32-36.女子会
王様のついでに王子達が帰った後、気を取り直して女子会を始める事になった。
エリスの手前、あまり羽目を外すわけにもいかないけど、少しお酒も飲みながらの無礼講だ。
クレアはマリアさんの隣に座り、楽しそうにお酌している。
何だかんだ、クレアもお姉ちゃん大好きよね。
私の回りには、ロリコンだけでなく、シスコンも多いようだ。
エリスは私の隣だ。
マリアさんやお兄ちゃん達にした事があるのか、手慣れた様子で私にお酌してくれている。
何で私、婚約報告に来た場でお嫁さんの姪っ子とイチャイチャしてるのかしら。
当のお嫁さんは、お義姉ちゃんに取られちゃったし。
良いもん!
エリスちゃんといっぱいイチャイチャしちゃうもん!
「そういえば今日の王様、私のエリスにベタベタしなかったわね。
案外、余裕が無かったのかしら」
賊の侵入とやら以外にも忙しい理由があるのかしら。
「えへへ~
アルカ様のだって~」
可愛い。
「アルカ、物理的に手を出していなければ良いという話では無いぞ」
お義姉ちゃんが微笑みながら怒ってる。マジ怖い。
「ごめんなさい。調子に乗りました」
「まあ、強く止められるわけでもないがな。
元よりそのような約定なのだ。
何より、エリス自身が望んでいる。
だが、それでもアルカは約束してくれた。
違える事など無いと信じているぞ」
「はい……すみません」
「お母さん!アルカ様を虐めないで!」
「うむ。説教はこの辺にしておこう。
私がクレアを取ってしまった事もあるのだしな」
言い訳がましいわ、お義姉ちゃん。
流石の剣聖様も愛娘にはヨワヨワね。
「ありがとう、エリス、お義姉ちゃん」
「お義姉ちゃんか。
悪くない」
「何言ってんだ姉ちゃん……」
クレアは珍しくお酒を飲んでいないようだ。
普段なら率先して飲んですぐに酔いつぶれるのに。
何だかんだ、根は育ちの良いお嬢様だから、今日の主役として醜態を晒さないようにしているのかしら。
『アルカも見習ったら?』
最近イロハが意地悪ばかり言う。
そろそろハルちゃんと交代させちゃおうかしら。
『セレネと国取りするんじゃなかったの?』
あ。イロハに相談しようと思ってたのに忘れてた。
いつも通り、相談するまでもなく把握してくれていたけど。
『別にいいわよ?
面白そうだし』
その話は後でセレネも交えてにしましょう。
『そうね。
その方が話も早く済みそうだわ』
でもなぁ~。
やっぱりイロハに行ってほしくないな~。
ハルちゃんもイロハも居ないなんて耐えられないな~。
『好きになさい。
アルカの決定に従うわ』
もう少し考えさせて。
セレネに声をかけるのも、まだ先で構わないから。
ハルちゃんとも相談しなきゃだし。
それに、ミヤコも希望者を選定してくれているはずだし。
『そうね。
そもそも、国取り自体が単なる思いつきに過ぎないもの。
焦って決める必要はないわ』
まあ、うん。
特段、強い目的意識があるわけじゃないのよね。
ただ、パンドラルカの活動以外にも、ニクス世界との関わり方を考えたかっただけだし。
マリアさん達の住むこの国、ムスペルや、アリア達が通う学園のある、リオシアの動向を同じ立場で見守るべきじゃないかと思ったってだけの話だ。
これらの国では、転移や神力等の一歩進んだ技術が研究され始めている。
研究が進めば急激な発展に繋がるのは間違い無いだろう。
それはニクスの活動にも大きな影響を与えるはずだ。
私はニクスの代行者として、備えておく義務がある。
国の視点で正確な情報を得られるようになるのは、きっと役立つはずだ。
『色々言い訳してるけど、要は自分も何かわかりやすくて派手な悪巧みがしたいんでしょ?
ノアやカノンがアルカに秘密で動き始めちゃったから、混ぜてもらえなくて拗ねてるだけじゃない?』
そんな言い方しないでよ。意地悪イロハ。
『良いじゃない。
その代わり、いくらでも手を貸してあげるわ。
私の事は、アルカの好きに使いなさい。
悪巧みの尖兵でも、愛玩人形でも。なんでもいいわ』
今更何言ってんのよ。
そんなの当然じゃない。
イロハは私のものなんだから。
「アルカ様?」
少し心配そうに話しかけてきたエリス。
イロハとの話に集中しすぎたわね。
「な~に~?
エ~リス~」
「お酒飲みすぎた?」
「ふふ。まだまだいけるわよ~」
「程々にしておけよ。
後でノアに叱られるぞ」
「そうだわ。あの件、ノアちゃんにも伝えておかなきゃ。
お義姉ちゃんの予定はどう?
例えば明日とかでも問題はない?」
「無論だ。
陛下の命は何より優先される」
「わかったわ。それで伝えておくわね」
「今この場に呼んでもらっても構わない。
私もある程度の状況は把握している。
明日動くつもりならば、今のうちに伝えて置くほうが都合も良かろう」
「うん。ノアちゃんに聞いてみるね」




