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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
32.白猫少女と独占欲

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32-53.アフターサービス

 マリアさんに話をすると、すぐに王城へ案内してくれた。

話が早くて助かる。

どうやら、王様も私が来ると想定していたようだ。



「陛下。

 急な訪問をお許し頂き、感謝致します」


「うむ。

 して、何用かね?

 魔道具の件ではノア嬢が十分な成果をあげてくれた。

 貸し借りについては、既に精算されたものと認識しているが」


「アフターサービスでございます。陛下。

 貴国との関係をこれきりとするつもりはございませんので」


「なるほど。

 恩を売りに来たと」


「そう取って頂ければ幸いです」


「具体的な話を聞こう」


「例の箱型魔道具の件にございます。

 既にノアからもお伝えした事と存じますが、あの魔道具は少々危険なものかと。

 故に、我々で引き取らせて頂きたいのです。

 もちろん、対価はお支払い致します。

 貴国であの魔道具を抱え込み研究を続けるよりも、私共が直接お力添えした方が安全かつ確実なものかと」


「ふむ。

 確かに魅力的な話だ。

 だが、今ひとつ具体性のない話だな。

 力添えとやらは、どこまで許せるのかね?」


「ご要望次第かと。

 ですが、そうですね。

 当然何でもありというわけには参りません。

 私共は自らの力の危険性を承知しております。

 悪戯にばらまくつもりはございません。

 ですので、あの箱に使われている術の内、どれか一つだけと致しましょう。

 手とり足取りとまではいきませんが、一例をお教え致します。

 それを元に研究を進めて頂くのがよろしいかと」


「サービスと言う割には出し惜しみするではないか」


「自ら研鑽を積み、掴み取る工程も重要でございます。

 降って湧いた大きな力は、必ずや災いへと転ずることでしょう」


「うむ。その考えには同意する。

 だがその物言いでは、あまりに一方的に過ぎぬかね?

 まるで神にでもなったつもりのようではないか」


「つまりはそういう事なのです、陛下。

 私にはこの世界を守る理由と責務があります」


「ならば相応の態度を示されてはどうかね?」


「私は人間です。

 少なくとも、そう在りたいと願い、努めております。

 これはお役目とは別の、個人的な想いですが」


「ならば、アルカ嬢には主がいるという事か」


 私は陛下の言葉に無言の笑みを返す。


 実際には私が主なんだか、ニクスが主なんだかわからない状態だし、私の力の大半はニクスから授かったものですらなくて、むしろぶん取ったものだけど、流石にそこまで明かすわけにはいかない。



「アルカ嬢は、神ニクスの使徒なのかね?」


 おどろいた。

まさか陛下の口からニクスの名が出てくるとは。


 いや、別におかしくはないのか。

かつては世界中で信仰されていたはずだし。

それにこの地は、勇者ミレアが流れ着いた場所でもある。


 聖女アムルだけでなく、勇者ミレアにもニクスと個人的と言っていいほどの親交があったようだし。


 民はともかく、王様は知っていてもおかしくはない。



「いや、すまない。

 踏み込みすぎたようだ」


 どう応えるか逡巡している間に、陛下は引き下がってしまった。

いったいどういう意図なのだろう。

神様関連なんて、関わりたくないという意思表示だろうか。

厄介事の匂いを嗅ぎつけたのだろうか。


 いや、むしろ関わりたくないのは私とか?

先程自分でも言った通り、降って湧いた大きな力は災になりうる。


 私が災いを運ぶ者だとでも考えたのかもしれない。

それだと結局いつものやつじゃない。



「それよりも、だ。アルカ嬢。

 貴殿らの方針には疑念がある。

 あの箱型魔道具をどうするつもりなのかね?

 いや、もっと言うとだ。

 それを元に追い詰めるのであろう、例の組織の方だ。

 貴殿らは、本当にあの魔道具が必要なのかね?

 ノア嬢がやってみせたように、あの魔道具が無くとも干渉、ひいては追跡が可能なのではないかね?」


 逆探知は不可能ではない。

例えば箱がなくとも、その空間に何かを仕込む事は可能だ。

その何かを取り出した者、という条件でならば追跡も容易だろう。


 ハルには出来ないけど、イロハなら空間に残された痕跡を見つけ出す事すら可能かもしれない。



『無茶言わないで。

 世界内こっちならともかく、外の痕跡なんて無理に決まってるじゃない。

 出来るのは、精々罠を仕掛ける事くらいよ』


『だいじょうぶ』

『イロハなら』

『かのう』


『何よその無条件の信頼!

 あんた丸くなりすぎでしょ!?』


 ちょっと賑やかになってきた。

もう少しだけ静かに聞いててね。

陛下の話、終わってないみたいだから。



「つまりだ。

 あの魔道具について、何か隠している事があるのではないか。とも取れるのだよ。

 真に警戒しているのは裏にいるやもしれぬ組織などではなく、あの魔道具の存在そのものなのではないかね?

 ならば、伝授する魔術とやらも、当たり障りのない範囲に留めるつもりなのだろう?

 余はそう警戒せざるを得んのだ」


「ご懸念は尤もかと。

 ある意味では、陛下の仰った通りでもあります。

 私はあの魔道具から、急激な技術の発展が引き起こされる可能性も懸念しております。

 故にこの話は、技術発展をコントロールしたいという意図も含まれています」


「ハッキリ言うものだ。

 我らは舐められているのかね?」


「いいえ。

 そのような意図はございません。

 貴国を蔑ろにするつもりならば、直接奪えば済む話です」


「うむ。

 それも至極尤もだ。

 ならば、真実を明かしたのは誠意のつもりなのだろう」


「はい。仰る通りです」


「足りんな」


「何がでしょう?

 誠意の?それとも、対価のお話でしょうか?」


「いや。そうではない。

 世界の守護者たらんとする気概の話だ」


「力不足は重々承知の事です」


「そうではないのだ。

 貴殿は人でありたいのだと言った。

 それでは足りぬのだ。

 甘いと言い換えても良い。

 世界の守護者とやらは、本当に人間程度に務まるものなのかね?」


「務まりません。

 我が主は、人とは到底呼べぬ存在です。

 ですが、人に恋い焦がれ続けてきた者でもあります。

 私はその在り方を尊く想い、力になりたいと願ったのです。

 なればこそ、私が人の道を外れるのは、あってはならぬ事なのです」


「その主は、既に六百年も人の世に姿を現してはいないのだろう?

 本当にそのような者なのかね?」


「はい。紛れもなく真実です」


「そうか。

 まあよい。

 その話は置いておこう。

 足りんと言ったのは、だ。

 アルカ嬢の覚悟だ。

 何故、奪ってしまわんのだ?

 我らがどのような方針を定めようと、貴殿らには既に大義名分があるではないか。

 貴殿らの意見に耳を貸さなかった我々はともかく、この地に住む民らは、貴殿らの庇護対象ではないのかね?

 対価などと言って、要らぬ知識を振りまく必要があるのかね?

 そのような半端な覚悟で世を引っ掻き回すのであれば、貴殿ら自身も厄災となり得るのではないのかね?」


 なるほど。

そういう風に警戒心を抱かれたのか。

まさかここまで丁寧に説明してくれるとは。

この王様こそ、甘々なのではなかろうか。



「それは前提が違うのです、陛下」


「前提とは?」


「私達は、世界を守る為のシステムにはなりえません。

 あくまでも、愛しい人達との居場所を守りたいだけなのです。

 そして、我が主、いえ、私の伴侶が、この世界を愛しく想っているからこそ、私もこの世を守りたいのです。

 それは世界のためではありません。

 愛しい人の笑顔の為です。

 私達の根底は、ただそれだけなのです」


 だから私達は、家族に顔向けできないような手段を取るつもりはない。

誠心誠意、この世界と向き合っていくつもりだ。



「そうか。

 ならば精々、その愛が憎悪へと堕ちる事のないよう願うとしよう」


 あり得ない話ではない。

家族が喪われれば、私は原因を憎悪し、復讐するだろう。

そうしていつの日か、この世界を滅ぼしてしまうのかもしれない。


 私達はそれでも困らないのだ。

ニクスを攫って、大切なものだけシーちゃんの船に詰め込んで、滅びゆくこの世界を飛び出してしまう事だって出来るのだ。

さながら、ノアの方舟のように。


 もちろん、その時はニクスが悲しむだろう。

当然そんな事は望んでいない。

先程陛下に話した事も真実だ。

ニクスには何時までも笑っていてほしい。


 それでも、私は選ぶだろう。

つまりは、私にとってこの世界とはその程度のものなのだ。

あくまで大切なのはニクスの方だ。


 陛下の懸念はそういう事だ。


 何もかも、教えないほうが幸せだったのかもしれない。

処理のしようがない爆弾を見つけてしまった気分だろう。


 少しばかり喋りすぎたかもしれない。


 とは言え、陛下も陛下だ。

一度は引き下がる気配を見せたくせに、結局問い詰めてきた。

案外、苦労性なのかもしれない。

取り敢えず、お人好しなのは間違いないだろう。


 そんな陛下に免じて、もう少しだけサービスしてあげるとしよう。

当の本人はもう遠慮したいかもだけど。

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