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「レーネの契約相手はセシルにお願いするわ。
それでセレネの護衛はツクヨミに務めてもらいましょう。
ノアちゃんの方はハルちゃんとお姉ちゃんがいるのだから、あの娘達まで送り込んだら戦力過多になってしまうわ。
力があり過ぎる事も、それはそれで問題になりかねないものね」
セシル……側に置きたかったんだけどなぁ。
でも、変身や擬態も上手いから、カノンを手伝うのにも向いてるんだよなぁ。
仕方ない。一番に優先するべきは皆の安全だ。
それにレーネは契約相手の独占を望んでいない。
自身と共に、私を最優先に出来る娘を希望してくれている。
レーネの相棒なら私にとっても都合の良い事ばかりだろう。
そう思うことにしよう。
そして、ツクヨミ自身の希望は私の側に居る事だ。
セシルもツクヨミも夜は私と過ごしてもらいましょう。
未だにセシルの事は少し測りかねているけれど、これから親睦を深めていけばいい。
他の子達と同じように同化して過ごしてくれれば、少なくともツクヨミは喜んでくれるだろう。
まあ、そうでなくとも最近のセレネはルビィと自宅で過ごしている事も多いから、その間ツクヨミは私の方に付いているのだろうけど。
何だかんだと、其々の希望が叶う理想的な配置ではなかろうか。
「ありがとうございます、アルカ様。
ご安心下さい。お借りしている間に必ずセシルをアルカ様至上主義へと導いてみせます」
なんて?
「取り敢えずセシルとツクヨミはそれで構わないでしょう。
ならばコマリは私達に同行してもらいましょう」
ノアちゃん流したわね。
ノアちゃんがツッコミ放棄したらダメよ。
ノアちゃん以外、大体皆ボケ要因なんだから。
「本当に必要なの?
ノアのところばっかり、いくら何でも人多くない?」
ツッコミに回ったセレネ。
何の心配も要らなかったらしい。
だけどセレネ、ノアちゃんのところにも必要なのよ。
今のメンバーは、ノアちゃん、ルチア。
お姉ちゃん、ナノハ。
ハルちゃん、メアちゃん、ナハト。
計七人が対応しているけれど、ルチアはノアちゃんと同化しているし、メアちゃんとナハトは二人揃っても半人前だ。
現状ではハルちゃんの引率が不可欠だ。
実質的に、四人しかいないのだ。
まあ、暫くは人員教育の期間だと思って頑張るしかない。
とは言え、現状そのしわ寄せがハルちゃんとナノハに向いてしまっている。
ハルちゃんはへっちゃらだけど、ナノハには少し厳しい。
ナノハの分担を半分担ってくれる娘が欲しいのは事実だ。
少なくとも、私とノアちゃんはそう考えている。
ツクヨミとセシル程ではない、ナノハやラピス達くらいの娘となると、コマリが丁度良さそうな感じはある。
「そうよ、ノア。
ねえアルカ、コマリは私に預けてみない?
レーネの相棒枠とは別で、パンドラルカの人員として貸し出して欲しいのよ。
コマリの希望としても、私達の方が向いていると思うのだけど、どうかしら?」
セレネに続くカノン。
確かにコマリの希望の件もあった。
あの子は旅が好きらしい。
世界を見て回りたいのだと言う。
私としても、どうせなら綺麗な部分を見せてあげたい。
ノアちゃんの方だと、怖い部分ばかり見る事になりそうな不安もある。
うむむ。
そうすると、コマリをカノンに預けて、ヤチヨをノアちゃんの方に送り込むしかない?
結局私の手元には誰も残らないじゃない。
二人を預ける代替条件に千春達の新設部隊を公に認めてもらおうかしら。
『ハルちゃんどう思う?』
『ダメ』
『きょかでない』
『やっぱりそうよね……』
『あきらめる』
『よるにはみんな』
『かえってくる』
『まいにちあえる』
『じゅうぶん』
『アルカも』
『せんねんする』
『にっちゅう』
『チハちゃんズ』
『とおして』
『ちょうさする』
『あそんでるひま』
『ない』
『それはそうだけどさ……』
『それに』
『イロハのこうせい』
『かたてまダメ』
『うぐっ……』
『ほかにも』
『いっぱい』
『アルカも』
『ひまない』
『こだわるの』
『やめる』
『わかったわ……。
そうね。ハルちゃんの言う通りね。
私も心を入れ替えるわ』
『がんばれ』
『ハルもがんばる』
『おうよ、ハルちゃん!』
「ノアちゃん、ノアちゃんの方にはヤチヨを派遣するわ。
ナノハの負担分を半分受け持たせてあげて。
カノン、コマリの事は任せたわ。
折角ならニクス世界の良いところを沢山見せてあげて。
それで、何れは私世界の発展にも協力してもらいましょう」
「よろしいのですか?
それではアルカの元には誰も残りませんが」
ノアちゃんが若干訝しげに聞き返してくる。
失礼しちゃうわ。折角決断したのにそんな態度なんて。
未だにカルラ達の件を疑ってるのね。
まあ、無理もないか。元々納得していたわけでもなし。
そもそも悪巧みしてるのは事実だし。
「皆頑張っているのだもの。
何時までも我儘ばかり言ってられないわ。
それに私にはイロハがいるものね」
「やっと思い出してくれたのね。
アルカったら酷いわ。
新しい娘達に夢中で忘れてしまうんだもの」
イロハは二次会が始まってからお酒には目もくれず、会話にも加わらず、一心不乱にお菓子を食べ続けていた。
イロハこそ、お菓子に夢中で私の事忘れてたんじゃない?
相変わらず、甘いもの好きね。
そう言えば、私の収納空間に入っていたお菓子はノアちゃんに没収されたままだった。
収納空間は共有しているので、イロハが好きに食べられるお菓子でもあったのだけど、それがごっそり消えていたのだ。
何も言ってこなかったから気づかなかったけれど、我慢していたのかもしれない。
「別に忘れて無いわよ。
シーちゃん、後でこのお菓子、多めに共有空間に入れておいてくれる?」
「イエス、マスター」
「ルビィに与えてはダメですよ」
「うん。わかってる。
これはイロハ用よ」
「なら良いですが。
先ほどの話ですが」
「うん」
「ありがたくヤチヨをお借り致します。
シフトが決まったら、またお伝えしますね」
「うん。了解、ノアちゃん」
「アルカ、こっちもありがとう。
コマリの事は任せておいて」
「任せたわ、カノン。
レーネとセシルの事もよろしくね」
「ええ。
全員一流の商人に育て上げてみせるわ!」
そこは程々にね?




