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32-42.寛大

今回もノアちゃん視点のお話です。





 マリアさんと暫く話をした後、一度自宅に帰る事にした。

アルカにも直接報告をするべきと判断したからだ。


 私はアルカの部屋の前に転移してノックする。

部屋の中からは返事がない。

けれど、部屋の中からアルカの気配を感じる。


 というかもう一人感じる。

これはクレアさんだ。

しかも、二人ともベットの上だ。


 こんな昼間っから何をしていたのだろうか。


 少しムッとしながらも、一呼吸待ってから扉を開けて、部屋の中に入る。


 二人とも、私が部屋に入ってきても気付かず眠っているようだ。


 うん?

いや違うのか。

寝てるのはクレアさんだけで、アルカはアルカ世界に行ってるみたい。


 一体今度はどんな悪巧みをしているのだろう。

リリカ達、オーディションの上位入賞組となにやらコソコソ会ってるみたいだけど。



「クレアさん。起きて下さい」


「……お~う、うん?

 ふぁ~。なんだ、ノアか。

 アルカは、って何でこいつまでここで寝てんだ?」


「クレアさんこそ。

 ここはアルカの部屋でしょう?」


「ああ。そうだったな。

 今朝こっち戻ってから、そのまま寝てたんだ。

 アルカがこっちにいるって事は、もう昼過ぎか。

 少し寝すぎたな」


 ここ数日、アルカも真面目に訓練に参加しているようだ。

午前中だけ。



「珍しいですね。

 クレアさんがそんなに緩んでいるのは。

 マリアさんはちゃんと起きて仕事してましたよ?」


「……姉ちゃんは姉ちゃんだからな」


「適当過ぎません?

 なんとなく言いたい事はわかりますけど」


「とりあえず、体を動かしてくるか」


「昼食は良いのですか?

 何か軽く作りましょうか?」


「いいのか?

 ノアはもう食ったんだろ?」


「ええ。マリアさんのところで頂いてきました。

 お気になさらず。手早く済ませますので」


「なら頼む。久しぶりにノアの飯も食いてえ」


「わかりました。

 顔を洗って食堂に来て下さい。

 頭、寝癖でぐちゃぐちゃですよ?」


「おう。わりいな」


 私はクレアさんと別れて、キッチンに向かった。

この時間、サナは何をしているのだろう。


 既に全員がお昼を済ませているだろうし、屋敷中の掃除でもしているのだろうか。


 一応、今の家事担当はサナだし、キッチンを使うなら一声かけておくべきだろう。


 そう判断して念話を送ると、すぐに許可をくれた。

予想通り掃除をしていたようだ。

サナも少しくらいは休んだりしているんだろうか。


 少しだけ久しぶりに見たキッチンは、私が使っていた頃以上に綺麗な状態を保っていた。


 サナの仕事ぶりに感心しつつ、少しだけ変わっている道具の置き場所に、なんとなく寂しさも感じる。


 私の居場所はどんどん変わっていく。


 アルカと二人きりで、アルカの為だけに料理を作っていた頃の事が遠い昔のようだ。


 たまに、いや結構頻繁に。

無性にあの頃に戻りたくなってしまう事がある。


 別に今の生活に不満があるわけじゃない。


 変化の全てがアルカのせいだと思ってるわけでもない。


 そもそも変えてしまったのは私とセレネだ。

アルカは、私とセレネだけを見ていてくれたのに。


 私達がアルカの心をこじ開けて変えてしまったのだ。


 そんな事はわかってる。


 でも後悔しているわけじゃない。


 ルチアが、ニクスが、ハルが、他の皆が、家族になってくれて良かったと思ってる。


 ただ少し、懐かしんでいるだけだ。

きっとそれだけなんだ。



『アルカったら酷いのよ』


 突然妙なことを言い出すイロハ。



『ノアとセレネは特別だから、誰よりも優先するんだって。

 嫌だったら、一番を勝ち取ってみせろって。

 ハーレムの主が言う事じゃないと思わない?

 私達が本気で奪い合いを始めたら、大変な事になるってわからないのかしら』


「ふふ。

 アルカがそんな事を言ったのは、イロハがそういう優しい娘だからですよ。

 元気づけてくれて、ありがとうございます」


『安心なさい。

 今でもアルカはノアのアルカよ。

 ノアとセレネ、そしてあとハルもかしら。

 とにかくこの三人は明確に区別されてるわ。

 それを見せつけられる私達の身にもなって欲しいものだけど』


『しかたない』

『ハルとアルカ』

『あいぼう』


「セレネは一番ですね。

 私は何なんでしょうね」


『ノアはまた別格だと思うわよ。

 たぶん全員の中から一人を選ぶなら、最後にはノアを選ぶんじゃないかしら』


『何故イロハはそう思うのですか?』


『見てればわかるわよ。

 アルカにとって本当に一番特別なのは、セレネでもハルでもなく、ノアだもの。

 一番考えている時間が長いのはノアの事だし、何かを判断する時も必ずノアを基準にしてるわ』


『むう』


「ハルは不服そうですよ?」


『残念ね、ハル。

 ハルならアルカの側にさえいればチャンスもあるでしょうに』


『むむ』


『少なくとも私ではダメね。

 ノアとの間に付け入る隙なんて、見つけられる気がしないわ』


『そう?』

『イロハもとくしゅ』

『ごういんなの』

『イロハだけ』


『それは特殊なだけで、特別じゃないでしょ。

 単にニクスにしていた事が私にすり替わっただけじゃない』


『すこしちがう』


『本質は同じよ』


「イロハの話も聞かせて下さい。

 溜まっている事があるのなら、言葉にするべきです」


『違うわ。そんなんじゃないわよ。

 ウジウジしてるノアが見ていられなかっただけよ。

 私も少し卑屈になりすぎたわね』


『イロハめんどう』


『ハルに言われたくないわ。

 いい加減、私と交代してアルカの所に戻りなさいよ。

 それがあなたの望みでしょう?』


『まだだめ』

『イロハたりない』

『アルカのとなり』

『かしたげる』


「ふふ。皆気遣ってばかりですね。

 それもこれも、全部アルカのせいです。

 責任持って抱え込んで貰わないとですね」


『なら全員で押しかけてしまいましょう。

 今日はもう仕事は終わりよ。

 アルカの悪巧みも中断させて、私達の相手をさせるわ』


『さんせい』


『これって私も?』


「勿論ルチアも一緒です。

 ついでにサナとクレアさんも誘いましょうか」


『てほんみせる』

『クレア』

『あまえべた』


『そうね。新人教育といきましょう』


『ハルとイロハって、一緒にしちゃいけないんじゃないかしら』


「何だかんだ仲良いですよね。

 立場的には反目しててもおかしくないのに」


『別に理由がないもの。

 少し生意気だけど』


『ちがう』

『なまいき』

『イロハ』


『ハル』

『かんだい』


『『「それは無い(です)」』』

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