31-41.家族会議・続
今回もアリア視点のお話です。
「取り敢えず、この会議の締めとして、カノンの報告とここまでの話を纏めます。
一つ、ルイザさんの件。
一つ、ルスケアの件。
一つ、王子親子の件。
今はそんなところでしょうか?
昨日の会議で上がっていた、担任教師の件はどうですか?
今回、首尾よく目論見を阻止した事で、より苛烈な手段を講じられてしまう可能性もあるのではないでしょうか」
「普通に考えればあり得ないわね。
王族直々の横槍があったのに、尚も逆恨みして排除しようだなんて、正気の沙汰ではないわ。
国にいられなくなるどころか、下手すると処刑されかねない狼藉よ。
すぐに相手にも、アリアが王族のお気に入りだという事は、知れ渡るはずなのだもの。
例え、サマラスとかいう担任一人がアリアを敵視したとしても、周囲の者達が賛同するとは思えないわ。
一教師の個人的な活動だけで、理事長や王子の裏をかくのは不可能よ」
確かにカノンお姉ちゃんの言う通りだろう。
とはいえ、サマラス先生は多分その程度で考えを変えられる人では無いと思う。
なんとなくだけど。
多分、より恨みは強くなるんじゃないかなぁ。
脅威になりうるのかは別として。
「アリア、油断しないでね。
私もカノンの言う通り大っぴらな手段は取れないと思う。
けど、やりようはいくらでもあるものよ。
例えば、アリアに嫌がらせをして、自分から辞めたいと思うように仕向けたりね。
何かされたら、すぐ誰か大人に伝えてね」
アルカが真剣な声音でそう言った。
アルカは時たま、実は人間不信なんじゃないかと思えるような事を言う。
ううん。ないかじゃ無いのよね。
きっとそうなんだろう。
アルカは身近な人達以外を基本的に信用してないのだろう。
アルカの人見知りは、それが原因なんだと思う。
まだそんな部分がどれだけ残ってるのかはわからないけど。
「うん!
困ったらすぐに言うわね!」
「大丈夫」って答えるより、同意する方が安心できるだろう。
アルカも笑顔で頷いてくれた。
でも本当は大して心配してないんだ。
きっとサマラス先生とも、いつか仲良くなれると思うの。
アルカの代わりに私が皆と仲良くなってあげる。
アルカの苦手な事は、私が代わりにやってあげる。
私が皆と友達になれば、アルカの敵なんていなくなるもの。
そうよ!そうしましょう!
これを私の目標にしましょう!
世界中、あらゆる人達と友達になってみせるわ!
そうやって、この世界からアルカの敵を無くしてみせるわ!
ノアお姉ちゃんは冒険者として。
カノンお姉ちゃんは商人として。
セレネお姉ちゃんは聖女として。
皆、アルカの暮らしやすい世界を作ろうと頑張ってる。
私もそこに加わろう。
何時かじゃなくて、今すぐに。
友達になる事だけなら、いつでも始められる事だもの。
「サマラス先生の事は今後も様子見という事で。
ルイザさんと王子親子の件もですね。
引き続きルイザさんの様子を見て、必要なら引き込む方針も検討しましょう。
王子親子の方は、必要以上に関わらないよう注意して下さい」
「お友達としてなら良い?」
「可能ならば避けて欲しいところです」
「それは嫌よ、ノアお姉ちゃん」
「まさか!?アリア!?
その男の子の事!!」
「違うわ、アルカ。
好きになったりしないから、落ち着いて」
「私のアリアに手を出すなんて!!
やっぱり私が乗り込んでくるわ!」
「違うってば!
話聞いてよ!!」
「まあ、そうですね。
今更靡くはずもありませんよね。
良いですよ。アリアの好きにしてください」
「ノアちゃん!?」
「ありがとう!ノアお姉ちゃん!」
「ダメよ!私が認めないわ!」
「いい加減にして下さい、アルカ。
そんなにアリアの事が信じられないのですか?」
「そっそんなわけないじゃない!
けど!でも!だってぇ!」
「はいはい。それでは一度締めますよ。
子供達は部屋に戻って勉強を始めて下さい。
私達はルスケアの件をもう少しだけ話しておきましょう。
セレネを呼んできますから、アルカをお願いします」
「なら私が行くよ。
私は会議の役には立てそうに無いし、ルビィを代わりに見ている人が必要だろうしね」
「いえ、セフィさんは残っていて下さい。
代わりはレーネに頼んでおきます」
「別にいいけど。
何か聞きたい事でもあるの?」
「ええ。
ルスケアの件とは別にもう一つ話したい事があるのです。
その話でセフィさんの意見を聞きたいです」
「うん。わかった」
「はい」
もう一つの話って何かしら。
何やら秘密の気配がするわ!
さっき、アルカもカノンお姉ちゃんと内緒話してたし!
『はいはい。勉強行くわよ』
もしかして、ラピスは何か知ってるの?
『うん。けど今はまだアリアには関係無い事よ。
何れ教えてくれるから、安心しなさい』
そういうの余計に気になるよ!
良いじゃん!教えてよ!
「アリア、何グズグズしてるの?
寝る時間無くなっちゃうよ?」
何時までも席に座っていた私の手を引いて歩き出すルカ。
「無くなるの?遅くなるじゃなくて?」
「それはアリア次第」
私はルカの耳元に口を近づける。
「……早く終わればいっぱいキス出来るよ」
「……」
『不正はダメよ、アリア。
妹になに吹き込んでるのよ。
お姉ちゃんとして恥ずかしくないの?』
「だってぇ!
今日はアルカと寝るんだもん!」
「……朝まで勉強。決定」
「え!?なんで!?」
「アリア嘘つき」
「あ!いや!そんなつもりじゃなくて!
勿論ルカも一緒によ!
三人でよ!」
「リヴィは?」
「四人でよ!」
『グダグダね。
というか、今晩はアルカって一緒に寝れないんじゃない?
確か、セフィ達と飲み会するって話になってたみたいだけど』
「え!?なにそれ!?
騙された!?」
『いえ、多分会議がこんなに長引くと思わなかったんじゃない?
飲み会の後で、アリアの部屋に行くつもりだったんでしょうね。
どうせ、アリアも勉強で遅くまで起きているだろうし。
とはいえ、今日は流石にもう無理そうね』
「そんなぁ~~!!」
『単にルカの機嫌を損ねただけになったわね』
「ルカ~!」
「ダメ。決定」
「ル~カぁ~!
ごめんってばぁ~!」




