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30-39.モテモテ

「よっよろしくお願いします!!」


 部屋に入ってきたコマリは、ミヤコの紹介を待たずに大きな声で挨拶をしながら、勢いよく頭を下げた。



「いらっしゃい、コマリ。

 こちらこそ、これからよろしくね」


「はっはい!!アルカ様!」


「アルカで良いわ。様はいらない。

 口調ももっと砕けたものが良いわね」


「え?

 ですが!」


「落ち着いて、コマリ。

 私達はこれから家族になるのよ。

 コマリもそのつもりで頑張ってみて」


「はっはい!」


「コマリはお姉ちゃんって気がしないわ!

 今日からコマリも私の妹よ!」


「お二人とも、まだ確定ではありませんよ」


「まあ、良いじゃない。

 一位通過者の上、唯一のブースト無しの子だけが面接で弾かれたんじゃ、オーディションの意味が薄れてしまうわ」


「それはそれです。

 それに、あまり余計な事も言わないで下さい」


「ブーストの事?

 どうせ、すぐにアルカの記憶で知られる事になるのよ。

 それこそ気にするだけ無駄じゃない」


「セレネ、それくらいしておいて。

 ノアが言ってるのは、心構えの話だとわかってるでしょ。

 まだ最後まで終わったわけじゃないんだから、ちゃんとこのイベントに付き合ってあげようよ」


「そうね、ニクス。

 悪かったわ、ノア。

 私も気をつける」


「いえ。わかってくださったのなら大丈夫です。

 ニクスもありがとうございます」


「ううん。それより、話を進めようよ。

 コマリが困ってるよ」


「ダジャレ?」


「小さな鞠で小鞠よお姉ちゃん。

 困るじゃないわ。

 小さくて可愛らしいから、そう名付けたの」


 きっと、たぶん、おそらく、めいびー。



 先ほどの話が気になっていたのか、イロハが自分から質問を投げかけた。


「コマリ、あなたは私に会った事はある?

 悪いけど、私あなたに見覚えが無いのよ」


「えっと……

 お会いした事は無かったかと。

 けど!もちろんイロハ様の事は存じてます!」


「そう。

 自分が生まれた時の事は覚えてる?」


「いえ……それは……

 何分幼い頃の話ですので……」


「幼い頃?

 何を言っているの?」


「ああ!そうですね!

 先に説明しなければ意味がわかりませんよね!

 すみません!

 えっと、私には親がいます。

 いえ、正確にはいました」


「それはダンジョンコアとは別の方法で生まれてきたという事ですか?

 吸血鬼とは、子を成せるのですか?」


「はい。

 人間の方法とは異なりますが、二人の吸血鬼がお互いの因子をかけ合わせて子を成す事は可能です。

 とはいえ、一般的な方法ではありません。

 長い時をかけて編み出した秘術だそうです。

 詳しい話を聞く事は出来ませんでしたが」


 女の子同士で?



「親は誰?」


 少し緊張感を滲ませた声で問うイロハ。


 そうだった。

もういないという事は、イロハの側近の誰かである可能性が高いのだ。

ミーシャ世界の吸血鬼達が命を落とすような場面は、私達が流れ着いたあの時しか無かったはずだ。


 勘違いとはいえ、世界中の吸血鬼達が次々と失われて行く中、侵略者である私達に対抗する為に、イロハは側近の娘達を自らの力として取り込んだ。

その時に失われた者である可能性が高いのだ。



「えっと、会ったことは無いのです。

 私を産み出す際に、共に自らの命を使ってしまったので」


 ああ。そういう事か。

イロハの側近とは関係ないのね。


 子を産むと言うより、むしろ融合に近いのかしら。

でも、生まれた当時は物心付かない赤ん坊だったみたいな話だしよくわからないわね。

記憶は引き継がれなかったのかしら。


 それに秘術の事は誰に聞いたのかしら。

誰か、両親の事を知っていた協力者か育ての親でもいたのかな。

それとも、多少の記憶なら引き継がれているのかしら。



「そう。変なことを聞いたわね」


「いえ!

 むしろ興味を持って頂けて嬉しいです!」


 コマリもイロハ崇拝組なの?

コマリの言葉に気を使ったのか、続けて質問するイロハ。



「育ての親は他にいるの?」


「えっと?

 ああ!いえ、いません!

 旅をしている間にお世話になった方はいますが、特定のどなたかに育てて頂いた事はありません」


 まあ、生まれたばかりだろうと世界全てがダンジョンと化していたミーシャ世界なら餓死とかの心配もないし、フィリアス達ならすぐに状況を把握できるだけの頭脳はある。


 それになにより、敵の類が一切存在しない。

この娘達にとっては、まさに楽園と呼べる世界だった。


 その代わりに刺激も無いので、誰も彼もが退屈を持て余していたのだけど。



「コマリは旅が好きなの?」


「はい!大好きだよ、です!

 最初は必要にかられてだったけど、段々と好きになったよ、です!

 アルカさ、アルカの側に置いていただきたいと思ったのも、外の世界を沢山見てみたかったからだよ、です!」


 私の質問に、律儀に砕けた口調で返そうとするコマリ。

中々上手くはいかないようだけど、素直な良い子だという事は伝わってきた。



「ふふ。ならいっぱい見せてあげなきゃね。

 それと、話し方も無理はしなくて良いからね。

 自分の楽な方で構わないわ。

 けれど、私のお願いを聞いてくれてありがとう。

 合わせようと頑張ってくれて嬉しいわ」


「お優しいです!アルカ様!」


「なんかコマリに対して最初から甘すぎない?

 もう目を付けたの?

 何度も言ったわよね。

 このオーディションは嫁採用とは別なのよ。

 嫁にしたいなら、ちゃんと段階を踏みなさい」


「大体、アルカはセシル推しだったのでは?」


「ノアちゃん!余計な事言わないで!

 それはそれとして、二人とも私と一緒に行動してもらいましょう」


「ダメです。コマリは私が預かります。

 外の世界を見たいのなら、アルカより私の方が適任です」


「いいえ、ノア。

 それではダメよ。

 きっとコマリが見たいのは、血なまぐさい戦場ではなく、人々の営みのような平和的なものよ。

 コマリは私が引き受けるわ。

 レーネ専属はコマリにしましょう。

 ノア達には、ツクヨミの方が適任でしょ」


「その意見には賛同出来ますが、カノン自身の欲望が多分に含まれていますよね。

 先にアリアの許可を貰うべきでは?」


「そうだよ!カノンお姉ちゃん!

 浮気!浮気だよ!

 お姉ちゃんにはアリアがいるでしょ!

 可愛ければ誰でも良いの!?」


「カノ姉のロリコン」


「新しい子に目移りしてないで私を受け入れてよ!

 またお母様のところに家出するわよ!」


 アリア、ルカ、スミレから続け様に責め立てられるカノン。

カノン落とし隊の逆鱗に触れてしまったようだ。

まあ、カノンもコマリの事好きそうだなとは思ってたんだ。

私の同士だし。


 やいのやいのと続ける三人と、追い込まれてタジタジになっているカノンを放置して、話を進める事にする。



「ちょっと早いけど、採用決定で良いかしら?

 ノアちゃんもその気みたいだし」


「さっきのは……

 まあ、そうですね。

 問題は無さそうですが……

 いえ、先ずはもう少し話を続けましょう。

 という事で、アリア、ルカ、スミレ、少し静かにして下さい。

 コマリの面接を再開しますよ」


「「「は~い」」」

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