30-20.明日から頑張る
私はレヴィとセフィお姉ちゃんにフィリアスの事を説明した。
途中で出てきて一緒に解説してくれたラピスにお礼を言って、私の中に戻ってもらう。
そういえば、アリアとルカの契約もしなきゃだわ。
明日、ハルちゃんの用事が済んだら来てもらおう。
今日はもうアリア達が寝てしまうだろうし。
「という事で、フィリアスについては以上よ。
何か質問はある?」
「はい!」
「どうぞ、レヴィ」
「私とけいやく?するのはどんな子なの?」
「それはまだわからないわ。
契約すると決まったら、ハルちゃんが新しく産み出してくれるから、それまでのお楽しみよ」
「そっかぁ……」
「やっぱり不安?」
「うん……」
「そうよね。
まあ、レヴィはすぐに決めなくても大丈夫よ。
ゆっくり慣れていきましょうね」
「うん!」
「すごい技術だね。
レヴィでも簡単に私より強くなってしまうんでしょ?」
「まあね。
本人が強くなったと言って良いのかは、物言いが入るかもしれないけど」
「ふふ。そうだね。
ルネルは嫌がるね」
「そうなのよ。
まあ、フィリアス達の力を借りても、ルネルには敵わないのだけど」
「アルカはルネルに勝つつもりでいるの?」
「ええ。
約束してるの。
私がルネルに勝ったらお嫁さんになってくれるって」
「え?
前に指輪がどうこう言っていたけれど、本気でルネルに惚れているの?」
「う~ん。
そう改めて聞かれると微妙な所ね。
正確にはルネルにもっと近い位置にいて欲しいってところかな。
今は半分お客さんみたいなものだし。
私達としてはルネルを家族だと思ってるけど、ルネル側はそうでもなさそうだから」
「ああ。
なんとなく言いたい事はわかるよ。
あの方はエルフの国でも、どこか距離を置いていたから」
「厳密には同族じゃないから~なんて思ってそうでしょ。
だからそんなの関係なく、私達は家族だってわからせたいのよ」
「ふふ。随分と大それた野望だね。
でも良いね。
私にも協力させて欲しいな。
私もルネルのことが大好きな弟子の一人だもの」
「もちろん大歓迎よ!
一緒に頑張りましょう!」
『言う割に、アルカって鍛錬しないわよね。
今日も一日中遊んでたし。
深層に潜ってても集中しきれてないし』
「うぐっ……
これから行ってきます……」
『ダメに決まってるでしょ。
レーネ達が待っているわ』
「そうでした……」
「中々忙しいみたいだね。
今日もルビィはこっちで良いの?」
『おかーさん……』
「ルビィ~!ごめんね~!」
ルビィが寂しそうに私の足にしがみついてきた。
私は咄嗟にルビィを抱き上げる。
そのままぎゅ~と苦しくない程度に抱きしめた。
「お母さん、ルビィを悲しませたらダメだよ」
「うん。ごめんね、ルビィ、レヴィも。
ルビィはセレネのところに行かない?
セレネもルビィと一緒に居たがっていたわ」
『うん、いく、セレネ、ママも、すき』
「ふふ。セレネも喜ぶわ」
「あらら、振られちゃったわね」
「ママには私がいるでしょ」
「ふふ。そうだね、レヴィ」
「じゃあ、そろそろ私は行くわね。
レヴィも少しずつでいいから考えてみてね」
「うん。
おやすみ、お母さん、ルビィ」
私とルビィはおやすみと挨拶を交わして、セフィお姉ちゃんの部屋を退室する。
『セレネ、今からルビィを連れて行くわ。
部屋でいい?』
『大部屋の方にお願い』
『え?今日もやってるの?』
『まさか。
子供達も遊び疲れて寝てるわ。
ただ単に、皆で寝たくなっただけよ』
『ならセフィお姉ちゃんにも声をかければ良かったかしら』
『完全に回復してからになさい』
『そうね。
本人は元気そうだけど、レヴィの許可が降りてからにしましょう』
『まあ、傷や薬物の影響は治ってるからね。
後は単純に体力の問題よ。
随分手酷く扱われていたみたいだけど、元々鍛えてたみたいだから、もう殆ど影響は残ってないでしょうね』
『あえてそこを明言されちゃうと、素直に良かったとは言い辛いわね』
『大丈夫よ。教会の聖女様を信じなさい』
『もちろん信じてるわ。
"私の"聖女様だもの』
『ニクスのじゃないの?』
『意地悪言うなら、セレネを私世界に監禁するわよ』
『それはそれで悪くないわね。
あの遊園地は少し騒がしかったけれど、お姉ちゃんの部屋はまた行きたいわ』
『え?冗談でしょ?』
『まあ、流石に趣味が良いとは言えないけど、気になる物がいっぱいあるもの』
『随分好き勝手していたみたいね。
人様の部屋を無闇に漁るものではないわ』
『ちゃんと許可は貰ったわよ。
アウラ経由で連絡は取れるもの』
『そういえば電話機能が実装されたんだったわね。
大体念話で済むから忘れてたわ』
私達が部屋の前に辿り着いた所で、扉が開いた。
セレネが迎えに来てくれたようだ。
「いらっしゃい、ルビィ~!
今日はママと寝ましょうね~!」
セレネがダラシない笑顔で迫ってくる。
「セレネ、ステイ。
そこで止まりなさい」
「なんでよ」
『ママ、こわ、い』
「なんで~!!」
「とりあえず深呼吸して、落ち着きなさい。
近くに鏡とか無かったかしら。
今すごい顔してたわよ」
「おかしいわね。
いっぱいイメージトレーニングしたのに」
「絶対にそのせいね。
ルビィの事が可愛いからって、浮かれすぎよ」
「アルカが連れて行ってしまうからでしょ。
ルビィにまで説明する必要あったの?」
「いやまあ、なんとなく流れで連れてっただけなんだけど。
そう言うセレネこそ何していたのよ。
もっと早く迎えに行けばよかったじゃない。
今日は午後からこっちに帰っていたのでしょう?」
「違うわ。今日は教会に行っていたの。
お昼にグリアさんを誘ったら、流れで行くことになっちゃったのよ。
だから、帰ってきたのは会議の少し前よ。
アルカこそ気付いてくれなかったの?」
「いや~ほら、私はギリギリまで私世界にいたし……」
「夕飯まで向こうで済ませてきたものね」
「セレネも知ってるんじゃない」
「私にも声かけてくれれば良かったのに。
アルカ世界からでも連絡出来るんだから。
そうすればもっと早く帰ってこれたかもしれないわ」
「セレネ、ストップ。
話が段々それているわ。
待ちくたびれてルビィが眠ってしまったじゃない」
「ああぁ~なんてことぉ~」
「そこまでショック受ける?
可愛い寝顔を眺められるだけでも十分でしょ?」
「そうね……
代わりに明日は一日、ルビィと一緒に過ごしましょう」
「私は……無理そうね」
「ふふん。ルビィのママの座は私のものよ~!」
「セレネ、静かに」
「そうね。ごめんなさい」
「じゃあ、ルビィの事よろしくね。
おやすみ、セレネ」
「ええ。おやすみなさい、アルカ」
私はようやくセレネにルビィを渡して、レーネの部屋に向かった。




