5-11.休息
「セレネ!しっかりして!セレネ!セレネ!」
私は突然崩れ落ちたセレネに駆け寄り抱き上げる。
「アルカ?」
良かった。意識はあるようだ。
「セレネ!大丈夫?どこも悪いところ無い!?」
「アルカぁ!」
セレネは私に抱きついて大声を上げて泣き出した。
「この子に一体何をしたの!!」
私は側で見ていた神官服の女性を睨んで怒鳴りつける。
「試練の内容については存じません。
ですが、命の危険があるようなものではありません」
「そういう問題じゃないでしょ!
セレネに一体何をしたのよ!
あんたがわからないなら神とやらを出しなさいよ!」
「神はこの場には現れません。
この世界に対して出来ることは限られているのです」
「それが!・・・」
「アルカ。大丈夫だ。セレネが落ち着くまでそうしていてやれ」
「クレア!あなたは大丈夫なの!?」
「ああ。問題ない。
けど、神とやらは随分悪辣だな」
クレアは少しふらつきながらも、
崩れ落ちる事はなく、なんとか自分の足で立っていた。
クレアですらこんな状態になるなんて、
神とやらはセレネに一体何をしたのよ!
「お二人共。お疲れ様でした。
無事試練は終了致しました」
そう女性が宣言すると、
セレネとクレアの体を光が包み込む。
「凄い・・・今までと全然違います」
ノアちゃんは二人を見て驚いている。
なんにせよ、力は貰ったようだ。
もうこんな所にはいたくない。
私はすぐに転移門を開いて全員を自宅に移動する。
女性はそれを見ても何も言うことはなかった。
結局セレネは疲れて眠ってしまうまで泣き続けていた。
私はセレネを布団に寝かせて隣に座って手を握る。
セレネが目覚めた時に一人にしたくない。
セレネはそのまま朝まで眠り続けた。
私はその間一度も側を離れなかった。
ノアちゃんも一緒にいてくれたが、
夜も遅くなったので、セレネの隣で眠ってもらった。
ノアちゃんは素直に聞いてくれた。
セレネのもう片方の手を握りしめて横になる。
私は眠る気にはならず、朝までセレネの手を握り続けた。
「アルカ?」
「おはよう。セレネ」
「朝なの?」
「ええそうよ。もう大丈夫?」
「・・・うん。だいじょうぶ」
「本当に?無理はしなくていいからね?」
「アルカずっと側にいてくれたの?」
「セレネを一人にしたくなかったから」
「ありがとう。アルカだいすき」
「私もよ。セレネ。
ノアちゃんも夜遅くまで心配してくれてたわ。
今も隣で寝ているでしょう?」
「本当だ!いつも私達より早く起きるのにね。
ノアもずっと側にいてくれたんだ。
ノアもだいすき!」
「私もです」
「ノア起きてたの!?」
「二人の話し声で目が覚めました。
でもまだ眠いです」
「そうね。ノアちゃんも遅くまで起きていたものね」
「そういうアルカこそ一睡もしていないのでしょう?」
「じゃあ、このまま三人でもう一度寝よう?
もう待って無くても大丈夫。二人のお陰で元気出た」
「そうね。そうしましょうか
じゃあ、二人共少し詰めてくれる?」
「ここで寝るんですか?狭いですよ?」
「まあ良いじゃない。ぎゅうぎゅう詰めで寝ましょう?」
「仕方がないですね」
ノアちゃんから端に詰めていき、
セレネを挟んで私も横になる。
そうして、セレネは少しずつ語りだした。
あの神殿で何があったのか。
試練とは何だったのか。
初代聖女と勇者と魔王の関係は。
そうして三人で眠りについた。
やっぱりこの世界の神なんて嫌いだ。