32-34.団欒
私達は再び晩餐会の席へと戻ってきた。
その頃になって、流石にあれはやり過ぎだったのでは?
なんて後悔が湧き始めてきた。
せめて、マリアさんとエリスの前でクレアを虐めるのは避けるべきだった。
今日は婚約を許してもらいにきたのだ。
こんな事で考え直されてしまっては堪らない。
『今更すぎるわね』
意地悪言わないで。
『自分は人に意地悪するくせに、意地悪されるのは嫌なんて都合が良すぎない?』
うるさいやい。
「アルカ様は怒るとおっかないのね」
何故か笑いながらそんな事を言い出したエリス。
「エリス、やっぱ考え直さねえか?
こいつと一緒に居れば、逃げられなくなっちまうぞ?」
「嫌よ。叔母様。
私はもう決めているの。
それに、確かに少し怖かったけれど、それ以上に羨ましかった。
クレア叔母様はとっても愛されてるんだなって伝わってきたもの」
「そうか……」
「叔母様ももっと素直になったらいいのに。
シル君の話に乗ったのだって」
「エリス。余計な事は言うな」
「は~い」
「まあ、何にせよ、楽しそうにやっているようで何よりだ」
「おう」
あれ?何か好評っぽい?
変わってるわね、この家族。
『どの口で?』
イロハも素直になろうね。
チクチク刺してばかりいないで。
「マリアさん。
さっきはあんな戦いをさせてしまったけれど、クレアもずっと強くなってるわ。
それに、まだまだ成長を続けられる。
何れは私よりもね。
それはきっとエリスも同じよ」
「そうか。
それは羨ましい限りだな」
「マリアさんもその気になったら何時でも来てね♪」
「おい。アルカ」
「心配しなくても別にそういう意味じゃないわ。
以前のクレアと同じように、客人として好きに鍛錬をしていて構わないって話よ」
「そう言いながら、どうせ手ぇ出すんだろうが!」
「もう、クレアったら。
そんな独占欲をむき出しにされては、流石に照れてしまうわ。
今はマリアさん達の眼の前よ?」
「んな事言ってねえよ!!」
「ふむ。まだ隙があるかもしれんな」
「ありませんよ。
流石に次は私がお止めします、殿下」
「そうだよ、シル君。
それに、これ以上格好悪い事したら、本当に叔母様に嫌われてしまうわ」
「次はクレアではなく、殿下をボコボコにします」
「うぐっ……」
「ふふ。クレアは人気者だな」
なんでこんなに好かれるのかしら。
普段の言動はがさつそのものなのに。
少しくらい私だけのクレアでいてほしいものだ。
『アルカこそ独占欲まみれじゃない』
良いでしょ別に。
「シル。その……悪かったな」
「……いや、僕こそ済まなかった。
今更だが、祝辞を贈らせてもらう。
これからの君の人生に、幸多からん事を願っている」
「おう!
シルもな!
何時までも私なんかに拘ってないで、良い相手見つけやがれ!」
「ああ。そうだな」
何だか良い雰囲気。
お互いに微笑みあってる。
クレアが子供の姿だからちょっと違和感あるけど。
『余計な茶々入れは止めなさい』
しないわよ。
私だって空気くらい読むわ。
その直後、空気を読めない御仁が現れた。
「邪魔するぞ」
邪魔です。帰って下さい。
「陛下!何故こちらに!」
慌てて側に寄るマルセルさん。
マリアさんも席を立って近づいていく。
私は王子の方に視線を向ける。
「すまない」
察して一言謝罪を述べる王子。
どうやら、尻尾を掴まれたらしい。
王子もその事に気付いたのだろう。
「御暇しましょうか、クレア、エリス」
「そうだな」
「ダメに決まってるでしょ、アルカ様、叔母様。
おじいちゃんの事、邪険にしないでよ」
だって~
このタイミングでわざわざ来たって事は~
絶対厄介事のやつだし~
『あんな約束をするべきでは無かったわね』
そうよ。
エリスの事があったからって、リップサービスしすぎたわ。
なんで前回借りなんて作っちゃったのかしら……。




