30-21.思い付き
「どうぞ、お入り下さい」
「ちょ!まっ!」
レーネの部屋の扉をノックすると、すぐに返事が返ってきた。
なにか妙な声も続いた気がするけれど、敢えて気にせずに扉を開け放つ。
「何してるの?」
扉の先には想像と若干異なる光景が広がっていた。
「いや……あの……その……」
「可愛いお尻ね。撫でて良い?」
「止めなさい!真面目な話をしに来たんでしょ!」
「ならなんでカノンが裸でレーネに覆いかぶさってるの?」
「いや!これは!」
「正直、逆のパターンだと思ってたわ」
「ふふ。カノンも意外とやるでしょう?」
「レーネ!あなた!」
「ダメですよ、カノン。
内緒にしたいのでしょう?」
「うぐっ!」
「何の話?」
「気にしないで!
一旦外に出て!扉閉めて!」
「は~い」
カノンの言葉に従って、外に出る。
『イロハ、何があったかわかる?』
『無茶言わないで。
レーネの事まで覗いてないわ。
知りたいなら、ハルに聞きなさいな』
『ハルちゃんって、そういう事は教えてくれないのよ。
プライバシー意識はしっかりしてるから』
『はいはい。
どうせ私はペラペラ喋っちゃうわよ』
『別にそんな風には思ってないわ。
ただの暇つぶしの雑談よ。
気に触ったんなら謝るわ』
『わかってるわ。
それより、もう済んだみたいよ。
そろそろ呼ばれるんじゃない?』
「アルカ~良いわよ~」
「は~い」
イロハの言う通り、カノンの呼ぶ声が聞こえてきた。
私が部屋に入ると、二人は服を着て、並んでベットに腰掛けていた。
「結局、何してたの?」
「何もしてないわ。
それより、今はフィリアスの事でしょ。
さあ、話しを始めましょう」
「流石にそれは無理があるでしょ。
まあ、無理やり聞いたりはしないけどさ」
「アルカ様、早速ですが私から話をさせて頂いて宜しいでしょうか」
「ええ。もちろん。
聞かせてもらうわ、レーネ」
「アルカ様、私の事はフィリアス達と同様に扱って頂けないでしょうか」
「どういう意味で?」
「私もハルと同じように、アルカ様と共に在りたいのです。
当然、今すぐにという話ではありません。
カノンと行動を共にする事に、物申したいわけでもありません。
将来のお話です。
何れ私が十分な力を得て、アルカ様のお役に立てるようになったのなら、同化の方法をご教示頂きたいのです」
「それはもちろん構わないけれど……
このタイミングでって事は、レーネにフィリアスを渡すかどうかと関係あるのよね?」
「はい。
可能であれば、私に専属のフィリアスは付けないで頂きたいのです。
何れはアルカ様の下へ帰るのに、私を優先したいと思う者は必要ありません。
いつ何時でも、アルカ様を最優先にする子が望ましいのです」
「レーネの気持ちはわかったわ。
そうすると、どうしましょうか。
私の子達の誰かに行ってもらうのが良いのでしょうけれど、皆もうそれぞれに役割があるのよね」
サナは家事。
ラピスとクルルは学園。
ナノハとメアちゃんとナハトは調査。
チグサは研究。
ハルちゃんとイロハは別枠として、私とある程度近いのはミヤコとコマチくらいかしら。
でも、あの二人はフィリアス達のまとめ役だし……
『新しい子用意したら?
とりあえず三人くらい』
『三人も必要ないでしょ。
とりあえず一人産み出して、先に私と一緒に過ごしてみましょうか』
『ならいっそ、あの子達から選んだら?』
『私世界の?』
『オーディションでもしたらいいじゃない』
『それちょっと面白そうね。
ファッションショーと合わせて、コンテストみたいにできないかしら』
『ミヤコ達に伝えておくわ』
『ありがとう、イロハ』
「カノン、相談があるんだけど」
「私に?どうしたの?」
「私世界のフィリアス達で、ハルちゃんズ入りの希望者を募りたいの。
それで、ついでにファッションショーを兼ねたコンテスト兼オーディションを開くのはどうかしら。
案だけこっちでまとめれば、準備は向こうの子達がしてくれるわ」
「それは良いけど、先にノア達に相談しなさいよ?
実質嫁探しとも言えるのでしょう?」
「そうね。相談は必要ね。
別に嫁探しのつもりはないけど」
「それは無理がありますよ、アルカ様。
今回は私の我儘を叶える為なので、言えたことではありませんが」
「うぐっ……」
「ノアの説得には私もお供致します」
「まあ、とにかく考えてみましょうよ。
ノア達の説得はアルカとレーネに任せたわ。
それはそれとして、企画自体は面白そうだものね。
本当は家族の皆に着てもらいたかったけれど、先ずはフィリアス達に着てもらって、着飾る事により強い興味を持ってもらいましょう」
「そうね。よろしくね、二人とも」




