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29-43.疑念

『随分とまた大事になっていたのね。

 気を使ってくれたのは嬉しいけれど、もう少し早く教えてほしかったわ。

 ってごめんなさい。

 こんな文句を言う前に言うべき事があったわね。

 ありがとう、ノアちゃん。

 お疲れ様』


『はい。もう少し調べたら戻ります。

 セレネにも伝えておきますので、セルフィーさんが目を覚ましたらアルカに教えてくれるはずです。

 レヴィを会わせて上げて下さい』


『うん。

 きっと喜ぶわ。

 本当にありがとう、ノアちゃん』


『いえ、私は殆ど何もしていませんから。

 お礼ならハルとセレネに言って上げて下さい』


『ううん。何もしていないなんて事はないわ。

 ノアちゃんが私の代わりに動いてくれたからセルフィーさんは助かったのよ。

 エルフの国がどれだけ凄くても、ダンジョンコアの制御技術まで持っているわけではないわ。

 ノアちゃんが出向かなければ、長老がノアちゃんにコアを渡す事も無かったはずよ。

 ハルちゃんの救出とセレネの治療が間に合ったのもノアちゃんのお陰よ。

 自信を持って、ノアちゃん』


『はい。ありがとうございます』


 ノアちゃんとの念話を終わらせて、レヴィ、ルビィ、リヴィの様子を眺める。

三人は特に何かに気付いた様子も無く、無邪気に追いかけっこを続けている。

今は庭に出て体を動かしていた。

少し離れた所では、アリア達も訓練に励んでいる。


 いつの間にやら自宅の中にセルフィーさんがいたらしい。

全然気付かなかった。

またハルちゃんに叱られそう。


 私は覚視をノアちゃんの部屋に伸ばして、セルフィーさんの様子を伺う。

どうやら容態は安定しているようだ。

傍らにはセレネが腰掛けている。


 これは読書でもしているのかしら。

セレネは本が好きなのよね。

内容はともかく。



『どうしたの?』


 セレネから念話が飛んできた。

私がセルフィーさんのついでにセレネを観察していたのがバレたようだ。



『ううん。

 ノアちゃんから話を聞いて、セルフィーさんの様子を確認しておこうと思ったの』


『私はついで?』


『まさか。

 セレネがいたら眺めたくなるのは当然じゃない』


『ふふ。そういう事にしてあげるわ』


『セレネもありがとう』


『どういたしまして』


『悪いけど、ノアちゃんの事もお願いね』


『わかってるわ』


『パスってまだ繋いでるの?

 ルチアとアウラが制御してるんでしょ?』


『別に切ってないけど、パスは関係ないわ。

 ノアの考えなんてわからないわけがないでしょ』


『それもそうね』


『本当に何を落ち込む必要があるのかしらね。

 色々とごっちゃにし過ぎなのよ、ノアは』


『ノアちゃんが何にでも真剣だからこそよ』


『アルカとは別の意味でオンオフが下手よね』


『真っ直ぐで誠実で良い子でしょ』


『よく知ってるわ』


『後で目一杯可愛がってあげましょう』


『良いわね。

 久しぶりに三人で過ごしましょう』


『賛成~』


『タイミング良く、セルフィーさんも目を覚ましたわ。

 少し話してみるから待っててね』


『がってん』


 暫くしてセレネの許可が降りた。

やはりセルフィーさんで間違いなかったようだ。

ここに来て別人だったら更にややこしい話しになるところだった。

どうやらすっかり復調しているらしい。

それだけ精神的にも強い人なのだろうか。


 私はヴィビィ団を連れてノアちゃんの私室へ向かう。

三人にはまだ理由を伝えていない。

レヴィはどんな反応を示すのかしら。

ルビィは寂しがらないかしら。

大好きなお姉ちゃん過ごせる時間が減ってしまうかも。

リヴィは素直に喜んでくれるだろう。優しい子だもの。



「ママぁうわぁぁぁん!!!」


「レヴィ!!」


 大泣で飛びつくレヴィと受け止めるセルフィーさん。

少し二人にしてあげるべきかしら。

どうやらセレネはそう思っていないようで、側を離れようとしない。


 そうか。

セルフィーさんは敵との接点があったのでは無いかとも疑われていたんだったわ。

少なくとも、襲撃時の対処方法と、どうやってレヴィがエルフの国に辿り着けたのかという部分では疑念が残っている。

今はまだ目を離すわけにはいかない。


 私は二人が少し落ち着いてきたところで、声をかける。



「セルフィーさん、起きたばかりで悪いのだけど、少し話を聞かせて貰えるかしら」


「アルカ、その前に自己紹介くらいはしなさいな」


「あ、ごめんなさい。

 私はアルカ。

 冒険者をしているわ。

 エルフの国とは縁があって、レヴィを預かっていたの。

 セルフィーさんの事は私の仲間が助け出してくれたのよ」


「アルカさん、ありがとうございます。

 レヴェリーの事も私の事も。

 感謝してもしきれません」


「気にしないで。

 レヴィの事はエルフの国に。

 セルフィーさんの事は私の仲間にお礼を言って上げて。

 今は出かけているけれど、もう少ししたら戻るから」


「はい、必ず」


「セルフィーさん、何があったのか教えてくれる?

 正直な話をすると、私はまだあなたを信用できないの。

 あんな場所でレヴィを放りだしたのはなぜ?

 どうして自分一人で立ち向かったの?

 何故エルフの国に助けを求められなかったの?」


 レヴィを外すべきだったかしら。

こんな事を聞いておきながらも、私はセルフィーさんを信じてしまっている。

少なくとも、レヴィにとっては優しいお母さんなのだと。



「視たからです」


「みた?」


「私は少しだけ未来を視る事ができます」


「未来?どういう事?」


「アルカさんも流れを視る術は心得がありますよね?」


「流れ?

 覚視の事?」


 私は覚視でセルフィーさんを探るように向ける。



「はい、この技術の事です。

 アルカさんは覚視と呼ぶのですね。

 未来視はその覚視が成長する事で、起こり得る事象の一つです。

 私は自在に扱える程ではありませんが、時たま未来を覗き見る事があります。

 レヴェリーの生き残る未来が視えたので、その直感に従いました。

 元より、レヴェリーも高い素質を持っています。

 魔物を避けてエルフの国に辿りつくのは可能だと判断しました。

 私が時間を稼げばレヴェリーだけでも逃げられると。

 そう判断しました」


 なにそれ、知らない。

え?ルネルにどうやっても攻撃が当たらないのってそれが原因なの?

処理能力をどれだけ上げても避けられるのって未来を視てたからなの?

何そのインチキ。

どうしろってのよ……



『ちなみに私達がどれだけ未来の状況を演算しても意味ないわよ。

 後出しジャンケンやカンニングってやつだもの』


『対策考えておいて、イロハ』


『基礎能力で上回るしか無いわね。

 未来視の簡単な攻略法は、避けきれない方法で攻撃する事だもの』


『無茶言わないでよ』


『カラクリさえわかれば、意外となんとかなるかもよ?

 シイナがアルカの身体スペックを引き上げてくれるし。

 私達が処理能力は補助するわ。

 一度フルモードで挑んでみたら?』


『流石にノアちゃんやニクスに怒られるんじゃない?』


『かもね』


 私はイロハとの内緒話を終わらせて、セルフィーさんとの会話を再開する。



「レヴィが覚視を使っている所なんて見たことないわよ?」


「まだ意図しては使えません。

 無意識に直感的に危険を避けられる程度ですから。

 レヴィ本人に危機意識も無ければ使う事は無いでしょう。

 それだけ、アルカさんの側は安心出来たのでしょう。

 重ね重ね感謝します、アルカさん。

 レヴィに良くしてくれてありがとうございます」


 あんな森の中でルビィを見つけ出せたのも、偶然ではなくレヴィの覚視が所以なのだろうか。

もしかしたら、随分と高い素質を持ってるのかもしれない。

何せ、母親のセルフィーさんが未来視なんてものに行き着いているのだし。



「襲撃を受けた理由に心当たりは?」


「エルフの国へ襲撃する為の予行演習だったようです。

 私の体を調べながら、そんな話をしていました」


「何故敵はセルフィーさんの事を知っていたの?」


「わかりません」


「敵の規模は?」


「見たのは一人だけです」


「そう……

 ありがとう、取り敢えず今はここまでで良いわ。

 暫くレヴィと二人きりにさせて上げるから、ゆっくり休んでいて。

 とはいえ、ごめんなさい。

 念の為、覚視で見張らせてもらうわね」


「もちろん構いません。

 それだけレヴィの事を心配して下さって有り難いです」


 万が一転移で逃げられたとしても、レヴィだけなら抱き寄せ魔法で回収できる。

そんな心配は無いだろうけれど。

そもそも転移は使えないだろうけど。

使えるならいくらでも逃げられたのだし。

そうは思うんだけど……


『随分とレヴィにご執心ね。

 その調子でこの後どうするの?

 レヴィを手放せないのなら、セルフィーごと抱え込むの?』


『そうよね……

 まさかもう一度引き離すわけにもいかないし。

 取り敢えず、暫くは一緒に暮らしてもらいましょう。

 その後の事は何れ考えれば良いわ』


『そうやって思考停止してたら、またノアに怒られるわよ?』


『大丈夫よ。

 ノアちゃんにも一緒に考えてもらうから』


『新しい問題を振る前に、目一杯甘やかしてあげなさい』


『どうしたの、イロハ?

 ノアちゃんの事本気で気に入ってる?』


『そうかもね』

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