31-51.ふらふら
私は最初にセフィ姉をニクス世界に送り届け、再び私世界に戻ってきた。
「アルカ!!
突然どこ消えたのよ!!」
ニクス世界に出てからは時間も進んでいる。
セレネ達は、突然目の前から私が消えたように見えただろう。
これ何かに使えないかしら。
転移あるから、いらないかな。
そもそも、ニクス世界の私の肉体は動かせないし、意味ないか。
「セフィ姉を先に帰してきたのよ。
それより、セレネ。
今から私と二人で深層に潜りましょう」
「アルカ!!」
感激したセレネが飛びついてきた。
ハルちゃん、シーちゃん、アリスからはブーイングの声が上がる。
セレネの次は三人ともだ。
大丈夫。三人にとっては一瞬の事だもの。
「ちょっとアルカ!
なんでこんなにセフィの匂いがするの!?
あんたら、先に深層行ったんでしょ!
もう最後までしちゃったの!?」
「セフィ姉とは何も無かったわ。
同じようにこねくり回されてただけよ」
とにかく移動しよう。
今のセレネがまともに話を聞いてくれるかは微妙だし。
私は深層にセレネを連れて潜りこみ、子供モードでベットに横たわった。
興奮したセレネがすぐさま飛びかかってくる。
「優しくしてね?」
「無理よ!!」
あかん。
なんかいつも以上に暴走してる。
これはハードなやつかもしれない。
残りの三人の為に、私の気力を残しておいてくれると良いのだけど。
とはいえできる事も思いつかないので、とりあえず暫くはセレネの好きにさせるつもりで身を委ねた。
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「満足した?」
「うふふ~」
したようだ。
セレネは少し気持ち悪い笑顔を浮かべて私に向けた後、私の胸に頬ずりした。
「そろそろ戻ろっか」
「もうちょっと~」
「さようで」
「アルカぁ~」
「なに?」
「だぁ~いすき」
「私もよ。セレネ」
「うふふ~」
セレネの場合、この状態の時に無理やり帰っておかないと、無限ループに突入するのよね。
本人はもうちょっとなんて言ってるんだけど。
「セレネ、帰ろうよ。
ノアちゃんと約束したでしょ?」
「そうね~」
「ほら、起き上がって。服を着て」
「そうね~」
ダメだ。聞いてない。
かと言って、こちらから服を着せようとすれば、そのまま再度発情して襲いかかってくる可能性もある。
セレネはそうやってズルズル引き伸ばしてくるから厄介なのだ。
そのまま、二、三日は平気で費やしてしまう。
流石にノアちゃんにキツく言われてしまった手前、そのルートは避けたい。
セフィ姉にも叱られてしまったし。
今日の私は一味違うのだ!
「服着ないなら、その格好のままノアちゃんの部屋に放り込むよ?」
「それもいいかも~」
これもダメか……。
いや、もちろんやらないけども。
今のセレネを放り込んだら、絶対に寝てるノアちゃんに襲いかかるだろう。
飢えた肉食動物の前に、新鮮な生肉を差し出すようなものだ。
あれ?生肉の前に肉食動物を解き放つの方が正しいかしら。
いや、そんな事はどうでもよくて。
とにかくそんな事をしたら、私がノアちゃんに怒られる。
間違いない。
「セレネ~
お願いだから正気に戻って~」
「ふふ。なにを言ってるのぉ~?」
セレネはデレデレのドロドロだ。
まさか私の体から、何かしらの危険薬物でも分泌されているのかしら。
「セレネ。
いい加減にしないと、ルビィに今のセレネを見せるよ」
「……やめなさい」
「あ。戻ってきた。
おかえり、セレネ」
「おかえりじゃないわよ!
流石にルビィ出すのは卑怯でしょ!
折角の幸せな気持ちが罪悪感にひっくり返ったわよ!」
「セレネもすっかりお母さんね」
「ルビィを巻き込むのは、いくらアルカでも許さないわよ」
「そんなつもりは無いわよ。最初から」
「まったく」
「ところで、今日はルビィどうしてるの?」
「レーネのところで一緒に寝てるはずよ。
レヴィもね」
「そっか。なら、セフィ姉は今一人なのかしら」
「でしょうね。
良いの?婚約したばかりの相手を放りだして」
「良くないわ。
けど、この後残り三人の相手もしなきゃ。
とはいえ、深層はもう使いたくないし。
どうしましょう。困ったわ」
「三人の事は私に任せなさい」
「ダメでしょ。
ノアちゃんとの約束があるじゃない。
セレネが余計な事言ったせいで、私以外とは潜らず、短時間で済ませるって厳しく約束させられてたじゃない」
「深層じゃなきゃ、約束には反しないわ」
「そんなの屁理屈よ」
「良いじゃない。あの子達なら。
ノアだってそういう意図で言ったわけじゃないわ」
「それはそうだろうけど……。
大体、ハルちゃんはどうするの?」
「そうだったわね。
ハルの目的は私じゃないわよね」
「微妙に相性悪いのよね。
ハルちゃんが求めるのは苦しい系なやつだから」
セレネが好きなのはじっくりコトコトだから。
ハルちゃんには物足りないし、じれったいらしい。
「それについてはアルカの守備範囲が広すぎるだけよ」
「それはそう」
「ハルはアルカに任せるわ。
手早く済ませて、セフィのところに行ったら良いじゃない」
「終わる頃にはとっくに寝てるわ」
「なら先にセフィの方に行けばいいじゃない。
ハルはお預けしときなさい」
「ハルちゃん、焦らしは嫌いなのよ」
「わがままね」
「そもそもセレネのせいでしょ?
セレネが暴走するから、ハルちゃんにも火がついちゃったんじゃない」
「人のせいにしないでよ。
元はと言えば誘ってきたのはアリスだし、そのアリスを呼び出したのはアルカよ。
そもそも、アリス達に寂しい思いをさせたのも、深層を乱用してノアに禁止令を出されたのも、全部アルカのせいじゃない」
「はい……仰るとおりです……」
「こうなったら正面から頼むしかないんじゃない?
今日だけはセフィを優先したいから、ハルは我慢してくれって」
「それは……」
「いい加減、そういう事だって必要でしょ。
今までは誰かが察して身を引いてくれていたから、どうにかギリギリ回ってただけよ。
そうやって我慢しきれなくなったのがシイナやアリスよ。
アルカはそんな娘を出さないように、もっと計画的に行動なさい」
「うん……」
「何でもかんでも受け入れていてはダメよ。
そんな事をしていては、計画通りに動けないわ。
かといって、融通が利かないのもダメよ。
セフィとの関係みたいに、突発的で想定外の何かが挟まる事もあるんだから」
「うん」
「そうやって自分の中にルールを作って、毅然とした態度で接しなさい。
どうしようどうしよう、なんて言ってるだけじゃ何も解決しないのよ」
「うん」
「わかったらなら動きましょう。
ハルに謝って、セフィのところに戻る。
今のアルカがするべきなのはそれだけよ。
それ以降の事は、改めて考えなさい。
必要なら私も相談に乗るから」
「うん。わかった。
ありがとう、セレネ」
「愛してるわ、アルカ。
私だけでなく、みんなが。
だから、皆を信じて、頼って、上手くやりなさい」
「うん!」




