30-13.バタバタ
「マスター、起床時間です。
起きて下さい」
「むにゃ~……zzz」
「ダメです、起きませんね。
先にセレネを起こすべきでしょうか」
「zzz」
「セレネもグッスリです。
エリス達を迎えに行くのなら、いい加減起きないと間に合わないのですが。
いっそ、エリス達をこちらに連れてきてしまいましょうか」
「zzz」
「マスター!セレネ!
起きて下さい!朝ですよ!
子供達を迎えに行くのでしょう!」
「……あしゃぁ?」
「そうです、マスター。
朝です。おはようございます」
「おはよ~……zzz」
「そろそろ面倒になってきました。
手荒い手段となりますが、ご容赦を」
「……zzz……!?
あひゃひゃ!あははは!
くすぐった!え!なに!むぶ!?」
え?なに?なんなの?
何この状況!?
何で私シーちゃんにくすぐられてるの?
なんか唇も塞がれてるし!
あれ?シーちゃん三人いる?
分体?
なんでこんな全力で襲われてるの?
パニクっていた思考が段々と落ち着いていく。
どうにかくすぐり役のシーちゃん二人をまとめて抱きしめて、くすぐり地獄から脱出した。
そのまま、両腕のシーちゃんはサラサラと消えていく。
ナノマシンに分解したようだ。
この二人が分体だったのね。
キス役は未だに私の口に張り付いていた。
この子が本体かしら。
それとも全員分体?
『シーちゃん、おはよ。
朝からどうしたの?』
『黙って集中して下さい』
『ふぁ~い』
シーちゃん様はどうやら欲求不満のようだ。
まだまだ離してくれそうにない。
暫くされるがままになっていると、隣から視線を感じた。
あかん、セレネの事忘れてた。
「いい度胸ね。
二人とも」
「!?」
ビクンと跳ねるシーちゃん。
どうやら素で忘れていたらしい。
何がシーちゃんをここまで掻き立ててしまったのだろうか。
いやまあ、私が放置し過ぎてるせいなんだけど。
「おはようございます、セレネ。
大変失礼致しました。
お二人も起きられたようですので、私はこれで」
「待ちなさい」
シーちゃんを引き止めて襲いかかるセレネ。
なんで?
今度はシーちゃんとセレネがチュッチュし始めた。
これはもしかして私にダメージ与えようとしてる?
確かになんか悔しい。
目の保養にもなるけど。
私は我慢できず、シーちゃんに覆いかぶさるセレネを引き剥がして、セレネの唇を奪う。
仰向けで転がるシーちゃんの眼前で、私とセレネがキスを続ける。
今度はムキになったシーちゃんが、分体を使って私達を引き剥がし、自身と分体で、私とセレネに同時にキスをする。
「ストップ!ストーップ!
エリス達迎えに行かなきゃ!
今はもうお終い!」
「まだ足りないわ」
「エリス達も呼びましょう」
「ダメだってば!
エリスにはまだ手を出せないの!」
「どうせ時間の問題じゃない」
「既にあの子達は起床しています。
これからこちらに来るようです。
言っておきますが、私は何度も起こそうとしました」
「それであんな事してたのね。
ごめんね、シーちゃん。
起こしてくれてありがとう」
「いえ……すみません、結局」
「ううん、とりあえず支度しましょう」
「え~」
「我儘言わないで、セレネ。
昨日いっぱいしたじゃない」
「仕方ないわね。
今日はあの子達に譲って上げるわ」
「グリアの事お願いね」
「いっそ子供達も顔見せておいたら?
もうすぐ学園も始まるんだし」
「今日聞いてみてくれる?
会ってくれるのなら連れて行くわ。
立場的に、わざわざ一生徒に会うような方でも無いはずだから。
それに、いきなりぞろぞろと引き連れて乗り込むわけにもいかないだろうし」
「それもそうね。
別に直接授業するわけでもないのよね」
「ええ。
けれど念の為聞いておく、くらいはするべきだったわね」
「まあ、必要なら向こうから言ってきたでしょ。
そんなに気にしなくても大丈夫よ」
「セレネは何時頃行くつもりなの?」
「午前中から伺ってみるわ。
時間が合わなそうなら、グリアさんと王都デートでもしてくるわね」
「付き合ってくれるの?
あのグリアが?」
「ええ。
手はあるわ」
「無理やりはダメよ。
本当に人混みが苦手な人だっているんだから」
「もちろん。
無理強いなんてしないわ」
「なら良いけど」
「それより着替えなくて良いの?
もうすぐ子供達来るんでしょ?」
「あ」
「「「「アルカ~!おはよ~!!」」」」
「手遅れでしたね。
私が出迎えてきます」
「ありがと!シーちゃん!」




