31-1.新生活
「よし!完璧ね!
みんな、とっても可愛いわ!」
朝早く、学園に行く準備を終えたアリア、ルカ、リヴィ、ラピスが学園の制服姿で並んでいた。
既に全員、首輪と指輪も魔法で隠している。
いつもと異なる姿に思わず燥ぎだしたくなる。
とはいえ、ここで思いっきり抱きしめては、服にシワが付いてしまうだろう。
ガマンだガマン。
どうせならみんなを最高に可愛い状態で送り出したい。
まあ、この娘達ならどんな格好でも可愛いけれど。
それから私は、アリア、ルカ(inクルル)、リヴィ、ラピスを連れて学園に向かった。
とはいえ、私達の場合は正面から入っていくわけではない。
グリアのお母様でもある、学園の理事長先生の下に子供達を連れて行くだけだ。
予め私の事情は遠回しに話してあるため、新学期初日の忙しい中、わざわざ時間を取って自ら応対してくれたのだ。
私以外の誰かに送ってもらう手もあったのだけど、折角のご好意だったので甘えさせてもらう事にした。
私としても、改めてご挨拶させてもらいたかったので、渡りに船だったのもある。
一通りの挨拶と感謝を伝えた後、アリア達を託して私は引き上げる事にした。
あまり余計な時間を取らせるわけにもいかない。
「お母様、いえ、理事長先生、改めてどうか娘達を宜しくお願い致します」
「ええ。お預かりするわ。
ふふ。始めての事で不安もいっぱいあるでしょうけれど、どうか安心してね」
どうやら見抜かれているようだ。
正直、このまま娘達について行きたい。
姿を隠して覗いていきたいと何度も考えた程だ。
けれど、どうにか堪えて自宅に戻る事にする。
ここで余計な事をすれば、お母様の迷惑になってしまう。
散々お世話になっておいて、邪魔をするわけにはいかない。
「じゃあ皆、私は帰るから。
リヴィ、ラピス、二人をよろしくね。
アリア、何かあったらラピスかルカに言うのよ。
絶対に自分の判断で動いてはダメだからね」
「もう!わかってるってば!」
流石にしつこ過ぎたかしら。
ごめんね、アリア。
「そうね。アリアなら大丈夫よね。
アリアも、みんなの事をよろしくね」
「うん!任せて!アルカ!」
理事長室から退室して自宅に転移しながら、ルカの中に居るクルルにも念話を飛ばす。
『クルルもルカの事お願いね』
『うん。任せて主』
クルルはまだあまり元気が無い。
昨晩、私がクルルをド忘れしたのを未だに引きずっている。
本当にごめんね、クルル。
帰ってきたら、一緒に遊ぼうね。
クルルの為だけに時間作るから。
『我と主、二人きり?』
『うん。ご希望ならイロハも同伴させるわ』
『勝手に決めないでよ』
『イロハ様も?
三人で遊園地?』
『勿論良いわよ。
三人で行きましょう』
『わ~い!!』
『まったく……』
よろしくね、イロハパパ。
『誰がパパよ!
そこはせめてママにしなさい!』
『イロハ様ママ?』
『そうよ。
クルルを産み出したのはイロハだもの。
様なんて呼ばないで、気軽にママって呼んであげてね。
そうした方がきっとイロハも喜ぶから』
『何を勝手な!』
『ママ?』
『うぐっ……』
『ママ、ダメ?』
『……仕方ないわね』
『ママ!』
『私の娘を名乗るなら、精々しっかりやりなさい』
『うん!』
今後はこの二人の仲も応援してみよう。
ノアちゃんとリヴィやセフィ姉とレヴィ、それにセレネとルビィやハルちゃんとチーちゃんみたいな仲良し母娘になれると良いのだけど。
『余計な事しないでよ』
それは、イロハ次第ね。
『別に無碍にはしないわよ』
そんな心配はしてないけどさ。
イロハは素直じゃないから。
『そんな事よりさっさと始めるわよ。
アルカが予定詰め込みすぎたせいで、今日だって忙しいんだから』
あれ?いつの間に?
『先ずはエリス達のところよ』
やっぱ訓練も出なきゃダメよね。
今日から新体制だし。
セフィ姉とエリスも上手くやれるかしら。
まあ、セフィ姉なら心配ないか。
そういえば、レヴィの相方問題も放置してたわ。
そろそろもう一度聞いておかなきゃ。
私世界で試合をするのはその後かしら。
確かに忙しい。
訓練、試合、遊園地だけでも一日で足りなそう。
それに加えて、ヤチヨ、セシル、コマリの初出勤組からも、初日の感想を聞いておきたいし。
場合によっては、また会議も必要だろう。
そして勿論、アリア達からも学園の感想が聞きたい。
アリア達だって、沢山話したいと思うだろうし。
確かに予定が盛り沢山だ。
これはまずいかもしれない。
『呑気に考えてないで、さっさと動きなさい』
は~い。イロハママ。




