1-8.続く異変
ダンジョン巡りは難易度の低い順に回っていった。
例の魔道具を取り付ける際、当然ながら
ダンジョンコア、つまりダンジョンの最奥にたどり着かなければならない。
高難易度ダンジョンに仕掛けを施すにはそれ相応の戦力が必要となる。
それだけの戦力が動けば必ず目立つ。はずだ。
なので、比較的設置の容易な低難易度のダンジョンを優先する事にした。
実際、前回のダンジョンは低難易度のものだった。
それとは別に、ノアちゃんの成長目的もある。
一石二鳥だ。
とはいえ、あまりゆっくりとはしていられないのも事実。
次の暴走が発生した時に私が遠方のダンジョンにいれば、
対処の初動が遅れるかもしれない。
ノアちゃんにも戦ってもらいつつ、早めに動いていこう。
そんなこんなで、5つほどダンジョン巡りを終えた。
今のところ例の魔道具は見つかっていない。
次に向かう前に一度ギルドの様子を見てみる事にした。
どこかで暴走が起きていたら本末転倒だ。
----------------------
「アルカ!良い所に!」
迫ってくるギルド長。
すかさず回れ右をする私。
私の前に立ちはだかるノアちゃん。
「ダメですよ。アルカ」
くっ!我が弟子よ!腕を上げたな!
順調に成長しているノアちゃんからは逃げられない・・・
しかもこの子私が動く前に動いてたよ?
ギルド長の声聞いただけで私の行動予測して
先回りしてたよ?
ノアちゃん恐ろしい子!
「また暴走が発生した!至急向かってくれ!」
あうち!まっじで!
なにかあったら困ると思って顔出したけど、
本当になにかあることある?
なんかもうフラグだったのかもしれない。
「しかも今回は中級難度のダンジョンだ!
前回よりマズイことになっている!」
現実逃避している場合じゃない。
ダンジョンの名前を聞いてすぐに動き出す私とノアちゃん。
ノアちゃんとのほのぼの日常を過ごしたいのに次から次へと!
こんなの詐欺よ!誰が誰を騙してるかは知らないけど!
ダンジョンの前には前回と似たような光景が広がっていた。
今回は前回よりも初動が遅かったため、かなり戦線が広がっている。
流石にこの位置から一撃で吹き飛ばすのは難しい。
私は空に上がり、上空から最上級の範囲魔法を放つ。
半分くらいは潰せたはず。
後はここにいる冒険者たちに任せて、
早くダンジョン内をなんとかしよう。
今回は宮殿タイプのダンジョンだ。
前回とは通気性が段違いなので、
得意の火魔法を使える。
前回ほど苦戦はしないだろう。
急降下した私はノアちゃんを抱えてダンジョン内に突入する。
流石のノアちゃんも私の暴挙に硬直しているが、
かまっている余裕がない。
ごめん、ノアちゃん!
尻尾がふしゃーってなってるのめっっちゃ可愛い!
意外と余裕あるかもしれない。
ついでに眼下の魔物に爆撃して数を減らしながら奥へと進んでいく。
ダンジョンコアのある場所まで辿り着く。
前回と同じようにコアが怪しい光を放っていた。
今回は最初から自身にバフをかけまくって、
速度を向上させた状態で魔道具を掴み取り、強引に取り外す。
上手くいった!
ダンジョンコアが魔物を召喚する前に魔道具を取り外す事ができた。
正常に戻ったダンジョンコアが
まるで失ったリソースを取り戻そうとしているかのように、
次々に魔物が消えていく。
今回の件はこれで解決だろう。
しばらく様子を見て、ダンジョンが落ち着いた事を確認し、
ダンジョン外に出る。
ダンジョン外ではまだ交戦中だった。
ダンジョンの中と違って魔物は消えていないようだ。
そのまま上空から残敵掃討に参加する。
そうして、全てが落ち着いてから
ようやく地面に降り立った。
ノアちゃんを下ろそうとして気付く。
「ノアちゃん!?」
ノアちゃんは目を回して気絶していた。
ごめん。ほんと。