30-12.幸福
結局イチャイチャと長風呂してしまった。
折角だから少し飲んでから寝ましょうという事で、リビングに移動する。
備え付けの冷蔵庫には様々な種類のお酒が用意されていた。
これ、どこから持ってきたのかしら。
お姉ちゃんの収納空間から分けてもらったのかな。
それとも、まさか作ったの?もう?
まあ、何れにせよ変なものではないだろう。
よく冷えたグラスや、各種おつまみまで用意されていたので、遠慮なくもらう事にした。
もうどうやって用意したのかは考えるまい。
とりあえずこれなら収納空間から出す必要は無さそうだ。
それはそうと、この調子ならバーとかもありそうね。
ワンフロア貸し切りだという話だし、少しくらいは探検しても良いかもしれない。
まあ、今日焦って全て済ませる必要もないのだけど。
実質、私専用なのだろうし。
これからゆっくりと、好きなだけ堪能する事にしよう。
以前は、何れ自分で島を開発していこうなんて思っていたけれど、私が何もしなくともシーちゃんとアリスがもっと凄いものを用意してくれた。
もう私何もしなくても良いんじゃないかしら。
後の事は皆に任せて、愛しの少女達と爛れた生活を送ってしまおうかしら。
皆もそう望んでくれているのかもしれない。
外に出て忙しく働きまわるより、家に残って、私の時間の全てを使って、順番に皆と過ごす方が良いのかもしれない。
私が外に出なければ、これ以上人数が増えていく事も無いのかもしれない。
当然そんなわけにもいかないのだけど。
ノアちゃんも、カノンも、お姉ちゃんも、セレネも、ナノハも、ハルちゃんも外に出て何かしらしてくれている。
皆して私には詳しく教えてくれないけれど、放って置くつもりはない。
私が抱えきれていない事を懸念しているのなら、とにかく一つずつ片付けていくしかない。
何時でも手伝えるのだと、証明するしかない。
だというのに、私が外に出るとむしろやることは増えていくばかりだ。
一向に片付かず、溢れ出していく。
それらをノアちゃん達が拾い上げてくれる。
良くない。とっても良くない。
「何難しい顔してんのよ。
私と飲むのがそんなにつまらないの?」
「ごめん。
そんなわけないから怒らないで」
「またバカなことでも考えてたんでしょ。
アルカは何も悩む必要なんて無いわ。
私達が何でもやってあげるって、もう何度も言っているでしょ」
「セレネから言われた事ってあったっけ?」
「地下の町での事忘れてるの?」
「ああ。まだ可愛かった頃の」
「ああん?」
「ごめんって、ちょっとした言葉の綾よ。
今のセレネもとっても可愛いわ。」
「まったく。本当にわかっているのかしら」
「どっちもわかってるって。
セレネは可愛いし、皆は私の力になってくれる」
「なら悩む必要なんて無いでしょ。
アルカは私達の柱なのよ。
ドンと構えていなさいな」
「私はほら、ふんぞり返って待ってるより、前に出て動きたい性分だから」
「やめなさい。
余計やる事が増えるだけよ。
もう百年くらいは大人しく引き籠もってなさい」
「やっぱりセレネもそう思う?
とはいえ、百年はやりすぎじゃない?」
「ノアとカノンが中心になって計画を立てているわ。
その計画を邪魔したくないのなら、百年程度は必要よ」
「計画?
方舟計画の事?」
「それを軌道に乗せるための方針の話よ。
これ以上は喋らないわよ。
ノアがアルカに秘密にしている理由を察して上げなさい」
「私が邪魔になるって事は、ギルド絡みね」
「やめなさい。
この件を掘り下げるのは認めないわ。
私がノア達に責められるのよ。
まったく、何でこんな時だけ鋭いのよ」
「ふふ。
そう言いながらもヒントをくれちゃうセレネが大好きよ」
「はいはい」
「セレネは何か悪巧みしてないの?」
「言うわけ無いでしょ」
「良いじゃない。
セレネは私の一番よ。
セレネくらいは私の我儘を受け止めてよ」
「もう十分話したわ」
「少し強引に口を割らせるべきかしら」
「飲み比べでもする?」
「勝てるわけ無いわ。
セレネは強すぎるもの」
「ならベット行く?」
「今日はもう止めておきましょう。
今始めたら寝る時間が無くなってしまうわ。
明日はグリアのお母様に会いに行くのでしょう?」
「どっちでも無いなら、どうする気なのよ」
「う~ん。
どうしようかな。
ジャンケンでもする?」
「雑すぎるでしょ。
どこが強引なのよ」
「いっぱい甘やかしたら口が軽くなるかしら」
「こうして寄り添ってるだけでは足りないの?」
「もちろん。
何時でも抱きしめていたいし、何時でも見つめていたい。
膝枕も捨てがたいわね。
セレネも同化出来ればいいのに。
そうしたら、一生私の中に閉じ込めて逃がしてあげないんだから」
「私は、今はこれで十分よ。
指を絡めて、肩を寄せ合って。
これだけで満ち足りているわ」
「セレネにしては殊勝なこと」
「まだそんな事言うの?」
「ううん。ごめん冗談。
セレネのそういう所も良く知ってるわ」
「なら次にして欲しい事もわかるでしょ?」
「もちろん」
私はセレネにキスをした。
たまに口づけを交わしながら、長い事寄り添っていた。
いつの間にか言葉も無くなった。
セレネが眠るまで、そうして静かに過ごしていた。
結局追求は躱されてしまった。
私は眠ってしまったセレネを抱えて寝室に移動する。
いつの間にか、和室の方には布団が敷かれていた。
シーちゃんが分体でもよこしてくれたのかしら。
相変わらず至れり尽くせりだ。
今日は和室で寝るとしよう。
セレネはぬいぐるみに苦手意識を持ってしまったようだし。
元々は可愛いもの好きだったのだけど。
まあ、今も可愛いものは好きだろうけど。
とにかく、目覚めた時に怯えさせるのも忍びない。
あの部屋は今度セレネ以外と来た時に眠るとしよう。
全員トラウマになっている可能性もなくはないけど。
私は敷布団にセレネを寝かせて、自分も潜り込む。
セレネはすぐに私にしがみついてきた。
起こしてしまったかとも思ったけれど、どうやらそうでもないらしい
眠っていても私を求めてくれたみたいで堪らなく嬉しい。
セレネ可愛い。
「おやすみ、セレネ」




