32-30.準備
暫くペンギンリリカ達との談笑を楽しんだ後、今度はミヤコと合流した。
「国取りですか。
長丁場となりそうですね。
であれば、ハルちゃんズの誰かが望ましいかと。
例えば、イロハ様などいかがでしょう?」
「イロハ?
セレネとイロハの組み合わせはパワフル過ぎない?」
確かに能力的には適任だと思うけど。
「ツクヨミに見張りを任せては?」
「なるほど。それならなんとかなるかも。
イロハにも相談してみるね」
そろそろ少しくらいは外に出してあげないとね。
イロハの軟禁を少しずつ解いていく事にしよう。
あ、でも。
そうなるとハルちゃんがイロハと交代して戻って来れるのも遅くなっちゃうかな?
チーちゃんがハルちゃんの代理を務められるようになれば、その心配も無くなるのかしら。
何にせよ、ハルちゃんにも相談してみる必要がありそうね。
「念の為、他の子も探してみてくれる?
今回は万能な子である必要はないわ。
多少マニアックな子でも、戦闘力が無い子でもいいの。
実績も問わないわ。単に興味が強いとかでいいから。
どの道ツクヨミも付けるから、そのつもりでお願い」
「かしこまりました。
その条件であれば該当者の選定も可能かと」
「ありがと!ミヤコ!」
私、ミヤコとシーちゃんに頼りすぎじゃないかしら。
特に優秀な娘達だから、ついつい甘えちゃうのよね。
二人の補助が出来るような娘も欲しい所だわ。
本人は必要ないと思うのかもだけど。
そのまま、諸々頼んでいる件の打ち合わせを済ませ、運営委員会の娘とのお礼プチデートを済ませた頃には、それなりに良い時間になっていた。
そろそろニクス世界に戻って身支度を済ませてこよう。
クレアとエリスの正装も、シーちゃんが用意してくれた。
しっかり準備して、王子達を精々驚かせてやるとしよう。
エリスが注目を集めてくれれば、クレアの件が薄れるかもしれないし。
いや別に、だしに使うとかそんなんじゃないよ?
当然、エリスの事だってあげるつもりはないし。
単に妹が立派になればお兄ちゃんズも喜ぶだろうってだけの話だ。
私はクレアと一緒にニクス世界に戻り、アリア達を出迎えた後、エリスと共に私の部屋に移動する。
その際、セフィ姉も付いてきた。
どうやら、エリスの身支度を手伝ってくれるらしい。
エリスとセフィ姉もすっかり仲良しだ。
流石コミュ強コンビ。
「アルカ、ルネルが酒席を用意しろって」
「飲み会?
ルネルと私だけ?」
「ううん。私も。
私との婚約の件で話がしたいんじゃないかな」
セフィ姉との婚約は、当然ルネルにも報告済みだ。
とはいえ、ゆっくり話したい事でもあるのだろう。
そういう事なら、こちらとしても喜んで準備しよう。
ルネルがわざわざ腹を割って話しをしたいと言ってくれているのだし。
お酒の席でというのは、そういう事なのだろう。
「早速、明日の晩でもいい?」
「うん。伝えとく」
「お願いね、セフィ姉」
そういえば、セフィ姉のぷち親睦会も続けなきゃ。
昨日今日明日と用事が入ってしまったけど。
次は誰かしら。
この前は、ノアちゃん、セレネ、カノンが参加してくれたのよね。
子供達はまとめてやるとして、ニクス世界組はお姉ちゃんとレーネかな。
ニクス達、三女神ももちろん忘れずに。
折角だし、サナ達フィリアス組との機会も設けたい。
後はシーちゃんやアリスもかしら。
前回少しだけ参加してくれたけど、あの時はセフィ姉が本調子では無かった。
今度改めて場を設けるとしよう。
その時は、ミヤコとコマチも誘ってみようかしら。
グリアはどうしよう。
お姉ちゃんとレーネの所に混ぜるかな。
それとも、またセレネを誘って別の機会にしようかしら。
まあ、ゆっくり考えましょう。
飲み会なんて、何回やっても良いんだし。
「クレア!可愛いわ!最高よ!」
私は着飾ったクレアの両脇に手を入れて持ち上げ、そのままくるくる回りだす。
そう言えば、誰も言わないから流してたけど、クレアまだ子供のままなのよね。
リリカに頼んで変身してもらう?
でもな~勿体ないな~こんなに可愛いのにな~。
とはいえ、流石に王子達も来るなら不味いわよね。
でも面白そうだから良いかしら。
私達が色々出来るのは知っているのだろうし。
きっと変身魔術で子どもの姿になったのだと思ってくれるわよね。
あれ?そうすると、私が重度の◯リコンだと思われる?
いやまあ、事実だけどさ。
それはそれとして、何か釈然としないような……。
「やめろバカ!」
言いながらも無理やり抜け出そうとはしないクレア。
ドレス姿に慣れてなさすぎて、動きづらいのかしら。
単に綺麗な衣装を乱したくないのかも。
私はクレアを降ろす。
今度はゆっくり目の前でクレアを回して、崩れた所が無いか確認する。
うん。バッチリ。
「こっちもいいよ~」
セフィ姉の声に振り向くと、セフィ姉がエリスを差し出してきた。
「完璧よ!!
エリスもとっても綺麗だわ!」
「えへへ~」
抱きしめたい。くるくるしたい。
でも我慢。
「折角だし、このままエリスも下さいって頼んでしまおうかしら」
「本当!?アルカ様!?」
「ふふ。ごめんね♪
そんなついでじゃなくて、いつかエリスの為だけに行きましょうね」
「え~!
ついででもいいよ~?」
「ダメだよ、エリス。
そんなの、お母さんだって許してくれないよ?」
セフィ姉も一緒になって止めてくれた。
流石一児の母。言葉に実感が籠もってる。
「そっか~。
そうだよね~。
うん。わかった。
待ってるね!アルカ様!」
「私も待ってるわ。
エリスが大人になって、心置きなく愛し合えるのをね」
「も~!アルカ様のえっち!」
別にそういう意味じゃないよ?
まあでも、なんか嬉しそうだからいっか。
エリスちゃんったら、興味津々なんだから。
いや、うん。ごめん。
私のせいよね。
かつて寝ぼけてベットに引きずり込んだ時に、エリスの性癖を狂わせてしまったらしいし。
残念ながら本当の最初のやつは覚えてないのよね……。
『ちなみにその時は、「全てが済んだらもっと凄いことしてあげる」とか言っていたのよ?
結局、もう少し大人になったらとか言ってのらりくらり先延ばしにしてるけど』
そう……だっけ?
『エリスに感謝なさい。
約束破りを責めもせずに待っていてくれるのだから』
はい……。ごめんなさい……。
「エリス~!」
「ストップだよ!アルカ!
お触り禁止!」
我慢できずに抱きしめようとしたら、セフィ姉に止められた。
エリスも娘認定したのかしら。
それとも、単にセットが乱れるのを懸念したのかしら。
「酷いわ!セフィ姉!
ただ少し頬ずりするだけよ!
セフィ姉もいつもレヴィにしてるじゃない!」
「ダメに決まってるでしょ。
せめて、用事が終わるまで我慢しなさい」
なるほど。そっちか。
「は~い」
「お前、今日は私との婚約を伝えにいくんだろうが。
エリスに粉かけてんじゃねえよ」
「もう~!クレアも可愛いなぁ!」
「何勘違いしてやがる!?
やめろ!にじり寄ってくんじゃねえ!」
「よいではないか~よいではないか~」
「アルカ、そろそろ出るんでしょ?」
「そうね。
ありがとう、セフィ姉」
「うん。しっかりね。
その調子で失礼な事したらダメだよ?」
セフィ姉が何か変。
私のセフィ姉はもっとお調子者だった筈なんだけど。
『アルカへの接し方が急変するのはいつものことでしょ。
それだけ振り回してるんだと、いい加減理解なさいな』
冗談よ。わかってるわ。
何だか子供扱いされてるみたいで、少し複雑なだけよ。
何でか嬉しくもあるんだけど。
セフィ姉は私のママになってくれるかもしれない女性だ!




