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31-12.なんか違う

 私は改めてツクヨミと向かい合う。


 力の制御に関しては、一旦普段の私が使っている程度に抑えてもらう事にした。


 体を動かしながら、少しずつギアを上げていくつもりだ。



「それじゃあ行くわよ!」


「どうぞ、アルカ様!」


 私は地を蹴り、ツクヨミに急接近する。


 先ずは接近戦だ。

ツクヨミの力を見せてもらうとしよう。


 私は突撃しながら、闇の槍を産み出してツクヨミに向かって突き出した。


 ツクヨミは槍を掴んで引っ張りながら、もう一方の手で私の顎を狙うように掌打を突き出した。


 私は槍を手放して頭を逸らし、少し崩れかけた体勢のまま前方に向かって半身を倒してつま先に力を込める。

そのまま、ツクヨミの横を通り過ぎるようと加速する。


 それを読んでいたツクヨミは、前に出した片足に力を込めて地を蹴り、私の胸元に向かって膝を突き出してきた。


 私はもろに膝蹴りをくらい吹き飛ぶも、私の吹き飛んだ方向に先回りしたツクヨミに、更に地面に向かって叩き落された。


 今のなによ……

ド◯ゴン◯ールみたいな動きしてたわよ……

これがヤ◯チャの気分……


 あれは違うか。

私は別に自爆に巻き込まれたわけじゃないし。


 立ち上がると、足元にクレーターが出来上がっていた。

一体どんな勢いで叩きつけられたのかしら……


 ツクヨミは随分と本気みたいね。



「やるわね。

 全然反応出来なかったわ」


「お褒め頂き光栄です。

 アルカ様も流石でございます。

 本気で打ち込みましたのに、まるで手応えを感じません。

 このまま続けても、その障壁を破る事は難しいでしょう」


 たしかに。

防御する間も無く叩きつけられたのに、まったくダメージが無い。


 どうやら、これもチグサのお陰のようだ。



『マシマシや~!』


『ありがとう。助かったわ。

 けれど次はどうしましょうか。

 素直に突っ込んでも勝負にならなそうよ』


 多分、単純にギアを上げても難しいんじゃなかろうか。

別に身体スペックが上がっても私の処理速度まで上がるわけじゃないみたいだし。


 対して、ツクヨミは随分と余裕がありそうだ。

多少私の速度が上がっても、簡単に対応してきそう。


 私は詳しいんだ。

ルネルという遥かな高みに投げられ続けてきた私は、格上の動きは見ただけで察せられるようになった。

まあ、だからといって反応できるわけでも真似が出来るわけでもないのだけど。

なんとなく、これは勝てないなってわかるだけだ。

ノアちゃんならとっくに身につけている技術だろう。



『任せといてぇなぁ!』


『何するの?』


『ハードとソフトどっちがええ?』


 それは激しさの話し?



『肉体と頭脳の話やわぁ~!』


 ウェアの方でしたか。



『じゃあ、取り敢えずハードの方で』


 頭脳は何か響きが怖いし。

いやまあ、もう何度もやった事がある思考補助の事なんだろうけど。

どちらも、何かしらバージョンアップはしているのだろう。



『がってんや!』


 チグサが元気良く返事をした直後、私の体に目に見えて変化が生じる。


 手足が黒い鱗に覆われて、背中とお尻の辺りに、今まで感じたことのない感覚が繋がった。


 翼?尻尾?

!?

まさかこれって!



「アルカ様が化妖に変じてしまわれました……」


 ツクヨミから驚きの声が聞こえてきた。

一体どんな姿をしているのだろう。

顔や胴はあまり変えないで欲しい。



『心配しいひんでも、可愛う仕上がってん!』


 そうなの?

まあ、リヴィも可愛いし良いのかな?

でも、なんか真っ黒だよ?禍々しくない?


 ってそんな事より!

竜◯人は尻尾生えてないわよ!

ってこれでもなくて!


 何で私が竜◯人になってるのよ!


 竜◯人化計画ってハルちゃん用の案じゃなかったの!?

なんで私なのよ!



『ハルママの強い後押しがあってん』


 これはチグサのせいではないと?

ノリノリで開発を進めたわけではないと?



『そらそれやん』


 あっさり開き直るチグサちゃん。

後でハルちゃん諸共お仕置きしてあげよう。



『えへへ~』


 可愛い。


 というか、これで本当にツクヨミと戦えるのだろうか。


 元々肉体面は十分な頑強さを持っている。

足りないのは反応速度とかだ。


 まあ、ハードとソフトどっちかと聞かれてハードと答えてしまった私が悪いんだけど。



『早合点せんと。

 ちゃんと戦えんで!

 ええからやってみ~!』


 そうよね。

チグサがそんな初歩的な見落としするわけないわよね。

私じゃあるまいし。



「仕切り直しよ!ツクヨミ!」


「ならば、今度はこちらから参ります!」


 言うなり瞬間移動して私の後頭部に蹴りを放つツクヨミ。

しかし、今度は逆にツクヨミが吹き飛んだ。


 何今の……



『名付けてオートガードや!』


 そのまんまね。

どうやら、私に生えた尻尾が勝手にツクヨミを薙ぎ払ったようだ。

これ、ガードじゃなくてカウンターじゃない?


 ぶっちゃけ、自分でも知覚できない速度だった。

尻尾から伝わる感触で、後からそう認識しただけだ。


 今度は正面から、まるで仮◯ラ◯ダーのような飛び蹴りで突っ込んできたツクヨミが、勝手に動いた私の腕に弾き飛ばされた。


 それから暫く、ツクヨミは諦めずに何度も向かってきた。


 その間私は、何もせずに突っ立っていただけだ。

勝手に動く手足や翼、そして尾が、あらゆる角度から攻めてくるツクヨミを迎撃し続けた。


 もしかして、ツクヨミって足技好きなのかしら。

結構頻度が高いのよね。


 いや、そうじゃなくて。


 あかん。これは何か違う。

確かに強いけど、お師匠様が絶対に許してくれないやつだ。

というか、私も楽しくない。



『チグサこれは、』


 私が言いかけたところで、ツクヨミの動きに変化が生じた。


 ツクヨミは一度距離をとって次々に魔術を発動していく。

何やら、腕や足、それぞれ異なる術式を込めているようだ。


 これがツクヨミ流のバフかしら。

なんだか面白い使い方をしている。


 というか、今までツクヨミは素の状態で戦ってたのよね。

いよいよ本気になったという事かしら。


 ならもう少し様子を見るとするか。

折角の特等席だし。



『アルカはん!』


 焦ったチグサの声が聞こえた時には、またも私の体は吹き飛ばされていた。

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