30-15.家族会議
一日遊園地で遊び倒した後、ニクス世界に娘達を返し、エリスをマリアさんの下に送り届けた。
その後、今後の方針決めの為の会議を開くことにした。
お姉ちゃんも呼び戻して強制参加させる事にする。
決して私が会いたいってだけじゃないよ?
お姉ちゃんは敵地に籠もって研究資料を調べたり、人の出入りを見張っているようだけど、数時間程度ならナノハが一人で受け持ってくれるはずだ。
それにどうやら他にも協力者がいるみたいだし。
何故かノアちゃんもお姉ちゃんも教えてくれないけど。
会議室には、ほぼ全てのメンバーが揃っている。
いないのはナノハと、ルネル、グリア、クレアのお客様組くらいだ。
何時もならグリアにも来てもらうところだけど、何故か辞退されてしまった。
ルネルとクレアも言わずもがなだ。
フィリアス達は席の都合で、各宿主の中から参加だ。
久しぶりに私の中は大変賑やかな事になっている。
ナハトは大丈夫かしら。
私世界に避難させてあげるべきかな。
『こっちがいい』
なら良かったわ。
今回はセフィお姉ちゃんにも参加してもらった。
レヴィとルビィも一緒だ。
ついでに改めて家族に紹介していく事にする。
「という事で、家族も随分と増えました。
ここらで一度、現状把握と人員配置の見直しをしたいと思います。
アリア達の学園ももうすぐ始まるわ。
初めての経験で大変だと思うけれど、私達も精一杯サポートするからね」
「学園に行くのは、アリアとルカとリヴィとラピスでいいのよね?」
「そうよ、アリア。
アリアとラピスは初等部の五学年。
ルカとリヴィは初等部の二学年に編入してもらうわ。
リヴィには変身してもらおうと思っていたけれど、今ならこのままでもいいのかしら。
見た目は五歳くらいだと思うから、少し小柄なだけって言い切れるんじゃない?」
「へんしんする?
するならがんばる」
「リヴィにとっては窮屈なものだそうですし、止めておくべきでしょう。
後でボロが出るくらいなら、最初から開き直った方が良いはずです。
心配しなくても大丈夫ですよ。リヴィは賢いですから。
きっとすぐに、納得してもらえます」
「えへへ~」
「ならそういう事で。
四人の予定は取り敢えずはそんなところね。
毎日家に帰ってきたら、ルネル達との訓練にも参加してもらうけれど、勉強も疎かにしてはダメよ。
成績次第では、訓練の参加を禁止するかもしれないからそのつもりでね」
「え~!」
「アリアは勉強だってそれなりに出来るでしょ?」
「ルカ厳しいんだもん」
「ルカに教えられてたの?
それは知らなかったわ」
カノンですら知らなかったとは。
ルカはそれだけ上手く姉を制御していたようだ。
「アリア、やれば出来る。
やる気ないけど」
「ルカ、一緒の学年になりましょう」
「ダメに決まってるでしょ。
ラピスも頼りになるから、二人で頑張りなさい」
『任せておいて!』
「アリアとも契約しておく?」
『あるじが普段からもう少し構ってくれるなら考えて上げる』
「ごめん……」
『冗談よ。
良いよ契約して上げる。
ラピスもその方がアリアを守りやすいと思うし』
「ありがと、ラピス。
ルカはどうしようかしら」
「リヴィがまもる!」
「そうね、リヴィにお願いするわ。
リヴィって二重契約出来るの?」
『むり』
「ならやっぱりフィリアスも付けておいたほうが安心よね。
イロハは謹慎、サナは家事、ナノハはお姉ちゃん付き、チグサは研究班、クルルはイロハの追っかけ、メアちゃんとナハトはコミュニケーションに問題があるのよね。
新しい子産むべきかしら」
「今一人おかしなのいたじゃない」
「クルル?
そもそもクルルは精神面が幼すぎるのよね」
「ルカとなら相性が良いのでは?」
「ルカの負担になったら本末転倒よ。
まあ、今回の契約はあくまでも護衛の為だけのものだから、あまり自由にさせる気もないのだけど。
むしろ、フィリアス側も自制出来る子が望ましいのよ。
まだ、ルカに大きな力を与えるのは早すぎるもの。
ルカの素質を伸ばすためにもね」
『主、我もお仕事するよ?
頑張れるよ?』
「良いの?
あまりイロハと一緒にはいられなくなるけど」
『うん。大丈夫。
主忘れてるけど、我、皆より年上だよ?』
「そうだったわね。
ハルちゃん程では無いにしても、十分年長者組だったわ」
『任せて!主!』
「う~ん。
ルカはどう思う?
クルルに同化してもらっても構わない?」
「うん。いいよ」
「なら決まりね。
けれど、改めて言うけれど、今回の契約はあくまでも護衛の為だからね。
クルルもラピスも必要以上に何かを教えたり、力を貸したりしてはダメよ。
アリアとルカの成長の為には必要な事だからね」
『『はい!』』
「ありがとう。
じゃあ、これでアリア達の話は終わりね。
次はノアちゃんの件、いってみましょうか。
先ずは自分で現状を説明してくれる?」
「はい。私は今、とある組織の行方を追っています。
これには、ハル、お姉さん、ナノハにも協力頂いてます。
細かい捜査状況は省きますが、全てに片が付くのはまだまだ先の事です。
場合によっては、数年程度はかかるでしょう」
「随分と大掛かりなのね。
ハルちゃんにはそろそろ帰ってきてもらいたいのだけど、難しそうかしら」
「そうですね。
ハルに限らず、お姉さんも現状出ずっぱりです。
正直な所、もう少し人手が欲しいところです」
「どんな人材?
グリア向き?クレア向き?」
「頭脳労働も、荒事も両方こなせる人が望ましいのです」
「いっそ二人に協力を頼む?」
「そうなれば心強いですが、出来れば他の方でお願いします」
「どういう事?」
「クレアさんは目立ちすぎます。
戦い方の話だけでなく、存在そのものが。
グリアさんもそれなりに戦えますが、それでも護衛が必要になります。
ですから、フィリアスの誰かをお借りしたいのです。
隠密行動が可能で、研究資料を理解する事ができ、尚且つ高い戦闘能力を持つ者が望ましいです」
「フィリアスね……
研究班はどう?
チグサはまだ専念していたい?」
『そやな~
出来たらまだ時間欲しいんよ~』
「ならチグサは無しね。
そうすると、やっぱりハルちゃんやイロハになってしまうのかしら」
『メアは?』
『……』
「え~、だって」
『わがまま』
『みんな』
『がんばってる』
「落ち着いて、ハルちゃん。
そもそも私だって、まだメアちゃんには任せられないわ。
ノアちゃん達の助けになれる子には、相応の能力が必要よ」
『……』
「ううん。力不足とか信じてないとかって話じゃないわ。
メアちゃんは経験不足なのよ。
そもそもまだ、産まれてから一月も経ってないのだもの」
『……』
「失望なんてしてないってわかるでしょ。
大丈夫よ、少しずつ成長していけば良いのだから」
『……』
「うん、ごめんね、メアちゃん。
後でゆっくり話しましょうね」
「話はつきましたか?
相変わらず、一人で喋っているようにしか聞こえません。
もう少しどうにかなりませんか?」
「ええ、ごめんなさい。
メアちゃんの事は追々ね。
それで、メアちゃんは無しで、そうするとどうしようかしら」
『ミヤコとコマチ』
「私世界のフィリアス達が困るじゃない」
『でもほかいない』
「そうね……」
「こはる、ミーシャにやらせてみたら?」
「ミーシャ?
なんでまた?
それならノルンの方が安心できるんだけど」
「そうだよ!ノルンちゃん!
私なんかよりノルンちゃんの方が適任だよ!」
「あなた、そんな事言って、仕事したくないだけじゃない」
「ミーシャは研究班でしょ?
普段は何をやってるの?」
「内緒よ、こはる。
けれど、ミーシャはもう必要ないわ」
「ノルンちゃん酷い!!」
「ミーシャねぇ……」
「大丈夫だよ、アルカ。
ミーシャはこれでも優秀だから。
ただかなり、性格に難があるけど。
その代わり私やノルンとは違って、ある程度戦えるから。
ミーシャの場合、この世界ではアルカの所有物以外の何物でもないから、かなり自由が利くんだよ」
「ノアちゃん、どう思う?」
「チェンジで」
「そんなぁ!?」
「ミーシャではアルカとの力関係が大きすぎます。
ハルの制御下にあるフィリアスが望ましいのです」
「それって私に隠し事する為に?」
「ええ。そうです」
「はっきり言うわね。
けれど、ミーシャにだって無理強いはしないわよ?
そもそもノアちゃんが隠し事してるのは、私だってわかっているのだもの。
無理やり暴き立てたりするわけないじゃない」
「すみません、それでもです」
「困ったわね。
なら、やっぱりメアちゃんとナハトに頼む?
それとも、新しい子を産み出す?」
「二人には悪いですが、メアとナハトを私に預けてみてくれませんか?
二人が成長すれば、十分頼りになるはずです」
『アルカ』
「うん、ハルちゃん。
ノアちゃん、どちらか一人ずつにしましょう。
その代わり、ハルちゃんには引き続きそっちにいてもらうから」
「良いのですか?」
「ええ。
元々イロハが復調するまでのつもりだったのだもの。
その後イロハがそっちに戻るのは難しくなちゃったけど、だからって、ハルちゃんを取り上げるわけにもいかないものね」
『私は構わないわよ』
「この件でイロハの意見は聞かないわ。
私との関係が落ち着くまで大人しく従いなさい」
『アルカがそんなだから、こじれているんじゃない』
「イロハが素直じゃないからでしょ」
『勝手になさい』
「話を戻すわよ。
それで、ノアちゃんにはある程度成熟した子が必要なの。
そうなると、ハルちゃんかイロハ、あとはフィリアスじゃないけど、ノルンくらいかしら。
けれど、ノルンは殆ど無力だし、結局ハルちゃんしかいないのよ。
お姉ちゃんも頼りになるけど、忙しいみたいだしね。
メアちゃんとナハトには、順番にそっちに行ってもらって、少しずつ経験を積んでもらいましょう。
ノアちゃんと二人が育てば、ハルちゃんも帰ってこられるかもだし」
『まかせろ』
『ハルがそだてる』
『さんにんとも』
「ハルもハルで、度々やらかしてませんか?」
「人間らしさや自重はノアちゃんが教えて上げて」
「はい。任せて下さい」
『むむ』
「ハルちゃんも謙虚にね」
『……』
『しかたない』
ハルちゃんで本当に大丈夫なのかしら。
 




