30-41.延長戦
面接が決まると、すぐにミヤコがヤチヨを連れてきてくれた。
ヤチヨもある程度の事情は聞いていたようで、スタンバイしてくれていたらしい。
流石ミヤコ。出来る子だ。
いっそ、今度深層にご案内してみようかしら。
イロハをダシにしたら付き合ってくれるかな?
いやまあ、私が誘ったらそれだけでも普通に来てくれそうな気がするけど。
セシルとヤチヨを連れ歩きながら、ミヤコとコマチも攻略したら、ノアちゃん達がまた怒るわね。
でもまあ、今なら大義名分もあるしチャンスかも。
それに前は時間が足りなくて難しかったけれど、今なら十分に愛せる自信がある。
いやむしろ、私は既にミヤコとコマチを愛しているはずだ。
後は確認してみるだけだ。
イロハの方が好きって言われたら引き下がるけど。
まあ、その時はその時で応援してあげよう。
「ヤチヨ、先輩って呼んでみて」
「アルカ先輩」
「小春の方でお願い」
「小春先輩」
「くぅ~~~~!
採用!!」
「何勝手言ってるんですか、あと興奮しすぎです。
落ち着いて下さい」
「この際だから、ノアちゃんもいってみよう!
ノアちゃんも小春の方でお願い」
「嫌ですよ、付き合いませんよ。
大体、呼ぶとしてもアルカの方です。
私にとってアルカはアルカなんです。
小春さんなんて知りません」
「小春さん……だと!
良い!良いわ!ノアちゃん!
それもグットよ!最高よ!」
「何かの琴線に触れたみたいね。
少し落ち着きなさい、アルカ先輩」
「う~ん?
セレネはいいや。
何か違うし」
「なんでよ!?」
「セレネは後輩とか似合わないと思うの。
なんか、悪友とか幼馴染とかそっち系な感じがしない?」
「知らないわよ!
というか正妻でしょうが!
幼馴染はともかく、悪友ってなによ!」
「セレネ、ステイ。
あと、正妻はダメです。それ以上は戦争です」
「正妻戦争?」
「七人で競い合いそうね」
「定期的に開催してみたら?
優勝者には正妻の座を与える感じで」
「それニクス不利じゃない?
それでも良いの?」
「私は別に拘ってないから。
アルカの側にいられればそれだけで良いんだよ」
「ニクス~!」
「いい加減にして下さい。
面接を続けますよ」
「「は~い」」
「セレネも!」
「は~い……何で私まで」
「失礼いたしました、ヤチヨ。
こんな風に騒がしいですが、ヤチヨは大丈夫ですか?」
「ええ。よく知っていますから。
アルカの記憶は私達にとって楽しい娯楽の一つなんです」
アニメとかに混ざって、私の記憶映像も貸し出されているのね。
大丈夫?如何わしいやつはちゃんとコーナー分けてる?
「言葉遣いは崩して頂いて構いませんよ。
オーディションの時みたいなので構いません」
そうね。ヤチヨは、もっとセレネみたいな口調だったわ。
「いえ、こちらが素ですから。
不快なら変えますけど」
「もちろん、それならそれで構いません。
不快なんて事はありませんので、気にしないで下さい」
「私の呼び方は、今後も小春先輩でお願い」
「良いですよ、小春先輩」
「ノアちゃん、決を取りましょう。
今すぐ採用決定しましょう」
「アルカ、ステイ」
「わん」
いかん、調教されすぎて思わず咄嗟に出てしまった。
調教したのはセレネだけど。
セレネのってねちっこいんだよなぁ~。
「はい!ヤチヨお姉ちゃん!」
手を上げて、立ち上がって、大きな声を上げるアリア。
元気で大変よろしいですわね。
今日は終始あのテンションな気がする。
若いって良いわね。
「ヤチヨお姉ちゃんって呼んで良い?」
「どうぞ、お好きなように。アリア」
「やったぁ~!
またお姉ちゃんが増えた!」
妹が増えても喜ぶわよね?
「浮気?」
「カノ姉、ステイ」
「わん」
流行ってるの?
「ヤチヨちゃん、私からも良いかしら」
お姉ちゃんも先輩って呼んで欲しいのかしら。
「どうぞ、深雪」
「ヤチヨちゃんはどんな銃を使うの?」
「これです」
収納空間から細長い銃身を取り出すヤチヨ。
流石に私では銃の名前とかわからない。
もしかして、お姉ちゃんが詳しいのかしら。
なんか興味があるみたいだし。
それに私の記憶に無いなら、お姉ちゃんの記憶から再現したはずだ。
「もしかして自作した?
記憶にあるどれとも一致しないわね」
「お見事です。
よく一目で見抜かれましたね。
そうです。これは私が自作したものです。
いくつか参考にしたものはありますが」
「そうなのね。
器用なものだわ。
弾は実弾なの?
それとも魔力だけ?」
「どちらも撃てます」
「完璧ね」
何故か銃談義で盛り上がるお姉ちゃんとヤチヨ。
あかん。ヤチヨまで取られそう。
いっそリリカ達の事もゴネてみようかしら。
暫くして、何時までも止まらない二人に、ノアちゃんが割って入る。
「お姉さん、その辺で。
今は面接の場です。
マニアックな話は今度個人的にお願いします」
「そうね。ごめんなさい。
ついつい盛り上がってしまったわ」
「すみません、ノア」
「いえ、ヤチヨが謝る必要はありません。
話を振ったのはお姉さんですから」
「次は私から良いかな?」
「どうぞ、ニクス」
「さっきの銃の」
「ニクス、ストップ。
銃の話は無しです。
というか、なんでそんなに興味津々なんです?」
「え?だって格好良いじゃん」
「ニクスも好きだったの?
今までそんな事一言も言わなかったのに」
「だってアルカ興味無かったし」
「まあ、そうだけどさ」
「お二人もその辺で。
ニクスは他の質問は無いのですか?」
「あるよ!
コスプレ、何で袴ブーツにしたの?
何か好きなアニメとかあるの?」
「いえ、取り立てては。
用意されていた物の中で、これが一番可愛らしいと思って選びました」
「バッチリよ!
ヤチヨに良く似合ってるわ!」
「そうですか。
小春先輩のお気に召したのなら、今後もこの服を着る事にします」
「サ◯ラ◯戦は?」
「ごめん、ニクス。
実は私、タイトルとかしか知らないの。
アニメ自体は見たこと無いのよ」
「そんなぁ……」
「あ!でも!オープニングだけ見た事あるよ!」
というかそんなに好きなの?
本気で落ち込んでるみたいだけど。
機◯戦◯ナ◯シ◯なら見たことあるけど、そっちじゃダメ?
「アニメ談義したかっただけなんですか?
そういうのも後にして下さい」
「うん……そうだね……」
「安心して、ニクス。
私が見たことあるから、後で小春にも見てもらいましょう」
「深雪ぃ~!!」
そんな時間あるかしら。
いざとなったら深層に籠もるしかないわね。




