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6-2.白猫少女と聖女の内緒話

私はアルカと一緒に旅を始めた。



きっかけは国から逃げるためなんて悲しい理由だったけど、

久しぶりにアルカと二人きりで一日中

一緒にいられる日々にはとても心が踊る。



セレネが一緒に来ないと知った時はとてもショックだった。

どうしても我慢できなくて、つい強めに問いただしてしまったが、

そこでさらにショックを受けた。



セレネはとても強くなった。

アルカのためになりたくて、自分からアルカの元を離れる決心をした。

私にはとてもできそうにない。



アルカの側を離れると少しでも考えたら、

悲しくてどうしようもなくなってしまう。

そうして、ついアルカに怒ってしまう。

まあ、アルカの無神経な言葉が原因の大半だとは思うけれど。



セレネはアルカの冤罪を晴らすために、

アルカが大手を振ってあの町に戻れるようにするために頑張りたいと言った。



けれど、アルカには内緒で私だけにこっそり本当の目的を教えてくれた。

アルカに教えた理由も本当だけど、

さらにその先も目指していたのだ。



セレネは教会を利用して、女神への信仰を集めるつもりだ。

そうして、女神の力を取り戻して、アルカに謝らせたいのだという。



当然、数年で叶うような願いではない。

セレネもその事はよくわかっている



何十年かけてもその目的を果たしてみせると決意しているのだ。

私と同い年なのに、そこまでの強い意志を持っている。



どうしてセレネはあんなに強いのだろう。



私もアルカが大好きだ。セレネにだって負けていないと思っている。

けれど、セレネと同じことは絶対にできない。



好きな人のために好きな人の元を離れるなんて私には無理だ。

しかも、それを人生をかけてやり遂げようとしている。



いつかきっと夢を叶えられると、叶えてみせると

心の底から信じている。



アルカの家に来た頃のセレネはこうではなかった。

私に遠慮して、アルカに遠慮して

なかなか自分の意思では踏み出せず、

私達が常に手を引っ張っていた。



なのに、いつの間にか私よりずっと強くなっていた。

セレネはアルカが変えたのだと言う。



私は変わっていないのだろうか。

そんな事は無いはずだ。

アルカと一緒にいて、私は大きく変わったと自分でも思っている。

けれど、セレネには遠く及ばない。



セレネの事は大好きなのに、

なんだかモヤモヤしてしまう。



これは劣等感?それとも罪悪感?

セレネ一人に任せて私はアルカの側にいる事を選んだ。



アルカと一緒に旅に出ないで、

あの町であの家とアルカの居場所を守るという選択肢もあったはずだ。

けれど、私は迷わずアルカと共に行くことを選んだ。



これは私の我儘なんだろうか。

私がセレネとは違っていつまでも子供なのだろうか。



モヤモヤする。




セレネは教会についてこうも言っていた。

あの教会は何もかもが不自然だと。



なぜ初代聖女に関する教会が存在しているのに、

女神への信仰心は無くなっているのか。


なぜ聖女と勇者についての認識が

教会と神官から聞いた話とで大きく異なっているのか。


初代聖女は魔王を救おうとしたのに、

なぜ魔王の事が正しく伝承されていないのか。


神官の話では聖女と勇者は遥か昔から存在しているのに、

なぜ「初代」聖女なのか。



考え出すと切りが無いほど、不自然な点が多いのだという。




セレネは私よりずっと頭が良い。

普段はのんびりしているけれど、

本気になったら私ではよくわからない事を考える。

特にグリアさんと一緒に行動するようになってからはそんな場面が多くなった。



きっとセレネはこれからグリアさんと一緒に、

教会を徹底的に調べていくのだろう。



聖女の力を貰う試練でとてもひどい目にあったのに、

その原因となった出来事を自ら調べていくのだ。



やっぱりセレネは強い。私よりずっと。

私はそんなセレネと家族である事を誇りに思う。



私達の大好きなセレネ。

きっとまた一緒に暮らせると信じてる。



セレネは一生かけても頑張るつもりだけど、

案外アルカがあっさり解決して迎えに行くかもしれないよ?



もしもその時は、内緒ねって約束をしたセレネには申し訳ないけど、

アルカに全てを話してしまおう。

だって私もセレネと一緒にいたいのだから。



アルカとセレネと私、三人でいつまでも一緒にいたいのだから。


「6-1」の誤字報告くださった方、ありがとうございました!

いつも読んで頂けて大変嬉しく思います!


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