32-25.我慢
「ぜーぜー」
「はーはー」
息も絶え絶えに、ベットに転がるアリアとルカ。
少し調子に乗って擽り過ぎたかもしれない。
二人とも満身創痍だ。
まあでも、これならぐっすり眠れるんじゃないかしら。
「えっと、ごめんね?
アリア?」
恐る恐るアリアに声をかけるレヴィ。
でもレヴィ、少し怖いくらい黙々と擽ってたわよ?
なにか目覚めかけちゃった?
「ふー。大丈夫よ、レヴィ。
起き上がりたいから、手を引いてくれる?」
「え、うん」
素直にアリアに近づくレヴィ。
面白そうだから少し様子を見てみよう。
『やっぱり小春先輩って性格悪いですよね?』
ごめんって。
案の定アリアは、レヴィの手を握って引っ張り込み、レヴィの上に覆いかぶさった。
「アリア」
「わかってるわ。健全に。よね」
「え?え?」
再び戸惑い始めたレヴィ。
アリアは上体を起こし、下半身でレヴィの体を固定して脇腹に手を差し込んだ。
「あれ?」
「……アリア?」
どうやらレヴィは擽りに強いようだ。
アリアの技量では何も感じないらしい。
でも、さっき私には反応してたのよね。
アリアが下手くそなのか、それとも他に理由があるのかしら。
「おかしいわね……」
「アリア、交代」
今度はルカが挑戦するようだ。
アリアは下半身を固定したまま上体を起こし、手を引いた。
ルカはレヴィの頭を膝で挟むように座る。
そのままレヴィのパジャマを捲り上げ、脇の下を擽りはじめた。
「ねえ、服戻して。
恥ずかしいよ、ルカ」
「手強い……」
ルカでも刃が立たないようだ。
ルカは素直に擽りを止めてパジャマを元の位置に戻した。
「次はリヴィもいってみようか」
「お母さん!もう終わり!」
「あ、うん。ごめん」
私はレヴィを抱き寄せ魔法で救出して、抱きしめながら頭を撫でる。
少しだけ悪戯心が芽生えかけるも、どうにか抑え込んで理性を保つ。
「そろそろ寝よっか皆」
「まだ抱っこしてない」
「ふふ。そうね、ルカ。
レヴィ、交代してもいい?」
「う~~」
あらら。
すこし振り回しすぎてしまったものね。
仕方ない。
私は私世界のホテルの寝室に全員連れて移動した。
それからシーちゃんに頼んで私(分身体)を作り出し、ルカを抱きしめて横になる。
「何よそれ!!
何でアルカ二人いるの!?」
「アリア、もう大声出さないで。
ほら、こっちで一緒に横になりなさい」
「今のどっち?」
「ルカの方よ」
「どっちが本物なの?」
「どっちも私よ。
いいから今日はもう寝なさいな」
「無茶言わないでよ!」
「落ち着きなさい、アリア。
ルカもレヴィもリヴィも、皆良い子にしてるじゃない」
「なら私の分も出して!」
「無理よ。悪いけど、まだ一人しか増やせないの」
「頑張って!」
「今度ね。ちゃんと練習しておくから」
「今すぐ!」
「アリア」
「私だって抱きしめてほしいの!」
「ルカと交代で抱きしめるから。
こっちにきて、アリア」
「むう~~」
抗議の唸りを上げながらも従うアリア。
取り敢えずは我慢してくれるようだ。
リヴィは大人しく、レヴィと一緒に抱きしめられている。
レヴィも少しリヴィに譲る分には我慢してくれたようだ。
やっぱり私一人では手が足りていない。
昨日今日と、物足りなさに我慢できなくなってきた子達が続出している。
深層の乱用を抑えつつ、どうにかする手段を考えなきゃ。
分身体を使いこなすのには、まだ暫く時間がかかる。
いっそフルモードを常用出来るようにするべきかしら。
流石に大げさ過ぎるかな……。
『かんがえある』
『おかえり。お疲れ様、ハルちゃん。
それに、ありがと。こっちに来てくれたのね。
それで、考えって?』
『ルールきめる』
『どんな?』
『ふるもーど』
『けいかくうんよう』
『結局使うの?』
『きょくしょてき』
『う~ん。
言わんとする事はわかるんだけど、やっぱりそれはなにか違う気がするのよね』
『わがまま』
『アルカ』
『ちからたりない』
『いやなら』
『しょうじん』
『それまで』
『がまん』
『そうね……。
でもごめん。考えさせて。
出来るだけ、人らしい方法で解決したいの』
『しかたない』
『そのうち』
『ぼうはつ』
『するかも』
『けど』
『しんぱい』
『いらない』
『ひけし』
『みんなでする』
『まかせろ』
『ありがとう、ハルちゃん。
そうね。焦らなくても皆が助けてくれるわよね』
『けど』
『ようどりょく』
『うん。皆に頼り切りじゃダメだものね。
もっと頑張るわ』
『うん』
『がんばれ』




