30-58.バタバタ
「お待たせみんな~!
準備は出来てる?」
「「うん!」」
レヴィ&ルビィが元気良く返事をしてくれた。
リヴィは学園組だから、午後からだ。
午前中の子ども枠はこの二人だけだ。
「遅いわよ。
待ちくたびれてしまったじゃない」
「やっぱりセレネも行くんだ」
「ええ、もちろん。
ルビィが行くんだもの。当然じゃない」
「ならいっそ、先にツクヨミと契約してもらえばよかったわね」
「別に何時でも良いでしょ。
私の方は急ぎじゃないんだから」
「まあそれもそうね」
とはいえ、今晩ハルちゃんに頼むの忘れないようにしなきゃ。
セレネはともかく、レーネ、カノン、ノアちゃんの方には明日から同行してもらうつもりだし。
ついでだし、午後の学園組のデートにはレーネにも参加してもらいましょう。
レーネとセシルにも仲良くなってもらいたいし。
また急にって怒られるかしら。
まあ、既にルネルもなんとなく察してそうだけど。
そもそも、アリアもルカもリヴィも出かけるのに、レーネだけ残していくのも可愛そうだもの。
単に誰も言及してなかっただけで、最初からそのつもりだったという事で。
当然エリスも一緒ね。
「それで、結局何処に行くの?」
準備万端のセフィお姉ちゃんが楽しそうに聞いてきた。
「取り敢えずドワーフのへパス爺さんの店に行きましょう。
折角なら新しい家族達を紹介しておきたいし」
これ以上紹介されても困るだろうけど。
ところで、セフィお姉ちゃんはその格好で良いの?
なんか普通の服装ね。
ルネルみたいなエルフっぽいラフな服装とか、アニメみたいなペラペラなやつとか着てみない?
どっちも似合うと思うんだけど。
セフィお姉ちゃんってスレンダーな美人さんだし。
「何、セフィの事邪な目で見てんのよ」
さすセレ。目ざとい。
「いや、そこまでじゃないよ。
ただ、あのフィギュアの服装を思い出してただけで」
「あれが良いの?
一応、同じの貰ったけど着ようか?
流石に目立つと思うんだけど」
何でノリノリなの?露出狂なの?
「いえ、今日は止めておきましょう。
セフィお姉ちゃんは唯でさえ美人さんなんだもの。
あまり人目につくべきじゃないわ」
「というか、アルカもさっさと変装しなさいよ。
まだそのまんまじゃない」
「そうだったわね。
危ない危ない」
私は子どもVerに変身してフードを目深に被る。
流石にちょっと暑いかしら。
いつの間にやら、もう春だものね。
最近引きこもり気味だったから、少し忘れてたわ。
そう思い直してフードを取り、代わりに収納空間からノアちゃんを模した猫耳カチューシャを取り出して装着する。
セフィお姉ちゃんが興味深そうに私の周囲を回って観察を始めた。
変身魔法って見せたこと無かったっけ?
「というか、そう言うセレネは?」
「アウラ」
『は~い』
セレネは以前に見せてくれた、ふかふか大人モードに変身した。
今回は落ち着いた薄めの金髪Verの特別仕様だ。
うむ。こっちも悪くない。
「惚れ直した?」
「もちろん」
「私も何かした方が良いのかな」
「そう言えば、元々はSランク冒険者だったんだっけ?」
「うん。とはいえ、もう十五年以上も前の話だけどね」
「なら大丈夫でしょ。
ところで、流石のエルフでも十五年はもうなの?」
セレネ、家族相手でもそれは失礼よ。止めなさい。
「なんてたって、まだピチピチの二百歳だもの」
大分サバ読んだ?
確かに三百歳はいってないけど、数十年単位でサバ読むのは流石エルフとでも言うべきなのかしら。
単に大雑把なだけか。
「ところで、セフィお姉ちゃん」
「どうしたの、アルカちゃん?」
ちゃん?
「何で私の事抱きしめてるの?」
ついさっきまで私の顔を覗き込んでいたセフィお姉ちゃんだったが、なにやら我慢できなくなったらしく、私を抱きしめ始めた。
「可愛くてつい。
セレネ、アルカちゃん頂戴」
「ダメに決まってるでしょ。
少し落ち着きなさい。
レヴィが見たことない表情してるわよ」
「「あ!」」
衝撃と嫉妬と混乱が混じり合った不思議な表情のレヴィが、私とセフィお姉ちゃんを見つめていた。
ルビィは不安そうな表情で、レヴィの手を握っている。
「ごめんなさい」
何故か速攻で謝るセフィお姉ちゃん。
これも年の功だろうか。
というかこれ、私も続くべきかしら。
いや、それよりセフィお姉ちゃん。
謝る前に取り敢えず離れるべきだと思うの。
「ママ!!何時まで抱きついてるの!?」
ほらぁ……。




