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30-40.交渉

 言うまでもなく、コマリのハルちゃんズ入りは満場一致で正式に可決された。


 さて、ここからが勝負だ。

私はコマリが退室したところで、我が家のお母さん担当に改めての交渉を開始する。



「ノアちゃん」


「ダメです」


 開始する前に却下された。



「セレネ」


「良いんじゃない?

 面接くらいなら」


 軽く答える愛しの正妻様。

おっと、いかん。

セレネを正妻と呼ぶのはノアちゃんが嫌がるんだった。



「ダメですよ。

 約束は三位までだったはずでしょう?」


「いやそれは、便宜上というか、建前というか、特段厳しくは設定してなかったというか……。

 ツクヨミとコマリ取られちゃうんなら、もう一人くらい……」


「セシルがいれば十分でしょう?」


「でもでも~!」


「大体、ヤチヨも若干セレネとキャラが被ってませんか?」


「まあ、話し方は結構似てるかも?

 なんなら、ノアも似たようなところあるよね。

 アルカってそういう、気の強そうな子好きだよね。

 私も変えた方が良いのかな」


「ダメよ。ニクスはそのままでいて」


「アルカは気が強いというより意思の強い子が好きなのよ。

 だから、ニクスもそのままで十分当てはまっているわ」


「私の事も目を見て一目惚れしたのだと言っていましたね」


「皆が段々とアルカを雑に扱うようになるのって、アルカの好みに合わせてるからなのかな」


「カノンも随分と変わりましたものね」


「え?そうかしら?」


「カノ姉が乱暴な事を言うのは、アルカに対してだけかも」


「そうね。

 カノンお姉ちゃんって前はもっと優しかったもの。

 それに、何時でも笑顔を欠かさなかったわ」


「あれ?

 私のせいで、カノンが駄目な方向に変わちゃってるの?」


「う~ん?

 でも、ずっと楽しそうだから大丈夫よ。

 それにアリアは、前のカノンお姉ちゃんも、今のカノンお姉ちゃんも大好きだもの」


「アリア~!

 私も大好きよ~!」


 私達の会話に微妙な表情を浮かべていたカノンだったが、アリアの愛らしさに堪らず相好を崩して抱きしめた。



「カノ姉!ルカも!」


「私も!カノン!」


 ルカとスミレもカノンに抱きついてもみくちゃになっていく。

良いな。混ざりたい。

今晩はアリアとルカに一緒に過ごしてもらおう。

ふふん!寝取っちゃうもんね!

いや、二人はカノンじゃなくて私の嫁なんだけど。

むしろ寝取られてる?



「それより!

 お願いノアちゃん!

 一回だけ!一回だけチャンスを頂戴!

 面接してみるだけでいいから!

 そこで落ちたら、もう二度と言わないから!」


「ダメです。

 面接した時点で通るに決まってるじゃないですか」


「ミヤコ達の仕事は完璧だったものね」


「そうだっけ?

 レミィの事は?」


「納期も厳しい中、主催者からの急なねじ込みも受け入れてくれたのだと考えればまあ」


「ちゃんとアリア達の入学に間に合わせてくれたのよ。

 もっと感謝しなきゃ」


「しっかり労ってあげて下さい。

 それで?

 それがわかっていて、これ以上我儘をねじ込むつもりですか?」


「うぐっ……」


「今のは墓穴だったわね」


「浅はかです。アルカ様」


「レーネも結構変わったわよね。

 あの純真無垢なお姫様はどこにいったのかしら」


「魚介類も食べられるようになりましたしね」


「ノアは悪魔なのかと思いました」


「結局、何の工夫も無く正面から突き出してたわよね。

 しかも、問答無用で残すの認めなかったし」


「好き嫌いはいけません」


「レーネが食べられなかったのは、そういう話じゃなかったじゃん……

 というか、ノアちゃんも散々お風呂入るの嫌がってたじゃない」


「何時の話をしているんですか?

 もうとっくに克服しましたよ」


「よく言うわ。

 ルチアが魔法で綺麗にしてくれるようになってからは、サボってるくせに」


「……時間が足りなかっただけです」


「なら今はもう入れるわね。

 今日からは私と一緒に入りましょう」


「嫌です。セレネは長すぎます」


「ダメですよ、ノア。

 好き嫌いはいけません。

 セレネが嫌なら私がお付き合いします。

 けれど、百数えるまでは出しませんからね」


「結構です。一人で入れます」


「ノアちゃん、家長命令です。

 これから暫くは、毎日レーネか私とお風呂に入ること。

 異論は認めません」


「横暴です!」


「どこがよ。

 アルカと一緒でもいいって言ってんじゃない。

 普通にただ風呂入るだけで、横暴も何も無いでしょ」


「うぐっ……」


「というか、今はそれどころじゃないわ。

 ノアちゃんのお風呂嫌いは置いといて、そろそろヤチヨの面接を始めたいんだけど」


「だからダメですってば!

 何どさくさ紛れに話進めてるんですか!」


「あ、スクリーンが映ったわ。

 ミヤコもいい加減にしろって思ってるんじゃない?」


「ほんとね。

 あ!趣味は狙撃だって!

 銃とかも好きなのかしら?」


「それで何で袴ブーツ?

 サ◯ラ◯戦とか好きなのかな?」


「なら刀とかも好きかもね。

 ノアちゃんと話が合うかも」


「それで誘惑してるつもりです?」


「尻尾がそわそわしてるわよ」


「適当言わないで下さい、セレネ」


 そう言いながら、尻尾を自身のお腹に巻きつけるノアちゃん。



「サ◯ヤ人みたいね」


「参考になります」


「月を見たら巨大な虎になってみるとかどう?」


「面白そうです。試してみましょう」


『そんなことよりアルカ様~

 そろそろ決めないと、ミヤコが怒るよ~』

『コマチ!やめなさい!

 失礼致しました!アルカ様!』


「ノアちゃん」


「……一回だけですよ」

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