30-59.久しぶり?
「なんじゃもう来たんか。
まだ指輪は出来とらんぞ」
あれ?もう?
指輪?誰のだっけ?
ああ、ノルン、イロハ、クルル、アリスのか。
えっと、エリス達に出会う直前だから?
ひのふのみの……あれ?まだ半月も経ってないの?
あかん、体感時間だと数ヶ月前だから記憶が曖昧だ。
私もお姉ちゃんみたいに、魔術による記憶の整理を習慣付けた方が良いかもしれない。
『やってあげましょうか?』
『……まだいいや』
イロハに任せるの何か怖いし。
イロハはヤンデレ気質もありそうだから……
『私の事しか考えられなくしてあげるわ』
やめて下さい。
『冗談よ。バカな事考えてないで返事くらいしなさい』
そうだった。爺さんに問われたまま放置してた。
「おはよう、へパス爺さん。
今日は新しい家族を見せびらかしに来たの」
「お主は何時までたっても幼子のようじゃのう」
新しい玩具自慢するのと同列に思われてる?
言い返す時間も勿体ないので、爺さんの言葉をスルーしてセフィお姉ちゃん、レヴィ、ルビィ、コマリ、ツクヨミ、セシル、ヤチヨを順に紹介していく。
他にもまだ紹介していない娘がいる気もするけど、取り敢えず今日の所はこれで終わりだ。
あんまり詰め込みすぎても、爺さんだって覚えきれまい。
いやまあ、もう諦めてそうだけど。
「それで?また指輪の作成依頼か?」
「お母さん?」
少し甘えた声を出しながら見上げてくるレヴィ。
「おかーさん」
レヴィと並んで見上げてくるルビィ。
ルビィ!あなたいつの間に喋れるようになったの!
というかなんでこのタイミングで披露したの?
「アルカ様」
ツクヨミ、あなたよくこの流れに乗ろうと思ったわね。
自分の年齢考えなさいよ。
「老師……」
コマリは苦笑いでツクヨミの醜態から目を逸らした。
セシルとヤチヨは特段興味も無いようだ。
まだまだ好感度が足りていない。
というか、布教?教育?が足りていない?
多分、指輪とか以前に恋愛自体に関心がない。
私への好意はあるし、求めれば応えてくれるだろうけど、自分から積極的に盛り上がる程でも無いのだろう。
サナ達もそれなりの期間を私の中で過ごした事で、初めて指輪を望んだのだ。
ツクヨミ以外の三人はまだこれからなのだろう。
ふっふっふ!何時までそんな態度が続くかな!
「小春先輩」
「なに、ヤチヨ?」
「全部聞こえてますよ」
ヤチヨちゃんは常に私の心覗いてる勢なの?
「偶々です」
「可愛い」
「そんな事より、お爺さんの問いかけはいいんですか?」
「あ……ごっほん。
失礼。
えっと今日は指輪は止めておくわ」
「「「「え~!」」」」
何でセフィお姉ちゃんまで混ざってるの?
本気で欲しいならお願いするけど。
ツクヨミは「え~」とか言うキャラじゃないでしょ?
「『空気を読む』というやつでございます」
さいでっか。
「レヴィとルビィはもう少し大きくなったらね。
セフィお姉ちゃんとツクヨミは家族に許可を貰ったらね」
コマリ、セシル、ヤチヨはもう少し関係が進んでから考えましょう。
「「「「は~い」」」」
良いお返事。
「なんじゃ、本当に自慢しに来ただけなんか?」
「ううん。
セフィお姉ちゃん、後はコマリも?
二人は何か欲しい装備ある?
爺さんの作る装備は最高よ。
店に無くても、何でも依頼してくれて構わないから」
「何故お前さんがそこまで決めとるんじゃ。
仕事を受けるか決めるのは儂じゃぞ」
「え?爺さんが断る事あるの?」
私のせいで半ば指輪職人と化してるのに?
「アルカ、調子に乗りすぎよ。
お爺さん、ごめんなさい。
後でよく言っておくわ」
セレネに窘められてしまった。
「まあ、よい。
それで、セフィじゃったか?
お前さんは何を使うんじゃ?」
「杖と短剣かな。
お気に入りのは壊れちゃったし、折角だからお願いしようかな」
「ならそっちじゃ。
先ずはそこから選ぶのじゃ」
爺さんが店舗内の短剣コーナーを指し示す。
セフィお姉ちゃんはどんな戦い方をするのだろう。
結構気になる。
「コマリは?」
「忘れたの?アルカ様。
私は老師の弟子だよ。
私も"すてごろ"の使い手だよ!」
ステゴロってそういう意味じゃないよ?
なんか流派みたいに言ってるけど。
「銃は無いのですね」
やちよんはブレないなぁ~。
「ごめんね。そもそもこの世界には大した物が無いの。
爺さんに頼めば作ってくれるとは思うけど……」
ニクスが嫌がるだろうなぁ……。
そもそも、爺さんも良い顔はしなさそう。
「お気になさらず。
自分でも作れますから」
そういえばそうだったわね。
ヤチヨって器用なのね。
「シイナの用意した設備が優秀なだけです」
そっちも気になる。
今度見せてもらおう。
「何時でもどうぞ」
やちよんってば!何だかんだ私に優しいんだから!
ヤチヨは何も言わずにジト目を向けてきた。
可愛い。




