32-47.無謀な挑戦
「ハルちゃんにいっぱい相談したい事があったの。
折角だし、この機会に色々力を借りるからね」
「……」
「ハルちゃん?」
「……」
「ハル」
「べんり?」
「べんり?便利?
ハルちゃんが役に立つかって事なら、とってもよ?
やっぱり私はハルちゃんがいないとダメみたい。
あっちこっち手を出して、全然落ち着けないの。
ハルちゃんがいてくれたら、もっとマシになると思うのだけど」
ハルちゃんは私の体にしがみつく手にぎゅーっと、力を込めた。
ハルちゃん、震えてるの?
いったい何が……。
私は混乱したまま、ハルちゃんをきつく抱きしめる。
「ハルちゃん。大丈夫よ。
私はハルちゃんの事が大好きよ。
便利な道具なんかじゃなくて、伴侶として心の底から愛しているわ」
「……」
「それとも、ハルちゃんはやっぱり道具の方がいいの?
私がそう見れていないから、怒っているの?」
「……」
「ちがう」
「ハルちゃんも一番になりたいの?」
「!……」
「うん」
「なら、たった今からハルちゃんが一番よ。
私の一番って交代制なの。
セレネともそう約束してるんだ」
「いらない」
「そんな」
「てきとーなの」
「ハルちゃんも私を信じてくれないの?」
「むり」
「そっかぁ……それは……困ったなぁ……」
「ゆるがない」
「いちばん」
「……」
「ちょうだい」
「……ごめんね。ハルちゃん」
「……」
「それは」
「……」
「ノアがいるから?」
「ノアちゃんもいるし、セレネもいる。
イロハやニクス、レーネにカノン。
ノルンとミーシャもいるし、他にも沢山お嫁さんがいるの。
皆にチャンスをあげないと、不公平になっちゃうでしょ?」
「ごうまん」
「ふふ。そうだね。
私って最低だよね。
いっぱい誑かして、悲しませて。
きっと死後は地獄に落ちちゃうね。
永遠に死ぬつもりは無いけど」
「ばつ」
「ひつよう」
「ハルちゃんが与えてくれる?」
「いっぱい」
「じゃあお願いするね。
私はいっぱい罰を受けるから、ハルちゃんもどんなに苦しくても側にいてね」
「……」
「それがハルちゃんの分の罰よ。
ハルちゃんと私は一心同体の共犯者だもの」
「なら」
「ハルもノア」
「ゆうわく」
「もんだいない?」
「え?それは勿論構わないけど……」
「ハルがノアの」
「いちばん」
「アルカじゃなく」
「それでも」
「いいの?」
「……そうはならないわ。
ノアちゃんの一番は私とセレネだもの」
「さっきいった」
「アルカはハル」
「いっしんどうたい」
「……もしかしてハルちゃんは、嫌になっちゃったの?」
「ちがう」
「それはそれ」
「ならどうしたいの?
ハルちゃんの本当の望みを教えてくれる?
そんな意地悪がしたいわけじゃないでしょ?」
「それも」
「もういった」
「アルカのいちばん」
「ほしい」
「いつでも」
「ハル」
「ゆうせん」
「ノアよりハル」
「えらんでほしい」
「ごめんね。それは出来ないの。
私はハルちゃんと同じくらい、ノアちゃんの事も好きなの」
「ちがう」
「アルカ」
「ハルより」
「ノアすき」
「どうしてそんな風に思っちゃうの?
ハルちゃんは、私の愛すら信じられなくなっちゃったの?」
「……」
「ちがう」
「ならもう少しだけ信じてよ。
全部は無理だと思うけど……」
「……」
「うん」
「ごめん」
「ううん。悪いのは私なのよね。
ハルちゃんが謝る事じゃないんだと思う。
ごめんね、ハルちゃん。不安にさせて。
私が目一杯構って安心させてあげればよかったんだよね」
「そう」
「して」
「うん。
ハルちゃんが落ち着けるまで、何日だってここにいようね」
「それできたら」
「みとめる」
「アルカ」
「ノアより」
「ハルすき」
「ノアちゃんと会いたい欲求を抑え込んで、ハルちゃんと二人きりでいられればって事ね。
ノアちゃんよりっていうのは私の考えとは違うけど、それで納得できるならやり遂げてみせるわ。
むしろハルちゃんがチーちゃんに会いたくてギブアップするまで粘ってみせるから、覚悟してね、ハルちゃん」
「むぼう」
「ハル」
「ろっぴゃくねん」
「まった」
「そうだった……。
お姉ちゃんに会えなくなってからも一人で耐えてたんだったわね。
数年でギブアップした私とはレベルが違うんだった」
「がんば」
「おうよ!ハルちゃん!
始める前から弱気になったらダメよね!
必ずやり遂げてみせるわ!」




