32-21.参戦
私達はアリア、ラピス、ルカ、リヴィ、クルルの学園組の話を聞きながら食事を続けている。
アリアの担任、サマラス教諭はより強い敵意を向けてくるようにはなったものの、嫌味の一つも言わなかったらしい。
何やら溜め込んでいそうな感じだが、大丈夫だろうか。
近い内に何らかの形で、爆発するのではないだろうか。
アリアとラピスのコンビをどうこう出来る人なんて居ないだろうけど、それでも不安は残る。
王子との関係は危険もあるがメリットも大きいようだ。
一応、大人しくなっているのは事実だし。
とはいえ、やはり同年代の男の子と仲良くするのは好ましくない。
アリアは私のお嫁さんだ。
そこんとこ、一度話を付けておきたいものだ。
『落ち着いて下さい。小春先輩』
私の中に戻ったヤチヨに窘められた。
『ヤッチーも私の考えすぎだって言うの?』
『誰ですかそれ。
まったく、変なあだ名付けないで下さい。
ヤチヨって名前気に入ってるんですから』
『ヤチヨちゃん』
『ちゃんもいりません』
『ヤチヨん』
『んもいりません』
『ヤチヨたん』
『いい加減にして下さい』
『ごめん、ごめん。
えっと?それで何の話だっけ?』
『はぁ~~~』
『冗談よ。
心配してくれてありがとう、ヤチヨ。
でも大丈夫よ。何もしないから。今は』
『「今は」じゃありませんよ。
そんな事より、気にするべき事があるんじゃないですか?』
『なんかあったっけ?』
『サマラス教諭の事です。
チハちゃんズ潜入の件、急いだ方が良いのでは?』
『そうね。
取り敢えず、試しにリリカに行かせてみようかしら。
アメリにはギルドの件を任せたいし』
『シオンに行かせるんじゃなかったのですか?』
『ふふ。良い子ねヤチヨ。
ちゃんとこっちの事も把握してくれていたのね』
『当然です。小春先輩に頼まれたのですから』
『ああ、もう!この子も可愛くて堪らないわ!』
『食事中です。落ち着いて下さい』
『後なら良いのね!?』
『……好きにして下さい』
『アルカ、私が先よ』
『いっそ一緒にってどう?』
『巫山戯たこと言ってないで、話を進めて下さい』
『シオンはまだ若すぎるわ。
急ぎの仕事に付けるには、経験不足よ』
『リリカの不在を任せて、経験を積ませるつもりですか?』
『ええ。先ずはリーダー代理の代理って事で』
『チハちゃんズは、リリちゃんズに改名されては?』
『ダメよ。「リリちゃん」はヒサメちゃんにだけ許された呼び方なんだから』
『それに、ハルちゃんズの下部組織って言い訳も使えなくなってしまうわね。
そもそも使えたところで、ノアがそんな言い訳認めるはずもないけど』
『建前を残しておくのは大切な事よ。
元の方針がボヤケてしまうわ』
『まあ、どちらでも構いませんが』
『ありがとう、ヤチヨ。
チハちゃんズの事を気にしてくれて』
『小春先輩の為ですから』
『何この子!?可愛すぎる!?』
『アルカ、ステイ。
ヤチヨ、そんなあからさまなおべっか使って、何を企んでいるの?』
『近々行われるサバゲー大会において、小春先輩の相棒の座を勝ち取ろうかと』
『もしかして、イロハとのやり取りも聞いてた?』
『はい。ダダ漏れでしたので』
『……』
『イロハったら。
珍しくフィルターをかけ忘れたのね。
まあでも、そういう事なら勿論構わないわ。
ヤチヨも私の一番を目指して頑張ってね♪』
『今ここでサバゲー大会の約束はしてくれないのですか?』
『その方がヤチヨにアタックしてもらえるじゃない』
『意地悪です。小春先輩』
『その落ち込んだような態度も演技なのね。
この子、意外と侮れないわね』
『イロハもウカウカしてられないんじゃない?
今は趣味の為だとしても、きっとすぐに本気になるわよ?』
『調子に乗らないで下さい、小春先輩。
先輩の事なんてなんとも思ってないんですからね。
あくまでもサバゲー大会の為なんですらね』
『若干棒読み気味なのが気になるけど、そのなんでも取り入れるハングリー精神は悪くないわ』
『恐縮です』
『もう落ちてない?』
『さて、どうでしょう』
『どうせ時間の問題よ、イロハ』
『それをアルカが言うのはどうなのよ』
『小春先輩は本当に調子に乗っていますね』




