気にせず流してくれたわね。


 やっぱりあの話題振りは、セフィ姉の為だったっぽい。


 いつかセフィ姉が話してくれるまでは待っていよう。

その時には、私も自分のお母さんとの思い出話を披露するとしよう。


 そうだ。

お姉ちゃんと先に話しておくのも良いかも。

忘れている事も沢山あるだろうし。


 少し楽しみだなぁ。

多分泣いちゃうだろうけど。

それに会いたいのも我慢できなくなるかも。


 それでもやっぱり、思い出して、話して、共有したい。

せめて思い出だけは、大切に残しておきたいから。

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