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31-32.問いかけ

今回もアリア視点のお話です。





 私達はソファに移動し、テオ君親子と向かい合う。


 何故かテオ君父も同席するようだ。

流石に大事過ぎやしないかしら。

平民の小娘に関わっていられる程、暇じゃないだろうに。



「テオドロス殿下。

 先ずは昨日の件、お詫びさせて頂きたく」


「必要ない。

 僕の方こそ配慮が足りなかった。

 昨日はどうかしていたようだ。忘れてくれ」


 おや?

テオ君は私と直接話していても、まだ冷静なようだ。

もしかして、散々に揶揄われて耐性でもついた?



「感謝致します」


「……そのような話し方は止めてくれ。

 何故だか君にそんな態度を取られるとむず痒いのだ」


 今度は少し照れながらそんな事を言い出すテオ王子。

隣のお父さんはニヤニヤ顔を隠そうともせずに、そんな息子を眺めている。



「ありがとう、テオ君」


「!?」


 私の言葉に驚くテオ君。

言われた通りにしたのに。


 テオ君父は大爆笑だ。

腹を抱えて大人気なく笑い転げている。


 ルイザからは怒りに近い呆れのような感情が伝わる。

でも、だって、テオ君が……。

ごめんなさい……。



「何時まで笑っているのです父上!!!

 今は客人の前です!!」


 お父さんに八つ当たり気味に怒りをぶつけるテオ君。

照れ隠しも混ざっているのかしら。



『アリア、わざとやってるの?』


 なにがよ。



『いや、そんな事無いってわかってるのよ。

 アリアの思考は見ているんだし。

 何にせよ、突発的に口にするの止めてほしいんだけど。

 言葉にする前に一呼吸置いてくれない?

 これじゃあ止めようが無いわ』


 無茶言わないでよ……。

そんなのすぐに意識して出来るわけないじゃない。



『アリアって、あるじにそっくりよね』


 昨晩は褒めてたじゃん。

アルカ達にドヤ顔してたじゃん。



『それはそれ。これはこれ』


 よくわからないわ。



「いやあ、すまない。ふふ。

 アリア嬢は面白い娘だね。

 是非テオと仲良くしてやってくれ」


「宜しいのですか?

 既にお聞き及びかとは思いますが、私は平民です。

 本来であればこのような場にお呼び頂く事すら、」


「アリア嬢」


 テオ君父が私の言葉を遮った。



「アリア嬢が平民という話は私も聞き及んでいる。

 だがそれを信じる者はここにはいまい。

 いや、それどころか、アリア嬢を目の当たりにして信じられる者などおるまいよ。

 君は何者だ?

 どうか正直に話してくれたまえ。

 こちらとしても、君の事を何も知らないまま野放しにしておくわけにはいかないのだよ

 これは友人の父ではなく、この国の為政者としての問だ。

 どうか理解してくれたまえ」


 一転して真剣な雰囲気になったテオ君父から問いかけられた。

何かさっきまでとは話し方まで違う。


 緩急の差が激しすぎて、一瞬思考が止まる。



『アリア、落ち着いて。

 冷静によ』


 ラピスのお陰で、どうにか驚きを表情に出さずに済んだ。


 それにしてもこれはまずい。

どう答えるべきなのかしら。


 平民だと言い切る事は可能なはずだ。

この短時間で偽装工作の全てが見抜かれたとも思えない。


 本当の事を話せば理事長先生にも迷惑をかけるはずだ。

けれど、その理事長先生が私をここに送り込んだのだ。

全てわかっていたであろう立場で。


 どっちだ?


 私が黙秘を続けると踏んだから?

万全な証拠が揃っているから、問題無いと判断した?


 それとも私に全てを明かさせて、何かしたい事がある?

例えば、この親子を味方につけられると考えている?

何やら繋がりがあるのは間違いないだろうけど……。


 不味い。

そろそろ何か言わなければ!


 わざわざ為政者としてなんて念を押してるんだから、拒否権なんて無いんだ!



「殿下!」


「ルイザ嬢。今は私とアリア嬢が話をしているのだ」


 同じく衝撃を受けて固まっていたルイザが立ち直り、テオ君父に反論しようとするも失敗してしまう。

けれど、お陰で少し時間が稼げた。

ありがとう!ルイザ!


 私は一言ずつラピスと相談しながら、出来るだけ時間を稼ぐように言葉を紡ぐ。



「私は、間違いなく平民です。

 セオドロス殿下」


 先ずは真実を話す。

今の私は王家を出奔した身だ。

平民なのは間違いない。



「ならば生まれは?」


「……わかりません」


 これも真実だ。

少なくともこの国ではないけれど、お母さんがどこで私を産んだのかは、未だに誰も知らない事だもの。



「……母は、幼い頃に亡くなりました」


 少し悲しそうな雰囲気も出してみる。

もうすっかり吹っ切れてしまっているけれど。

ごめん、嘘。やっぱり思い出すのはダメかも。



「母上の出身は?」


 本気で落ち込み始めた所に、容赦なく質問を続けるテオ君父。

先程までの、女性に優しくの精神はどこにいったのかしら。

今は仕事モードなのかな。



「……パルマ王国です」


 これも真実だ。

この国とは大きく離れているから、国名を出しても気付かれる事は無いけれど、ギルド経由だとそうも言ってられない。

後で口止めをお願いできると良いのだけど。



「パルマ……聞かん名だ。

 この辺りの地名では無いな?」


「はい。遥か遠方の小国のようです」


「ルスケア領の出身と聞いていたが?」


「私と妹を保護してくれた今の母と縁がありましたので」


 少し苦しいかしら。


 アルカとルスケア領には縁がある。

これは真実だけど、違う意味に聞こえるように言ってみた。


 私達とアルカに縁が出来たから住み着いたという意味で受け取ってくれたかしら。



「今の母上の名は?」


 え?

それ聞くの?何のために?

一平民の名前を聞いてどうするつもりなの?


 私が一瞬返事に詰まった所に、テオ君父は全く予想していなかった言葉を続けた。



「君の母上は、アルカという名ではないかね?」

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