31-40.家族会議
今回はアリア視点のお話です。
晩御飯が終わると、また昨日と同じようなメンバーで集まった。
けど今日は、昨日より更に少し少ない。
グリア先生とレーネお姉ちゃんがいないのかな?
あと、ミユキお姉ちゃんもいないみたい。
それと、今日のラピスは昨日と違って同化モードだ。
私の中にいるから、その分人数も減っている。
レーネお姉ちゃんは既にカノンお姉ちゃんから話を聞いているのだろう。
今日は報告がメインだから、敢えて参加しなかったのかもしれない。
レーネお姉ちゃんのことだから、きっと遠慮したのだろう。
レーネお姉ちゃんはそういうとこがあるもの。
ミユキお姉ちゃんはどうしたんだろう。
もしかして、お仕事が忙しいのかな?
早く落ち着くと良いのだけど。
また色々教えて欲しい。
ミユキお姉ちゃんも教え方がとっても上手だ。
それに色んな事を知っていて、話がとっても面白いのだ。
「それじゃあ、先ずは私から報告させてもらうわね」
そう言って、カノンお姉ちゃんが話を切り出した。
カノンお姉ちゃんは、理事長先生との昼食会からの出来事を事細かく説明してくれた。
どうやら、私の行動は最初から全て把握してくれていたらしい。
お陰で私が一言も発する間も無く、参加者全員に状況が伝わった。
「そこまで話しちゃったんなら、ルイザちゃんも一度この家に連れてきたらどう?
アリアのフォローをしてくれるつもりみたいだし、もう少し情報を与えておいても良いんじゃないかしら」
ちゃん?
どういうことアルカ?
まさか、話に聞いただけで目を付けたの?
流石に、ルイザがアルカを気にしていた事までは言ってないわよ?
「いえ、もう少し慎重に進めましょう。
アルカが転移を使える事は、既にギルドには知られているのです。
今回バラしてしまったのは、念話くらいでは?」
「ええ。その筈よ。
もしかしたら、千里眼の類として認識されるかもだけど」
「その手の勘違いが生まれる分には構いません。
真実が隠しやすくなりますから」
「なんだか、私が化け物扱いされてしまいそうね」
「今更何を言ってるんです?
もうされているんです。
だから大国の第二王子が下手に出ているのでしょう。
カノンはその認識を利用したのです。
話をちゃんと聞いてなかったのですか?」
「そうだったの?」
そうだったの?
『何でアリアまで……』
『いや、だって、ほら。
もっと深い理由があるのかと思ってたから』
『単なる虚勢よ。
別に敵対する気は無いけれど、利用される気もないと示していただけよ』
『なんでもっと早く教えてくれなかったの?
私がカノンお姉ちゃんの態度に疑問を持っていたのは、知っていたでしょ?』
『ラピスも今のカノンの話を聞いて確信しただけだもの』
『なら偉そうに言えないじゃない!』
『それはそれ』
それ気に入ってるの?
「それで、カノン的にはどうなの?
今後、あの国とどう関わっていくつもり?
勿論、私の姿は好きに使って構わないけど、考えている事があれば先に教えておいて欲しいわ」
「基本的には不干渉よ。
ただ、アリア達の背後にはアルカがいると示しただけ。
それも、向こうが気付いてしまったからだしね。
向こうが何か勘違いして、私達を利用しようとしてきたとしても、先ず話し合いをするわ。
言ってもわからなければ距離を置きましょう。
アリア達には悪いけど、別の学園に移りましょう。
それが私達のスタンスの筈よ。
武力行使は最初から選択肢に加えるつもりは無いわ」
カノンお姉ちゃん、そう言う割には、テオ君父を挑発してなかった?
あれで怒って戦争になってたらどうするの?
『相手を見て判断したのでしょう。
簡単に挑発に乗るような相手なら、あんな対応はとらなかったでしょうね』
なるほど。
ある意味、テオ君父の事を信用したのか。
理性的な判断が出来る人だと。
まあ、確かに。へこたれているような様子は無かった。
「そう。
ノアちゃんはどう思う?」
「ルスケアの件が気になります。
仮に戦争にでも発展すれば、アルカの名前は必ず出ます。
ルスケアの信者達が、アルカの名を大義名分として掲げるか、国の上層部が、国を脅かす大悪人としてアルカの名を出すのか。
どちらが先にせよ、結果は同じです。
どれだけ私達が望まずとも、加担したと見なされるのは間違いありません。
どうにか制御する方法を考えるべきだと思います」
「いつの間にそんな大事になってたの?
私が最後に行った時は、精々領都程度だったわよ?
なんで領丸ごと、私の信者になってるの?」
「それはこちらのセリフです!
どの口で言ってるんですか!?
ニクスと一緒になって扇動したのを忘れたのですか!?」
「いやだから、その時点でも領都くらいしか……」
扇動?
『あれ?
アリア知らなかったの?
アルカが半神になる為に、ルスケア領の人達を利用したのよ?』
『え?
なにそれ聞いて……あれ?やっぱ聞いてたかも?
いや!やっぱ聞いてない!』
アルカが半神でニクスの使徒だって事は知ってるけど!
その話と一緒に教えられたのかもだけど!
「この件はセレネに相談しましょう。
専門家に任せるべきです」
「いっそアルカ教も纏めてくれないかしら。
ニクス教と何か関連付けて、二神教にしてしまいましょう」
「ダメよ、カノン。
セレネは絶対に嫌がるわ。
なんなら、ニクス教からも手を引きたいくらいなんだから」
「そうですね。
それに問題はそれだけではありません。
ニクス教の教会本部もあの国にあるのです。
二つの教会が手を組んだとなれば、より危険視され、敵対が加速することでしょう。
それでは本末転倒です」
「あれ?
そう言えば、セレネと私の関係性も知られてるのよね?
なら、どちらも私達の手の内だって思われてるの?」
「当然です。
だからこそ、向こうも余計に警戒しているのでしょう。
やろうと思えば、国の内側から切り崩す事すら出来てしまうのですから」
「いっそそうしたらどう?
力を集めて、戦争を抑止するの。
どうやっても敵わないなら、挑もうとは思わないんじゃない?」
「論外です。
誰がその力を管理するのです?
セレネは嫌がると自分でも言ったではないですか。
それにそんな力は、振るわず誇示するだけでも、武力行使である事に変わりはありません。
私達のスタンスと反するものです」
「私も反対よ、アルカ。
そもそもの考えが甘いと思うわ。
敵わないから挑まないなんて、都合良くはいかないのよ。
逆に自棄になって、形振り構わず攻撃してくる可能性だってあるわ」
「まあ、うん。ごめん。
ちょっと試しに言ってみただけなの」
アルカがノアお姉ちゃんとカノンお姉ちゃんにフルボッコにされて凹んでしまった。
後で慰めてあげよう。
『今擁護してあげたら良いじゃない』
『ラピスは何か案があるの?』
『ないわ。
そんなの自分で考えて』
無茶言わないで……。
「大分話が広がってきましたね。
そろそろ一旦整理しましょうか」
「そうね。
けどどの道、この話は長くなりそうだから仕切り直さない?
ルスケアの件はセレネも交えて、大人組でゆっくり話し合いましょう」
「そうですね。そうしましょう。
アリア達は勉強もしないといけませんから」
え~!
今日もやるの~!
『勉強ってそういうものでしょ。
訓練と同じよ』
『そういう正論聞きたくな~い!』




