30-10.仲良し訓練組
ノアちゃんとリヴィから離れて、私とセレネはルカ達のグループへ加わった。
ノアちゃんもすっかり絶叫系にハマってしまい、リヴィと二人で延々と乗り始めてしまった。
途中までは付き合っていたセレネだったが、遂に音を上げて、私に同行することを選んだのだった。
明日のこともあるのだし、無理しないで部屋に戻っても構わないのだけど。
なんなら、この遊園地の隣にはホテルまで作られているので、そこで休んで貰っても構わないのだけど。
なんて言えばセレネの機嫌を損ねるのはわかりきっているので、私は何も言わずにセレネの手を引くことにした。
「アルカ、抱っこ」
私は一度セレネの手を離して、ルカを抱き上げる。
相変わらず、ルカは抱っこが好きだ。
私もルカの抱っこが好きだ。
サイズ感が丁度いい。
ルカを片腕で支えて、もう片方の手を再びセレネに伸ばす。
一瞬、セレネの逡巡を感じたけれど、こちらからセレネの手を掴んで握りしめた。
他の子に遠慮したのかしら。
レーネやエリスも待っていたのだろうし。
それとも、ルカを両手で抱きしめてあげるべきとでも思ったのかな。
まあ、今はセレネ優先だ。
私がそんな気分なんだもの。
「次はどこに行こうとしていたの?」
「あれ」
ルカが指を指した先は、他よりも光量が少なく、周囲よりいっそう薄暗い雰囲気のお館だ。
ハルちゃんのダンジョンに雰囲気が似ている。
周囲にはわざわざ木が植えられているし。
「お化け屋敷?」
「そう」
「なんでまた?」
「面白そうだから?」
「入ったことは無いのね」
「うん」
「まあいいわ、行きましょう」
私達は揃ってお化け屋敷に向かう。
私、ルカ、セレネにレーネ、エリス、イリスが続く。
十五分程でアトラクションは終わり、私達はなんとも言い難い雰囲気で館を脱出した。
「もう二度と入らない」
私にしがみついて顔を埋めるルカ。
「同意するわ。
どうしてこうなったのかしら」
「アルカの知っているものとは違うの?」
「ええ。
何もかも」
「シイナが張り切りすぎたという事ですか?」
「そうね。アリスの脚本が原因の可能性もなくはないけど。
でも、これはシーちゃんかも。
まさか、本来は単調な動きしかしないはずの脅かし要員達にまで知能を授けてしまうなんて。
何にせよ、あそこまで怖くなるとは思わなかったわ。
危うく周囲一体吹き飛ばすところだった」
「アルカ様が一番怖かった」
「エリス!?」
「一触即発だったのデス」
「覚視が優秀な分、別のものも見えてしまったのですね」
「言うても、レーネやセレネ程ではないでしょ?」
「いいえ。
既に私より使いこなしている様です」
「まだ数日しか経ってないじゃない」
「頑張ったよ!
イリスも協力してくれたし!」
「ある意味ズルっこデス」
「ああ、そっか。
イリスがいるんだから無理もないわね」
「ルカもほしい」
「そのうちね」
「え~」
「エリスの事情は聞いてる?」
「魔力も神力も持ってなかったって」
「そうなの。
だから、どうしても契約が必要だった。
その為にフィリアスが、いえ、イリスが必要だったのよ」
「ルカ一番弱いよ……」
「そんな事無いわ。
ルカには冷静な判断力がある。
私達はそれを無駄にしたく無いの。
最初からフィリアス頼りにしてしまうのではなく、ルカの良いところをもっと伸ばしていきたいの。
ルカには皆の司令塔になってもらいたいの」
「うん……」
「ただ、これは私達の意見よ。
もしルカがどうしても、誰より自分自身が一番強くなりたいのだと思っているなら、ちゃんと話を聞くわ。
場合によっては、今すぐフィリアスだって与えてあげる。
だからまずは話をしましょう。
ルカがどうなりたいのか、私達がルカにどうなってほしいのか、しっかりと擦り合わせていきましょう。
その為の時間はちゃんと作るから。
信じてくれる?」
「うん。
ルカももっと考えてみる」
「ありがとう。何時でも相談してね」
「うん。お願い」
また私にしがみついて顔を隠すルカ。
今度はどんな理由だろう。
ルカはよくこういう仕草をする。
照れたり、怖かったり、嬉しかったり。
誰より一番真っ直ぐに甘えてくれる。
ルカもとっても可愛い。
お化け屋敷の次は、近くにあった、カラフルな宮殿?お城?みたいな建物に入る事にした。
記憶通りなら、こっちは大丈夫なはずだ。きっと多分。
……
いやまあ、うん。
リアルにしちゃぁダメでしょうよ。




