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5-14.vs魔王②

早速斬り掛かっていくクレア。



クレアの攻撃を腕に纏った闇の手甲で受ける魔王。

クレアが力任せに押し込むと、魔王が少し後退する。



今度は戦えてる!


初撃は前回の戦いが嘘のようにクレアの優勢に見える。


更にそこからセレネが魔王の力に干渉する。

段々と魔王の力を削っているようだ。


初代聖女の想いと共に技術も引き継がれたらしい。

これも女神の思惑通りなのだろうか。

お陰で魔王とも戦えているが、なんだか癪だ。



そこからどんどんクレアの動きは加速していき、

クレアの速すぎる動きにノアちゃんすらついていけなくなる。


クレアもセレネと同じように勇者の記憶を見たのだろうか。

ものすごい勢いで力の使い方が馴染んでいっているように見える。



ノアちゃんも私もグリアもこの戦いでは役に立てないのだろう。

私達は戦闘に参加する事を諦めて二人と魔王の戦いを見守る。



どうやら魔王は闇を武具や防具に変換して戦う近接戦主体のようだ。

もしかしたらクレアに合わせているだけなのかもしれないけれど。


クレアと魔王が切り結ぶ軌跡が闇と光の線にしか見えなくなってきた頃セレネが前に出た。


どうやらセレネには二人の動きが見えているらしい。

クレアと魔王の直ぐ側で一緒に戦っている。


魔王の動きに結界で干渉してクレアの有利になるように立ち回る。


少し鈍ってきた魔王の動きに対して、クレアの動きはどんどん加速していく。


それでも戦いはまだ終わらない。

どれだけクレアの方が速く動いても、

魔王もまた止まらない。

互いに一歩も引かず刃を振るい続ける。


どれだけ血が飛び散っても、

クレアはセレネが癒やす。

魔王は自らを闇で覆っていく。



本当に勇者と聖女だけが魔王と戦える。


私は何のためにここにいるのだろう。

何のためにこの世界に呼ばれたのだろう。


役目を果たす時は二人のように新しい力を貰うのだろうか。


それとも、二人の力に自力で追いつけるのだろうか。


最高ランクの冒険者になって、

苦戦する魔物もいなくなって、

もう私の強さはここが限界なのだと思っていた。


この世界に来て五年以上も戦い続けてきた。

けど逆に言えばまだたった数年だ。


まだまだ強くなれるのかもしれない。

なる必要があるのだろうか。

私にも魔王のような強敵が現れるのだろうか。


その時はクレアとセレネすら敵わないのだろうか。


今目の前で行われている戦いと自分の圧倒的な差に不安が募っていく。



「アルカ!大丈夫です!セレネ達は絶対に勝ちます!」


私の不安を感じ取ったノアちゃんが私の手を握って励ましてくれる。


そうだ。今はセレネが、クレアが戦っているのだ。

私自身の個人的な不安に囚われている場合じゃない。



「そうだね。二人を信じよう」


私は自分のことしか考えていなかった事を恥じて、

ノアちゃんの勘違いに乗っかる事にする。

ごめんね。そうだよね。

クレアとセレネが頑張ってくれてるんだもん。

今はこっちに集中する時だよね。


何も出来ないけど、せめて見守ろう。

二人の勝利を信じよう。


ありがとう。ノアちゃん。


ちゃんと私も前を向くよ。

将来の事は将来考えればいい。


今やるべき事をやろう。




そうして、長い事戦いを見守り続けた。


何時間たったのかもわからなくなった頃、

遂に魔王は膝をついた。


そして、迫る勇者クレアの刃を

まるで迎え入れるように受け入れた。



胸にクレアの剣が刺さったまま、魔王はセレネに語りかける。


「セレネちゃんだったかな?

どうかこのまま死なせておくれ。

もう封印されるのはごめんなんだ」


「・・・わかりました」


「あなたはどうして邪神の力を受け取ってしまったの?」


「こほっ・・・答えづらい事を聞くんだね。」


「無理には聞かないわ。

ごめんなさい。どうしても他人事に思えなくて。

私もこの世界の人間じゃないから」


「・・・なるほど。

そんな事を言われたら話すしか無いじゃないか」


「ごめんなさい」


「良いよ。同郷のよしみだ。力になろう。

とは言っても君はきっと大丈夫だよ。

こんなに可愛い娘さん達がいるんだから」


「そうね」


「邪神は僕の復讐心を利用したんだ。

僕にはどうしても殺したい相手がいた。

結局そいつには逃げられてしまったのだけどね」


「何があったの?」


「そこはもう意味の無いことだ。

ところで、君の杖をよく見せてくれないかな。

もうあまり見えてないんだ。

近くで見せてくれると嬉しいな」



私は魔王の顔の前に杖を掲げ、

魔王の手を取って杖を触らせる。



「ああ、やっぱり。そんな気はしていたんだ。

良かった。最後にこれを見れたのは神に感謝したい気分だ。

彼女の思惑ではないだろうけどね」



そのまま、魔王は幸せそうな笑みを浮かべて

静かに息を引き取った。


散々に神に運命を弄ばれて、

それでも最後にはその神にすら感謝して。

優しい魔王は遂に終わりを迎えた。




最後の最後に複雑な気持ちにさせて。

こんな事あの人に言えるわけ無いじゃない・・・

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