31-7.初めてのお友達
今回はアリア視点のお話です。
「あ!目が覚めたのね!」
「?」
「おはよう、ルイザ!
調子はどう?
胸が苦しかったりはしない?」
「!?」
目覚めたルイザは少しボーっとしていたものの、ちゃんと私の声を認識したようだ。
目を見開いて驚いた後、寝かされていたベットの掛け布団を引き上げて、顔を覆い隠してしまった。
寝ている所を見られたのが恥ずかしかったのかしら。
少し無遠慮に近づき過ぎたかもしれない。
これではルイザが落ち着いて休めないわね。
私はルイザの寝ているベット脇の椅子から立ち上がって、ルイザに声をかける。
「それじゃあ行くわね、ルイザ。
お昼休みは終わっちゃったけれど、先生には伝えてあるから安心して休んでいてね」
私はそのまま扉に向かって歩き出す。
もう五限目の授業も始まってしまったけれど、今からでも戻っておくとしよう。
その方が補習の時間も短くなるだろうし。
「お待ち下さいませ!」
扉に手をかけた所で、ルイザから呼び止められた。
「うん?どうしたの?
どこか辛い?先生呼ぶ?」
「いえ、あの……」
私は再びルイザの側に近寄る。
念の為再び熱を測ろうと、ルイザの額に手を伸ばす。
一瞬ビクッと肩を震わせたルイザだったが、目を閉じて待ち構えているような姿勢になった。
私は自分の前髪もかき上げて、ルイザの額に自分の額を押し付けた。
「!?!?!?!」
「じっとして、ルイザ。
う~ん?やっぱり熱は無いみたいよ。
きっと気疲れってやつね!
アルカが言ってたわ!
私達みたいな子供は、すぐに体調を崩してしまうものなんだって。
きっと、昨晩は新学期が楽しみで眠れなかったのでしょう?」
「そんなんじゃありませんわ!
幼子みたいに言わないでくださいまし!」
「ふふ。ルイザって面白いわね。
私達はまだ子供じゃない」
「そんな事より!
いい加減離れて下さいませ!
もう熱が無いのはわかったはずですわ!」
「あ!ごめん!つい。
ルイザがあんまりにも可愛い事を言うもんだから」
「かわ!?」
「こうしてみると顔もとっても可愛いわね。
なんでそんな変な髪型してるの?」
「へん!?」
「そんな派手な髪型をしていては、折角の可愛いお顔が引き立たないわ。
ルイザならポニーテールとかが似合うんじゃないかしら?
少し弄ってみてもいい?」
「止めて下さいませ!
離れて下さいませ!」
真っ赤な顔で腕をブンブンするルイザ。
私は距離を取って、再び椅子に腰掛ける。
病み上がりでそんなに暴れて大丈夫かしら。
また倒れてしまわないといいのだけど。
「落ち着いて、ルイザ。
それでどうしたの?
一人になるのは寂しい?
話し相手にくらいなら、いくらでもなるけど」
「そんなんじゃありませんわ!
感謝を述べたかっただけですわ!
礼を言いますわ!アリア様!
どうやら看病して下さっていたようですわね!」
「様?
アリアでいいわ!」
「うるさいですわ!
あなたの甘言にはもう乗せられませんことよ!」
「どういうこと?」
「何でもありません!
それより、アリア様。
これで私の用事は済みました。
どうぞ授業にお戻りになって下さいまし」
「う~ん。
体調が問題ないなら、少し話をしてみない?
ルイザはこの学園で初めて出来たお友達だもの。
折角だから、少しでも仲良くなれると嬉しいわ!」
「おとも、だち……ですって?」
「え?ダメだった?」
「いっいえ!その様なことは!
おともだち……私初めてですわ……」
「そうなの?
教室に仲良さそうな娘がいたじゃない。
ルイザの名前を呼んでた、あのテレサって娘。
あの娘は友達じゃないの?」
「あの娘は我がストラトス家と近付きたいだけでございますわ」
「う~ん?そんな風には見えなかったけどなぁ?
ならエヴァは?
テレサもだけど、あの娘もルイザの事気にしていたみたいよ?」
「あの娘も同じですわ」
多分そんな事無いと思うよ?
ルイザが寝ている間にわざわざお見舞いにも来ていたし。
しかも、ルイザが目覚めていないと知ると、何故か自分達が来たことは言わないでくれと頼んできた。
今思うと、あれもルイザを気遣っての事だったのかもしれない。
私が視た限り、あの娘達の視線はルイザを心配しているものだった。
決して、利用している相手に向けるものなんかじゃない。
もしかしたら、なにかすれ違いでもあるのかもしれない。
私になにか出来ないかしら。
まあ、何にせよ先ずは話を聞いてみよう。
勝手に判断して押し付けるわけにはいかない。
「ところで、アリア様はもうあの娘達の名前まで覚えておいでなのですね」
今度はルイザの方から話題を振ってくれた。
これは、話しを続けて良いという意思表示よね。
「うん勿論!
クラスの子達は全員覚えたわ!」
「え?全員?」
「なんたって私の目標は学園の全員とお友達になる事だからね!」
「は?」
「私、お友達作るのって初めてなの!
家族はいっぱいいるんだけどね!」
「そうですか……」
何故かルイザの元気が無くなってしまった。
なにか間違えたのだろうか。
「アリア様は、」
ルイザが何かを言いかけた所で、私のお腹から「ぐぅ~~」と気の抜けた音が響いた。
「あはは~。ごめんね~。
そう言えばお昼食べてないんだった~」
流石にちょっと恥ずかしい。
こんな事ならラピスに何か出してもらっておけばよかった。
私はまだ収納魔法が使えない。
ラピスの収納空間なら、何かお菓子とか入ってただろうに。
「ごめんなさい!私のせいでアリア様にまで!」
「ううん!違うわ!
私がうっかりしてただけよ!」
「ですが!」
「今からでも食堂行ったら食べ物出してもらえるかしら。
ルイザもお腹空いているでしょう?
試しに行ってみない?」
「え?いえ、今は授業中ですし、その様なはしたない真似は……」
「なら私が一人で行ってみるね!
何かパンでも残ってれば貰ってくるから、戻ってきたら一緒に食べましょう!」
「え?え?
いや、え!?
お待ち下さいませ!アリア様!」
結局ルイザもついてきた。
パンだけでなく、スープも欲しかったのかな?
ふふ。やっぱりルイザもお腹を空かせていたのね。
なんたって、私達は育ち盛りだものね!




