05-07.vs魔王
結界が砕け散った。
瞬間、限界まで圧縮した爆撃魔法を放つ。
先ほどと同じように転移門を盾にして、衝撃が収まるのを待つ。
爆破が収まって魔王の方を見ると、そこには一人の人間の男が立っていた。見た目は普通の人間だが、枢機卿とは比べ物にならない力を撒き散らしている。こいつが魔王で間違いない。
「おい!? あれが効いてねえぞ!?」
クレアが驚愕する。
たしかに魔王には傷一つ無いようだ。
枢機卿の力は、本当に魔王の力のほんの一部にすぎなかったのだろう。この調子では炎の刃も通用しまい……。
「いきなりご挨拶だね。お陰ですっかり目が覚めたよ」
!? 魔王が喋った!?
「あなた会話できるの? 状況はわかってる?」
「う~ん。だいたい? 勇者と聖女に負けて封印された所まではっきりしてるんだけど、その後は半分寝てたからなぁ。とりあえず……君たちが復活した僕を倒そうとしてるのはわかるよ? でも君たちは随分弱っちいなぁ。前の勇者と聖女はそんなんじゃなかったよ?」
「それは嫌な事を聞いたわね。あなたの目的は? 大人しく暮らしてくれるなら戦う必要も無いのだけど」
「無理だね。邪神から力を貰っちゃってるから。僕にそんな自由は無いんだ。君たちが終わらせてくれるならそれでも良いんだけど……期待できそうにないなぁ」
「悪かったわね。でも安心して。きっと私たちが終わらせてあげるわ」
「やるだけやってみてよ。勇者っていうくらいだ。主人公補正くらいあるのかもしれないし」
主人公補正!? こいつまさか!?
「もう良いだろアルカ。とっとと始めようぜ!」
クレアが斬り掛かっていく。
魔王はなんのアクションも起こさないが、クレアの攻撃は届かず弾かれる。
「硬ったぁ!!」
クレアは何度も斬り掛かっていくが、魔王は相変わらず棒立ちだ。相手をする気すら無いようだ。
私は魔王の足元に転移門を起動して落とそうとするが、足元に何もないのに、魔王はその場を微動だにしていない。
「空間操作かぁ。それなら確かにダメージを与えられるかもしれないね。けどこれで終わり? これくらい出来ない?」
魔王が私に向かって手を伸ばす。
(!?)
とっさにその場を退くと、私の居た場所の空間が捻れて歪んでいた。
魔王はもう私に興味を失ったのか、それ以上の追撃はしなかった。
「満足したかな? こっちはそろそろ飽きて来たんだけど」
何だこいつ!? 本当にどうすれば!?
私たちの攻撃は全て効いていない。
「今なら見逃してあげるから、今度もう一度来てよ。勇者と聖女の力をもう少しなんとかしないと戦いにならないよ?」
「その間あなたは何をしているつもりなの?」
「そうだな~とりあえず何か美味しいもの食べたいなぁ。何年経ってるのか知らないけど、この時代の食べ物に興味もあるし。まあ、別に数日は働かなくても邪神も怒らないだろうから安心してよ」
こいつ何なの? 何を考えているの? 本気で倒されたいだけなの? 意味がわからない。
少なくとも、今は私たちの事を敵だとすら思っていない。
かといって、虫ケラみたいに思っているわけでもない。普通に会話して、あろうことかこちらを気遣ってすらいる。
魔王ってなんなの? 邪神ってなんなの?
考えても今はどうしようもない。
「クレア! 引くわよ!」
「本気か!?」
私は全員の足元に転移門を開いて、無理やりその場を離脱した。
「一つアドバイスをあげる。神様を探すと良いよ」
魔王の言葉を聞きながら、私はその場を後にした。




