20-55.相関関係
「セシルも長生きな方なのよね。
どれくらい強いの?」
「ふひ?
うっん、ん。
私は戦闘になんか興味ないわ。
ツクヨミお婆ちゃんと一緒にしないでほしいものね」
何故か唐突に性格を切り替えるセシル。
私の好みに合わせてくれたのかしら。何で今更?
というか、ツクヨミに馴れ馴れしいわね。
もしかして知り合いなのかしら。
「セシルには何度も逃げられておりました」
「セシルにも挑んでたの?」
「力を持つ者には一通り」
ストリートファイターかなんかなの?
というか、やっぱりセシルって強いのね。
ツクヨミから逃げられるだけでも十分じゃない?
「私まで挑まれたよ……」
え?
コマリって強いの?
「中々見所のある若者です」
「付き纏われたの……」
嫌われてない?
でも苦笑い気味だから、そうでもないのかな。
なんとなく、「まったく、仕方ないな~」的なニュアンスに聞こえる。
「少しだけ一緒に旅してた事があったんだ。
その間、老師に戦う術を教えてもらったの」
なるほど。師弟関係なのか。
私とルネルの関係にそっくりね。経緯まで同じだわ。
その割には、特段仲が良いようにも見えないけど。
「けれど、ある朝突然いなくなっちゃった。
私に何も言わずに。
今思うと、イロハ様に会いに行ってたんだね。
数日前にそろそろ約束の時期なんて呟いてたから」
もしかして、戸惑ってた?実はギスギスしてた?
何を話したらいいかわからなくて、困ってる?
そんな呟きまで覚えてるなんて、それなりに好意は持っていたんじゃない?
「ツクヨミ、申し開きは?」
「いくつになっても童心というものは無くならぬものですね」
それは言い訳のつもり?
「ちゃんと謝って仲直りしなさい」
「申し訳ございません、コマリ」
「別に恨んだりしてないよ。
だから、気にしないで。
それにこちらこそ、ご挨拶が遅れてすみません、老師」
その呼び方違和感しか無いんだけど。
二人とも少女にしか見えないのよ。
まあそんな事はともかく、これで仲直り出来たのかしら。
コマリなら別に心配は要らなそうでもあるけど。
「今更だけど、ツクヨミやコマリは私が名付ける前から名前があったりするの?」
「私はございません。
ですが、コマリには」
「老師、やめて。
アルカ様、今の私はコマリだよ。
アルカ様が名付けてくれた大切な名前だよ」
何でそんな反応?
私に気を遣ってるの?
別にそんな必要は無いんだけど。
後関係ないけど、コマリの口調が安定しないわね。
折角敬語が抜けたのに、また様呼びに戻ってしまった。
まあ、好きにさせておくとしよう。
コマリにだけ無理強いさせるのもあれだし。
ヤチヨ?ヤチヨは変えちゃダメよ。強制よ。
「どうしたの?
私に気を遣っているなら必要ないわよ?」
「いや、あの……
あんまり可愛くないから」
「でもご両親に付けてもらった大切な名前じゃないの?」
「ううん、そういうんじゃないの」
会ったこと無いと言っていたし、そんなものなのかしら。
なら誰が付けたんだろう。
まさか、ツクヨミ?
「ならまあ、無理にとは言わないけど」
気になるけど。
「ちなみにセシルは知ってる?」
「知らないわ。
そもそも、コマリには会ったことも無かったし」
「セシルは普段何をしていたの?」
「何って言われても難しいけど、強いて言うなら研究?」
セシルってもしかして引きこもりさん?
久々のお仲間かしら。
というか、「コマリには」じゃなくて、誰とも会わなかっただけじゃないよね?
「どんな研究?」
「色々ね。
気なったものは何でも調べていたわ。
別に私みたいなのは珍しくないわよ。
なにか一つ極める娘より、興味の赴くまま好き勝手していた娘ばかりじゃないかしら」
なるほど。多趣味が基本なのね。
まあ、そうは言っても、一つ一つに私達とは比べ物にならない時間と根気をかけていたんだろうけど。
元の基準が違いすぎるだろうし。
「そうですね。
セシルさんの言う通りです。
私が出会った方々は大体そんな感じでした。
老師のようなタイプは珍しいですね」
『そう産み出されたからよ。
ただ私を排除する、というか強くなる事を目的とされていたからでしょうね』
なるへそ。
「ならヤチヨは?」
『さあ?覚えてないわ』
「酷いお母様ですね。
まあ、私もイロハには殆ど会ったこと無かったですけど」
こっちもギスギス?
『ヤチヨは産み出した直後に取り上げられたもの』
「そこは覚えてるんだ。
やっぱり全部覚えてるんじゃないの?」
『偶々よ。
顔を見てたら思い出しただけ』
イロハは素直じゃないからなぁ~
『うるさいわね』




